埼玉西武ライオンズ2019シーズン総括 | Stadiums and Arenas

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昨日、プロ野球の個人賞授与式がありました。その1週間前には明治神宮大会もあり、11月頭には社会人野球日本選手権も終わりましたので、毎年この時期になると本格的に野球シーズンが終わったな、と感じます。

2019年はシーズン開幕前に菊池雄星投手や浅村栄斗選手、炭谷銀仁朗選手が移籍したにもかかわらず、埼玉西武ライオンズはパ・リーグ連覇の偉業を達成しました。プレーオフでは3年連続で格付けが下の相手に敗れてしまい、またも短期決戦での弱さを露呈してしまいましたが、プレーオフ進出も決して簡単ではないと思われていた中でリーグ優勝を果たしたのは、選手とチームスタッフ全員が本当に頑張ってくれた結果だと思います。

快挙の原動力となったのは、今年も攻撃力でした。浅村選手が移籍したことで少しスケールダウンし、また新しいチーム事情に適応するまで少し時間がかかりましたが、一番重要なペナントレース後半にはしっかりとフィットし、最大の武器をいかんなく発揮することができました。強力打線と言うとヒットや長打をイメージしますが、足を使った攻撃も得意なので、とにかく攻撃のバリエーションが多彩でした。

浅村選手が移籍しても強力打線を保てたのは、野手全員が頑張ってくれたからですが、森友哉選手が打者としてブレイクを果たすことができたことはかなり大きかったと思います。もともと打撃センスは抜群と言われてはいましたが、守備の負担が大きい捕手というポジションだったので、これまではその評価とは裏腹に数字という面では伸び悩むことが多い選手でした。ですが今年は、打率.329で見事に首位打者に輝き、105打点、162安打(どちらもリーグ3位)という成績を残すことに成功。序盤戦は山川穂高選手に続く5番打者として安打を量産しました。彼がいたから相手投手も山川選手を敬遠することができず、それが序盤戦に山川選手がホームランを量産する要因となりました。この結果を受けて、より打率が求められる3番打者に移されましたが、ここでも勢いは止まらず。長距離打者というわけではないですがホームランも23本も放ち、浅村選手が抜けた穴を補って余りある成績を残しました。

この結果が評価されてパ・リーグのMVPに選ばれましたが、反面守備に関しては大いに課題が残ったシーズンでもありましたが。捕手と言うポジションが相当守備面での要求が大きいポジションですし、彼の前に正捕手を務めていた炭谷選手が、投手の能力を最大限引き出せる素晴らしい捕手だったので、荒が目立ってしまったところもありました。ですが、プレーオフ第1戦ではパスボールで相手に逆転を許し、これが決勝点になってしまうなど、キャッチングがとにかくおぼつかなず、リードも甘い。試合の佳境における失点を減らさなければ短期決戦では勝てないですし、このチームの浮沈は彼の双肩にかかってくるのではないかと思います。

今年は、大ベテラン中村剛也選手も大活躍でした。球界屈指のホームランバッターというイメージの強い大ベテランは、今年は安打と打点で貢献し、123打点で打点王を獲得。もともと勝負強い選手ではありましたが、今年は1シーズンフルに活躍してくれたことも大きかったですね。ケガや不調での離脱も少なくない選手だったので。シーズン前半は6番に座って、クリーンアップの後にも相手にプレッシャーをかけられる選手でしたが、シーズン後半に入り山川選手のホームラン数が伸び悩むと、4番に座ってプレーオフまでその役割をまっとうしました。一方、中村選手の基準では少し物足りなさも感じるかもしれませんが、ホームランも30本打っていて、そのうち3本は満塁アーチで、長距離砲としても十分な結果を残しています。

山川穂高選手は、前半戦はとにかくすさまじいペースでホームランを量産し、このまま行けば50本到達も夢ではないとも言われていましたが、その後ペースが落ちて大台には載せられませんでした。後半戦には打順を下げましたが、それでも43本のホームランで2年連続の本塁打王を獲得しました。

今季主将を務めた秋山翔吾選手は、彼の基準では少し物足りないシーズンになってしまいましたが、それでも179本のヒットを放って3年連続の最多安打となりました。シーズン開幕直後は、浅村選手の後釜として3番打者に任命されましたが、いまひとつしっくりこず、5月頃に去年と同じ1番打者に戻るとチームの攻撃も回るようになりました。やはりライオンズの打線は、秋山選手が1番に座り、1番から相手に積極的にプレッシャーをかけられてこそ脅威となりえる打線なのだと思いました。守備でも、貫禄のゴールデングラブ賞。秋山選手が調子が良かった時期にはチームも勝ち星が伸びましたし、逆に調子が落ちると伸び悩んだので、改めて彼が中心のチームなんだと思わされました。

