誤解 | ウソの国ー詩と宗教(戸田聡 st5402jp)

ウソの国ー詩と宗教(戸田聡 st5402jp)

キリスト教、ポエム、理念、批判、など。古い記事が多いです。


  誤解
 
 彼がどんな不幸を背負っていたか知らない。日曜日の教会での礼拝のときだった。彼が私の横に座った。膝を閉じまるで長いすからはみ出しそうな格好で小さくなって腰掛けた。先に座っていた私はそのとき長いすの真ん中で大股開きでふんぞりかえっていたので(おやおや、ちと場所を取り過ぎたかな)と思って姿勢を正して場所を空けたつもりで少し彼から距離を取った。
 すると軽蔑されたか忌み嫌われたとでも思ったのであろうか、彼はすっと席を立ち出て行こうとした。数人の信者が彼を引き止めようとする。私は黙って座っていた。どうしたらいいのかわからなかったのである。(「どうぞ、場所あけましたからこちらの方へお座りください」と言えればよかったけど、そういうのって俺は苦手なんだ。それにしても席を立たなくてもいいじゃないか。どういう事情かは知らないが少し被害的なんじゃないの。知らない、ああ知るもんか。)恥ずかしさの反発で腹立たしく、一方で思うのであった。(こういうことで罪を犯すこともある。受け取る側の問題はともかく受け取らせ、その弁明も償いもしなかった私に罪はあるのだ。)
 昔、牧師さんから「生まれつき人を傷つけないではおれない性格の人もいる。」と聞いたことがある。自分のことか。人を傷つけないではおれないということは多かれ少なかれ誰にもあるのかもしれないが、子供の頃よく小動物をいじめて遊んでいたし無頓着で気配りのセンスもないし根はけっこう残酷なのかもしれない。
人を傷つけ、傷つけることで自分も傷ついた。自分が怖くなった。その後、いつからだったかは忘れたが、私は教会に行かなくなった。昔、静けさを求めて通っていた教会に私は向かないと思うようになっていた。あの時の彼がどうなったのか知らない。思い出すと彼が救われるなら今死んでもいいという気持ちになることがある。
 
※ 「死んでもいい」は言い過ぎでした。