2つの素数積の差 | すた・ばにら

すた・ばにら

2019/11/29にYahoo!ブログ「すた・ばにら」より移植処理しました。

※ この記事は後書きされています。最終編集日時は 2008/01/21, 23:25 です。

素数に関する問題で、以前から永く温めていたものは沢山あるのだが、ここらで忘れないうちに一つに
まとめて掲載しておこう。

なお、類似した問題は過去に必ず誰かが考えているはずと思うものの、この件に関して言及した記事は
まだ見たことがない。恐らく肯定的にも否定的にも解決はできていないものと思う。

素数の無限性の証明においては、最大の素数が存在すると仮定し、それをpとした。小さな素数から順に
pまでの積(今風に書けばp#)を作り、1を加えた数値の素因数分解を考える。この数は、明らかに
どんな素数で割っても1余る。したがってこの数自体が素数か、あるいはpよりも大きな素因数を
持たなければならないが、これはpが最大の素数という仮定に反する。即ち最大の素数は存在しない■

実際、p#+1という数値を考えると、確かにそれ自体が素数か、あるいは合成数であったとしても
pよりも大きな素因数が現れる。但しpが大きくなると、p#+1が素数を示す場合の方が少なくなる。
折角p以下の素因数を持たないことが保証されてはいるものの、pより大きな素数で割り切れてしまう。

以下の問題は、この有利性を保ったままで別の形を考え「労せずして素数を見つけよう」的な発想から
生まれたものである。これらは二元的な要素を持つ問題で、後者にしたがって条件が緩和されている。

---

2以上の連続するすべての素数を適当に2つのグループに分け、それぞれ積にしたものを P, Q とする。

P = p1*p2*p3* ‥ *pm
Q = q1*q2*q3* ‥ *qn

pm か qn のどちらかがこの中での最大の素数となるのだが、便宜上ここでは pm が最大のものとする。

この2つの素数積に対して

N = |P - Q|

を定義する。このとき次の定理が成り立つ:

定理1:
N < ( pm+1)2 が成り立てば、N は常に素数か N = 1 である


但しこの場合、pm の次の素数である pm+1 をあらかじめ知っていなければならない。更に条件を厳しく
すると、ここを pm に置き換えれば、上の式が成り立つだけでただちに素数であると判定できる。
これが成り立つのは、上の P,Q の取り方から明らかであろう。

要するに、pm までのすべての素数を上手に2つのグループに分けて積を作り、その差をなるべく小さく
することで、小さな素数から順に割っていくという素朴な方法を経由せずして、より大きな素数を楽に
見つける方法がないか模索するものである。


問題1:
どのような pm に対しても、定理1を満たすように P,Q を
選ぶ方法が存在するか?

問題1-1:
特に、どのような pm に対しても N = 1 となるように
P,Q を選ぶ方法が存在するか?


この双方の問題についてはいずれも「存在しない」になるのではないかと予想している。実際、小さな
素数の範囲では、事態は極めて良好に進行する。制約条件の厳しい「問題1-1」ですら、ごく簡単な
手計算で容易に P,Q の振り分けを見つけることができる。

P = 5 * 3 , Q = 2 * 7 , N = 1
P = 2 * 3 * 7 * 17 , Q = 5 * 11 * 13 , N = 1

しかしいずれは N = 1 の組み合わせを見つけることが出来なくなり、問題1-1は破綻し、問題1も
(まだ試していないが)どう巧く P,Q を取っても定理1を満たすような振り分けが出来なくなると
予想している。この本質的な原因は、素数積の増大するスピードが極めて速く、pm が増えることで
確かに組み合わせ方法が多くなるものの、その増大速度に追いつけないから
である。

そこで素数を見つけるための当初の目的は損なわず、以下のように条件を緩めてみた。

問題2:
すべての素数の代わりに、素数ベキを用いることを許した場合、
定理1を満たすような素数 N および N = 1 となるように
P,Q を選ぶ方法が存在するか?


これでも破綻するようであれば、更に以下のように焼き直すことも可能だろう。


問題3:
偶素数2を外して P, Q を作り、この2つの素数積に対して

N = |P - Q|/ 2k
(但し k は N が整数となる最大の正の整数)

を定義する。
この場合で問題2を考えた場合はどうか?


素数ベキに置き換えた場合、指数は無限に大きくできる。初めに適当な P,Q の振り分けを行い、その後
双方の比率を元にして、N ができるだけ小さくなるように個別の素数の指数を調整することができる。
それ故に問題2や問題3では、条件を満たす P,Q の振り分けが常に存在するようになるかも知れない。

しかし更に先を予想すれば、そのような振り分けが存在することと、当初の目的を達成する部分に些か
ギャップが生じるのではないかと思う。即ち条件を満たすような N を生成する P,Q は見つかるものの、
簡単な数式や手続きからそれを求めることが出来ず、結局は小さい素因数から順に割って行く手段と
変わらないか、あるいはそれ以上の手間がかかってしまうことになるという結末
である。

何か別の方向へ拡張したり一般化されれば話は別であるにしても、割り算なくしてより大きな素数を
求めるという当初の目的はもちろん、他に何の応用も効くわけでもなく、結局単なる数字遊びの一つに
終わってしまうに過ぎないだろう。