他の選手達が派手なのであまり目立ちませんでしたが、今シーズンの外崎修汰選手の貢献度は絶大でした。守備では、浅村選手が抜けたセカンドにライトからコンバートされました。もともと内野の選手だったので、本来のポジションに戻ったと言えますが、それでも正直ここまで安心して見ていられるとは、と思うくらい守備はよかったです。浅村選手は、力がある反面俊敏に動けるタイプではなく、守備範囲が広くはなかったのですが、外崎選手はそれより遥かに俊敏で、それでいてパワーもある。打つ方では、序盤にいくつか打順を試されたのち、秋山選手が1番に戻った後に3番に据えられ、オールスターまではそこでプレーしました。この時期は好調を保ち、打率が求められる3番打者という役割を必死にまっとうし、チームに貢献しました。夏ごろに森選手が5番から3番に昇格すると打順を下げましたが、ホームラン27本、盗塁22本とその身体能力をいかんなく発揮しました。

源田壮亮選手は、持ち味のショートの守備にさらに磨きがかかっている印象です。以前は、守備範囲が広い反面エラーが多い選手でもあったのですが、最近はキャッチングやスローイングのミスがほとんど見られず、本格的に球界屈指の守備と言えるまでになってきています。その働きが評価されて、今年はソフトバンクの名手今宮健太を抑え、ショートのゴールデングラブ賞を受賞。攻撃面でも、打率.274、盗塁30と貢献度は小さくありません。ケガで離脱した時期もありましたが、十分コンスタントにやってくれたと思います。

金子侑司選手も、ケガで離脱した時期がありながら41盗塁を決めて盗塁王を獲得しました。序盤は1番打者を任された時期もありましたが、秋山選手が1番に復帰してからは去年まで任されていた9番打者のポジションに戻りました。彼は、ある程度自由にできる時が一番力を発揮すると思います。チームとしても、金子選手が9番にいると「9番から攻撃が始まる」野球ができ、守備でも快足を生かしてアウトを取ってくれました。

去年までライトを守っていた外崎選手がセカンドにコンバートされ、空いたライトのポジションを射止めたのは木村文紀選手でした。俊足で、しかも元投手だったこともあって肩も強い外野守備の名手ですが、打つ方でも頑張ってくれたことがレギュラーを獲得した要因となりました。源田選手や金子選手ほど打率は伸びませんでしたが、彼等より長打力があり、時折ホームランが出るので相手からすると油断できない選手でした。

栗山巧選手は、今年も名バイプレーヤーぶりを見せつけました。もう36歳で、全盛期の頃と比べれば足は遅くなっており、守備もおぼつかなくなっていますが、ケガで離脱者が出たタイミングでいきなり試合に出しても仕事をしてくれるベテランの味を出してくれました。今年は金子選手や外崎選手がケガで離脱した時期があったので、DHや代打以外でも出場機会が多く、気が付けば規定打数をクリア。派手さはないですがとにかく簡単には三振せず、状況を理解したバッティングができる選手です。ランナーが塁にいるときには、自分がアウトになっても最低限ランナーを進めたりと言ったことをしてくれます。

エルネスト・メヒア選手は、代打の切り札でした。甘い球を放れば一発で持って行ってしまうので、試合の終盤ではベンチにいるだけで相手にプレッシャーをかけられる選手でした。フィールディングも悪くない(と言うより、単にファーストの守備だけなら山川選手より上手い)なので、他のチームであれば間違いなくレギュラーという選手で、フルシーズン出れば毎年30本塁打は常に期待できるレベルにあります。ですが、それだけの実力がある選手であるにもかかわらず、出場機会があまり得られなくても決して腐らず、ベンチでは常に明るくふるまうので、キャラクターも立派だと思います。8月や9月にチームが首位に浮上した際には、彼が決勝打を放つことが多く、努力が報われたのが嬉しかったです。

岡田雅利選手は、終盤戦にケガで戦線離脱しましたが、いなくなったときに彼の大きさを思い知らされましたね。森選手よりキャッチャーとしての能力は遥かに上なので、プレーオフで、岡田選手をキャッチャーで起用して森選手はDHで打撃に専念、という起用ができなかったのが痛恨でした。

その他では、代走や外野の守備要因として起用された熊代聖人選手や斎藤彰吾選手も頑張ってくれましたし、内野でケガ人が出たときに起用された永江恭平選手は守備の名手です。大ベテランの中村剛也選手がお休みしなければならないときに出てきたルーキーの佐藤龍世選手も、将来のサードのレギュラー候補ではないかと思わせるパフォーマンスをしてくれました。

