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今週の一冊。
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【ぼくが電話をかけている場所】(短編集)
レイモンド・カーヴァー(訳:村上春樹)
中公文庫 \280
『収録作品:ダンスしないか?/出かけるって女たちに言ってくるよ/大聖堂/菓子袋/あなたお医者さま?/ぼくが電話をかけている場所/足もとに流れる深い川/何もかもが彼にくっついていた』
(一部抜粋)
・【ダンスしないか?】
「遠慮することはない」と男が言った。「うちの庭なんだ。踊りたきゃ踊ればいいんだ」
・【出かけるって女たちに言ってくるよ】
「なんだいなんだい、教えなよ。どこまで行くの?」
「内緒よ」と小柄な方が言った。
「ナイショって、どこにあるんだ?」
・【大聖堂】
「僕には目のみえない友だちなんか居ないぜ」と私は言った。「どんな友だちもいないくせに」と彼女は言った。
・【菓子袋】
「みんな元気だよ」と僕は言った。嘘だ。
・【あなたお医者さま?】
「どちら様ですか」と女が訊ねた。「さあ、そちらこそどちら様でしょうか」と彼は言った。
・【ぼくが電話をかけている場所】
JPならそのあいだ少し待たせておけばいいさ。
・【足もとに流れる深い川】
私は目を閉じて水切り台にじっとしがみつく。
・【何もかもが彼にくっついていた】
何か覚えてるでしょう、と彼女は言う。ねえ、話してよ。
どんなことが聞きたいんだい?と彼は言う。
----(作品紹介)----
今回はあらすじでは無く、敢えて抜粋にさせて頂きました。
あらすじと言うのは崩したビスケットみたいなものであるべきだと私は思います。やはり、それが一週間置いたフランスパンではいけないのです。
さてさて。
彼の作品には、基本的に落ちは在りません。だからこそ見えるものがあります。
例えば、収録作品『足もとに流れる深い川』。
読んでいると自分の足が浸かって居るのでは無いかと錯覚を起こす程、"私"の足元の川が何れ程深いものか、その冷たさ、足の感覚それ等が伝わって来ます。引きずられそうにもなります。
けれどカーヴァーはその川が何処から流れて来るのかも、そして何処へ行くのかも、"私"はこの川からどうやって上がるのかも書きません。
どうして?
それは、また次回にでも。
今週は『ぼくが電話をかけている場所』を、紹介させて頂きました。
それでは。