落ち着け、落ち着け。
そう思えば思うほど私の手はガタガタと震え、鼓動はみるみる早く、目の前はグラグラと揺れ始めた。
今日、初めて、私は遂に敵と対峙した。
もう、母親はいない。
体を張って私を守り、敵を倒してくれる騎士は消え去ったのだ。
私はこの敵と、1対1で向き合わなくてはならない。
奴から目を逸らさないように静かに武器を手に取り、再び向き合った。
奴とはかなりの距離があるのにもかかわらず、その存在感はとてつもないものだった。
今までとは、格が違う。体の大きさも、特徴も。
突如、奴がこちらに向かって歩き始めた。
不意をつかれた私は、取り乱しながら手にした武器をめちゃくちゃに振り回した。
気がつくと、周りの景色は一変していた。
ほとんどのものがなぎ倒され、破壊されている。
奴は、どこにもいなくなっていた。辺りを見渡してみても、やつの姿は認められない。
私は、本当の恐怖を味わっていた。
この戦いにおいて、相手を見失うことがどんなに恐ろしいことか、私は知っている。
後悔してももう遅い。
どこに逃げたか分からないムカデの影に怯える1人の夜が、始まる。