남산의 부장들 KCIA 南山の部長たち | 沸点36℃

沸点36℃

他愛のない日常と歴史散策、主観

2021年4月24日「KCIA 南山の部長たち」鑑賞


1979年の朴正煕暗殺事件を基にキム・チュンシクの原作「実録KCIAー南山と呼ばれた男たち」をウ・ミンホ監督、イ・ビョンホン主演で映画化した政治スパイ映画

事実を基にしているが、登場する人物を別名に置き換えられたフィクションとなっている


1979年10月26日に大韓民国のソウル特別市で朴正煕大統領と車智澈大統領府警護室長が金載圭大韓民国中央情報部部長によって殺害された事件を基に、事件の40日前から遡って、その間の心理描写が細やかに描かれていました



この作品、日本では1月から公開されてましたが、なかなか地方では上映してくれなくて(涙)

なので早々にDVDを購入して観たんですが、韓国史を知らないので、1度観ただけでは話がわからなかったんです


再度観た時に、これって実話❗(を基にしたフィクション)ってことにやっと気付いた次第です、恥ずかしながら



軍事クーデターで実権を握り18年間に渡って独裁を強めてきた韓国の朴正煕大統領

暗殺されたことはソン・ガンホ主演の映画「大統領の理髪師」でぼんやりと知ってはいましたが、失脚して今や監獄されてますが娘は前大統領の朴槿恵だったんですね


朴槿恵の母親も1974年の文世光が起こした大統領暗殺未遂事件に巻き込まれて亡くなられてます


それで一気に興味が湧いてきて、ノンフィクションだという原作「実録KCIA 南山と呼ばれた男たち」を探してるんですが、オンラインではなかなか入手出来ず、新品は税込2千円でお釣りがくるというのにのに、中古は3万だとか5万とかするんですよ

自力で事件を調べてみると、どうやらこの映画、実話に寄り添う姿勢で8割がた忠実に再現されているのではないかと思われました


ほんの少し前の韓国の話なのに、今の韓国からは想像も出来ないくらいに違う世界をとても丁寧に描かれていて、こうした普遍的な政治モノをエンターティメントとして成立させつつ、問題提起の出来る作品を作れる環境が有ることに毎度のことながら羨ましく思います


「南山の部長たち」ってタイトルから、どこか企業のサラリーマンの話かと思ってました(笑)

南山というのはKCIAという組織がある土地を指すんですが、日本でいったら桜田門とか?(え、違…)永田町とか虎ノ門って言うのと一緒なのかなぁ



KCIAという存在は民衆を押さえつける恐ろしい諜報機関という漠然としたイメージでしたが、その内幕を垣間見た気分にさせられました

1973年、東京に滞在中だった当時野党の金大中元大統領を拉致したのもKCIAだとか…こわっ

この映画でもクァク・ドウォンが演じてましたが、KCIA第4代部長だった金炯旭が亡命先のアメリカの下院議会聴聞会で、朴大統領の腐敗や不正について暴露後失踪、拉致、殺害されてますが、KCIAの関与は否定出来ないですしね、ああ、怖い



とにかくイ・ビョンホンの多彩な演技が凄かったです
七三の髪に眼鏡してまるで須藤元気のよう(苦笑)イケメンオーラを封印しての真面目で忠誠心のある南山部長を見事に演じていました
幾つもの出来事と状況が積み重なり、大統領暗殺という究極の一手に至るまで、場面場面の丁寧な心理描写でじわじわと緊張感が高まりました


資金洗浄の謎やイアーゴの存在…これらをめぐる葛藤が見事で、釜山と馬山で起こった大規模な反政府デモに対する武力的な鎮圧は、朴大統領の暗殺を覚悟させる決定的な理由になったんだと思うんですが、一般市民の姿が殆どなかったけれど、それでも彼の人間らしさは表していたし、実際の映像や音声によって人となりが見えてきました
血の海となった宴席で滑って転ぶシーンなんかはアドリブなのか計算なのか、リアリティが増して印象的でした


それでも結局はこの事変によっても民主化は進まず、新たな軍事政権が誕生したという虚しさも伝わってきました


朴大統領に代わって権力を掌握していったのが全斗煥で、1988年まで、より苛烈な圧政が続いたわけですが、それらは光州事件が描かれてる映画「タクシー運転手 約束は海を越えて」「光州5・18」や、1981年に軍事政権下で起きた冤罪事件・釜山学林事件が描かれてる映画「弁護人」(後の盧武鉉大統領の弁護士時代)、学生運動家の拷問致死事件が描かれてる映画「1987、ある闘いの真実」があって、どちらも全斗煥大統領の軍事政権下の出来事で、政権内部には後の盧泰愚大統領もいます

こうした作品に一流の役者で花を添えられるのも素晴らしいですね
いやぁ、勉強になります


長期独裁政権は腐敗するものだという一般的な流れをそのまま行っていた朴軍事政権
志高く革命を起こしたはずの彼らはどこで道を間違えたのか、大義と忠義の狭間で揺れ動く様がとても切なかったです

家でも南山のDVDを3回ほど繰り返して観て、映画館へ行く直前に大統領の理髪師のDVDをもう一度観て、それから映画館の大きなスクリーンで改めて観たわけですが、観る度に伝わってくるものが増えて、不謹慎かもしれませんが大好きな作品のひとつです
イム・サンス監督の「ユゴ 大統領有故」はまだ観てないので、機会があればそちらも観てみたいです


2021年1月22日日本公開

映画「KCIA 南山の部長たち」

監督/ウ・ミンホ

脚本/ウ・ミンホ、イ・ジミン

原作/キム・チュンソク「実録KCIAー南山と呼ばれた男たち」

出演/イ・ビョンホン、イ・ソンミン、クァク・ドウォン、イ・ヒジュン、キム・ソジン、他

上映時間/114分





遅めの上映時間だったので、今夜は外食
アボカドサラダが美味しかった
お家でも早速作ってみよう



あなたもスタンプをGETしよう