投手陣は、今年も試練の連続でした。去年までのエースである菊池雄星投手が移籍し、去年の最多勝投手であった多和田真三郎投手も不調から体調不良でほとんどチームに貢献できず。去年10勝した榎田大樹投手も、開幕に出遅れた末に4勝3敗の結果に終わりました。FAで巨人に移籍した炭谷選手の人的保証で獲得した内海哲也投手も、一度も一軍に昇格することなくシーズンを終えたので、ある程度期待していた投手達がことごとくそれを裏切るという事態に。つくづく、これでよく優勝できたなあと思います。

救世主となったのは、今年獲得したザック・ニール投手でした。シーズン序盤はフィットせず、一度二軍落ちを経験していますが、6月に再昇格するとチームの外国籍投手最多記録となる11連勝を記録して、最終的には12勝1敗と大きく勝ち越してくれました。規定投球回には届きませんでしたが、これだけ勝ってくれた上に防御率2.87であれば、十分仕事をしてくれたと言えるでしょう。テンポよくボールを投げて打たせて取るピッチングが持ち味の投手。決してボールが速いわけでもないですし、疲れてくると結構玉が上ずるのですが、打者の手元で変化するようで凡打の山を築き上げていました。

ニール投手の次の勝ち頭は、10勝6敗の高橋光成でした。高卒5年目の今シーズンは、彼が結果を残してくれなければチームは苦しむ、と思っていましたが、歯を食いしばってやってくれたと思います。毎回のようにフォアボールや痛打でランナーを出すのですが、要所で力強い速球やスライダー、フォークを絡めて何とかしのぎ、頑張ってくれました。シーズン終盤に負傷離脱して、プレーオフに出れなかったのが痛恨でしたね。

今井達也投手は、高卒3年目でありながら今年はほぼ1年間ローテーションを守り、7月頭の段階でチームで唯一規定投球回に到達している投手でした。まだ若いこともあり、調子の波が激しく出るところは否めませんが、調子のいいときには本当に手が付けられない。将来のエース候補としてチームが現在育てているのは、間違いなく今井投手だと思います。強力打線のライオンズが今井投手が投げているときに限って打線が湿るというパターンも多く、7勝9敗と負け越す試練のシーズンでした。投げてくれた試合が多かった分、割を食ったところもあったと思います。

中堅からベテランの投手達の成績が伸び悩んだ中、チームがリーグ優勝を果たすことができたのは、松本航投手と本田圭佑投手の頑張りも大きかったと思います。松本選手は大卒1年目のルーキーながら、期待通り即戦力として活躍してくれました。7勝4敗という成績は、十分胸を張っていいものだと思います。本田圭佑投手は、2016年に加入してから2018年までで8試合しか一軍で出場していませんでしたが、今年は一軍初勝利を含む6勝6敗で頑張ってくれました。速球が速いわけではありませんが、今年はメンタルの強化を意識したとのことで、強気に相手の内角を変化球でえぐっていくピッチングを続けたことが結果につながりました。上の5投手がシーズンを通じて概ね安定してくれたので、まがりなりにもローテーションが崩れずにシーズンを過ごすことができました。

リリーフ陣に目を向けると、衆目を集めたのはやはり年間81試合というすさまじい試合数を投げ切った平井克典投手です。ライオンズ史上最高の選手との呼び声高い稲尾和久氏を上回る試合数で、パ・リーグ最多記録です。終盤戦、そしてプレーオフに入って調子が乱れたのは、やはりオーバーワークだったのでしょう。

さらには、昨シーズンは守護神の座を降ろされた増田達至投手が今季は再び9回を任されました。防御率1.84という数字が示すほど絶対安心というわけではありませんでしたが、それでも立派な数字ですし、自己最多の30セーブも挙げています。リリーフ陣は全体的に少し頼りない印象は否めませんでしたが、それでも平井投手と増田投手に8、9回を任せることができたので、形だけでも整えることができたのだと思います。

7回は、シーズン後半戦に台頭した平良海馬投手が強烈な印象を残しましたね。高卒2年目の19歳ながら、シーズン中に最速158km/hを記録してファンの度肝を抜きました。ただ、本格的に台頭したのはシーズン後半からでしたので、シーズンを通じての頑張りと言う意味では小川龍也投手の方が大きかったと思います。その他では、カイル・マーティン投手やデュアンテ・ヒース投手もいましたが、佐野泰雄投手もロングリリーフで頑張ってくれました。

プレーオフは残念でしたが、それでもペナントレースで頑張って、シーズン前にはかなり難しいと思われていた連覇の偉業を達成した選手の皆さんには感謝しかありません。本当に、ありがとうございます。また来年は大変だと思いますが、頑張る選手の皆さんの力になるよう精一杯応援したいと思います!

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