緊張と眠気。
身体を少しずつ冷やす、やわらかな雨。
冬の到来を予感させる朝は、私にあの日を思い出させる。
そう、3日前に開催されたアンサンブルコンテスト。
「演奏開始まで、たくさん時間があるから、ゆっくり譜面台などの準備をしてください」
トランペットの音が聴こえる舞台袖で、出番を待つ私達に声をかけた進行役の男性。
「時間がある」という言葉に私は安堵する。
奏者3人の立ち位置に関して、本番直前まで賛否両論の意見があったからだ。
ユーフォニアム3人でのアンサンブル。
コンテストとしては、あまりにも謎に満ちた編成。そして、難曲。
5分間とはいえ、1stを一人で演奏し続けるのは体力が厳しいと判断したため、各楽章で縦横無尽にパートを変えることを決めた。
賛否両論があるのはそのためだろう。
本番のセッティングには、それなりに時間が必要だと予想していた。
プログラム2番の演奏が終わった。
舞台から準備がされる靴音が聞こえてくる。
進行役の男性に促され、私達は舞台へと進んだ。
舞台に着いた私は早速、譜面台の位置を調整した。
隣にいるA利と向かいにいるO竹の様子を伺う。どうやら二人とも準備ができたようだ。
(緊張していたせいか、反響板の位置確認は意識になかった)
とうとう、本番が始まる……。
ふと、様子がおかしい事に気がつく。
なかなか明るくならない照明、聞こえないプログラム紹介の影アナ。
本番ってこんなに暗かったか?
影アナは演奏が終わってから?
微笑むA利と怪訝な表情を浮かべるO竹。
感情の交錯と混乱。
舞台上に立つ時間が長く感じた私は、完全に我を忘れた。
そして、私の持つユーフォニアムが演奏開始の動きをする。
演奏は、練習通りのなかなかの出来栄えのように感じた。
(直前のリハーサル室では緊張で当たらなかった音も掴みづらいF♯も鳴ったし、テンポが変わる箇所も難なく入れたと思う)
緊張からの解放感と暖かい拍手に包まれ、私達は舞台上手へと歩みを進めた。
「プログラム3番、Tokyo StackArt Wind Ensemble、ユーフォニアム三重奏、侘美秀俊作曲、3本のユーフォニアムのためのトライマラン……でした」
突如、聞こえてくる影アナ。
「でした」という言葉に私は全てを理解する。
あぁ、やっぱり影アナは演奏前にあるんだ。
急なアドリブありがとう、影アナさん。
運営さん、照明さん、変な対応力求めてごめんね。
そして、待ちきれずにザッツして本当にすみません。
おかしな爪痕と謎の経験値を(運営側に)もたらし、2022年度のアンサンブルコンテストは幕を閉じた。
以上、K川からでした。
最近、小説読んでないなぁ。
ユーフォニアムパートが気になった方はこの演奏会がおすすめ。
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