2021年4月11日「セルゲイ・ロズニツァ〈群衆〉ドキュメンタリー3選/国葬」鑑賞
ウクライナ出身のロズニツァ監督は近作10作全てが世界三大映画祭に選出され、うち2作でカンヌ国際映画祭の栄冠を勝ち獲った鬼才ながら、その日本公開は今回が初だという
三つの主題へ迫るロズニツァ監督ドキュメンタリー作品3選〈群衆〉から「国葬」
1953年3月5日
スターリンの死がソビエト全土に報じられ、ヨーロッパからシベリアまで国父の死を嘆き悲しむ幾千万人の人の顔が鮮明に記録されていました
粛清裁判がスターリンの時代の始まりとすれば、この国葬はその終わりなんだなぁと感じとれました
裁判の時の熱狂と葬儀の厳粛さからは、独裁体制を支えたのがこの群衆なのか、と
圧倒されたのがモスクワ各地から集まって来た民衆の表情でした
私語を慎み、押し黙って歩き、スターリンの遺体を横目で追いながら、多くの人々がハンカチで涙を拭い黙祷している姿が衝撃でもあり、何故か不気味でした
実に29年に渡りソビエト連邦の最高指導者として君臨した人物ではあるけれど、ヒトラーと並び独裁者として恐れられていたはずなのに、果たして国民にとってどんな存在だったのだろうと、ソ連各地で市民が嘆き悲しむ姿を見て、圧倒的な影響力を目の当たりにしました
スターリンの遺体は真っ赤なビロードと咲き乱れる花に包まれて、ソ連国旗の赤が際立って映えていました
供花を持って国葬に集結する民衆の表情を延々と映し出されているんですが、2時間15分、説明やナレーションもなく続くので、まるで自分も参列しているかのような錯覚にも陥ります
実は弔砲の音にちょっと感動したんですが、葬儀に国民も参加した、それこそがまさに「国葬」で、その国葬がスターリンが生涯かけて実現した社会主義国家の姿なのかなぁ~なんて思ったり
いや~ほんとは睡魔に襲われて、弔砲の音にビックリしただけです(笑)
追悼集会で司会を務めたフルシチョフの姿がありましたけど、このあとフルシチョフが指導者となり、スターリン批判が始まります
そうゆうのを知ると、この壮大な葬式も何だか皮肉に見えますね
スターリンの遺体はモスクワにあるウラジーミル・レーニンの霊廟に安置されましたけど、8年後にはクレムリン(ロシア大統領府)近くの質素な墓地にひそかに移されてます
葬儀の時、スターリンの銅像には供花が幾重にも連なっていたけれど、その銅像も破壊される運命にあったんですよね
2020年11月14日日本公開
映画「セルゲイ・ロズニツァ〈群衆〉ドキュメンタリー3選/国葬」
監督/セルゲイ・ロズニツァ
上映時間/135分