4年生引退企画
〜4年生の想い〜
Vol.41 保坂 太雅
『 解なき大学サッカーの革命前夜 』
『 解なき大学サッカーの革命前夜 』
日頃より、立教大学体育会サッカー部をご支援頂きまして、誠にありがとうございます。主務兼学生コーチの保坂太雅です。
19節の慶應大学戦から、指導者1年目であるにも関わらず、私がベンチから指揮を執っていて、多くの方々が至らない点をお感じなのではないでしょうか。どんな時でもご声援頂き、誠にありがとうございます。
勝てば昇格が決定する慶應大学(19節)相手に0-0で善戦し、貴重な勝ち点1を獲得。しかしながら、3位に君臨していた拓殖大学(20節)に後半39分まで0-0で粘ったものの失点。0-1で敗戦となりました。先週のvs東京学芸大学(21節)では、残留を賭けた裏天王山となりましたが、なんとか1-0で勝利を収めました。
あと残り1試合、最終節vs東京国際大学です。
個人的な話になりますが、中学生の頃、東京国際大学の前田秀樹監督の著書を読んでサッカーの勉強をしていた覚えがあります。勉強させて頂いた先生と対戦するというのは、私の中でも楽しみです。
昨年で選手を引退しましたが、サッカー選手生活を振り返ってみると、高校時代のコーチに「お前は、サッカーを舐めている」と名指しで批判されてから、そのコーチから多くのことを吸収してやろうと必死になっていた頃が懐かしいです。
長年書き続けていたサッカーノートの中にも、そのコーチから教わったことが数え切れないほど記されています。中学2年生からサッカー指導者になることを志しましたが、私が、選手を引退して指導者になろうと心に決めたのは、大学3年生の夏です。今年の1月から、倉又監督の下、コーチングスタッフの一員に加えて頂くことになりました。
皆さんご存知だとは思いますが、私はA、B、C、Dチームで構成されている弊部の中で、Dチームの担当コーチを務めています。
この1年間様々なことがありました。
後々大問題として扱われましたが、3月の練習試合で朝鮮大学に0-15で負けたこともあります。私がその時に選手に伝えたことは「問題ない」という言葉、それだけでした。
サッカーの能力に必要不可欠な間欠性運動能力を測定すると、DチームはGKより低い平均値を示しました。トレーナーから大変なバッシングを受けましたが、徹底して素走りを行う時期も設けました。
なぜ、大敗した選手たちを叱らなかったのか。
なぜ、理不尽と言われるまで素走りを行わせたのか。
「夏前にはどこにも負けないチームを作ろう。」と心に決めていたからです。
その時の課題やできないことに目を瞑って、サッカーをすることは誰にでもできます。
しかし、そのスタンスは次第にマンネリしてきて、選手自身で「今日は調子が良い」とか、「なんか調子悪いわ」と、運任せのサッカーをするようになります。
チームを長い目で見て、きちんと選手を育てていく。勝つことは二の次。後に、勝つことを通して育てられる部分もあるから、勝てるチームになるまでは我慢しようと割り切りました。
そうです。私は、「3匹の子豚」を教訓にしてチーム作りをしていました。
1年間を通して、Dチームの選手には「状況を見て考えて判断する」ことを求め続けました。「保坂のサッカーはポゼッションスタイルだ」と言われますが、全く違います。
「状況を見て考えて判断する」練習のためにポゼッションを中心に取り組ませただけですし、勝負を賭けた試合では、「状況を見て考えて判断する」選手たちが、型に当てはめることなく、攻守に渡って躍動していたと思います。
その場凌ぎのサッカーをせず、「サッカーを舐めず」に取り組んだ結果が、7月末から、同じ大学生相手に練習試合と公式戦含めて1度しか負けなかった「史上最高のDチーム」結成に繋がったのだと感じます。(サタデーリーグ準決勝は、PK戦での敗退なので敗戦に含めていないのが潔くないですが…)
「3匹の子豚」思考は、コーチとしてだけでなく副務→主務という過程の中で、多くの人との対立を引き起こすことにはなりましたが、様々なことを改革していくこととなりました。
私が入部した時は、内部では常識に見えても、外部から見てみると非常識なことが多かった気がしますし、すごく閉鎖的な組織に見えました。私は、サッカー部を単なる「大学部活動」としてしか捉えていませんが、このチームを「クラブ」と表現するならば、もっと外の世界に矢印を向けなくてはいけないと感じていました。
私がチーム内部にも外部にも起こしてみたアクションを振り返ってみると、、、
スカウティングに行ってくれる選手には交通費を満額支払うこと(私が1年生の頃は何処に行っても1000円統一)、遅刻したAチームの選手が、その週に試合に出場するとなった時に応援ボイコット推奨(結果、応援はしましたが、後にAチームが部室を当番制で掃除することに)、日本版NCAA発足に伴い「みる」人に寄り添おうと「立教大学体育会サッカー部運営局」設置、サッカー部主催立教大学体育会セミナー実施(12月2日に第2回実施予定)
徐々に内の世界から外の世界に立教大学体育会サッカー部を連れ出していることが伝わってくると思います。
いろいろなことに挑戦してきて素晴らしいと感じた読者の皆さん。
しかし、私には、コーチとして、主務として行なってきた全ての取り組みが正解だとは思いません。
実際、今シーズンの関東リーグでは勝ち点21で残留争いに。昨シーズンは勝ち点33を獲得していますし、去年の取り組み方の方が正しかったのではないでしょうか。部員の遅刻は一向に減少する兆しは見えません。
オフ・ザ・ピッチの部分でチームに貢献するからと、オン・ザ・ピッチの世界に入り込むと戦えなくなり、いわば、オフ・ザ・ピッチを自身の逃げ場にして、勝手にオフ・ザ・ピッチの部分で納得解を得ている人も見受けられます。
「3匹の子豚」思考を捨て、Dチームに1年間勝つことだけを求め続けたら、サタデーリーグで優勝することができたかもしれません。
組織はナマモノみたいなもので、日によって組織への寄り添い方というものを考えなくてはなりません。
私が今まで取り組んできたものに肯定的な意見が弊部の中で多いことも嬉しく思いますが、必ずしも正解ではないのです。
というより、リーダーが行う、組織に対する働きかけに正解どころか解なんてありません。
他の組織の中に所属しているリーダーにも同様のことが言えると思います。
ここ最近、学生がありとあらゆる媒体を駆使して、自分の意見を発信する機会が多くなり「学生スポーツの価値とは何か」とか、「今回は自分の意見を発信します」とか、時に、「サッカー戦術の〜〜〜」というようにジャンルを問わない形で発信することを躊躇いません。
特に、若きサッカー指導者が発信していることには驚きです。
全ての物事を正解のように発信しますし、素走りを「体罰」であるかのように扱う人すらいます。
発信することで価値を高めようとしている、同世代の指導者仲間に私もそのまま質問を返してあげたいです。
ただただサッカーボードを並べて机上だけで議論を交わしていませんか。選手を将棋の駒のように扱っていませんか。
トレーニング・ゲームを通して「状況を観て考えて判断する」選手を育てようとしていますか。
いざ、ゲームになった時に、冷静である自分を装って名将であるかのように振舞っていませんか。
選手に押し付けの指導で答えだけを教えていませんか。
「アウトプットの場」ということを口実に、「自分はこれだけ勉強している」という安心感を勝手に自分自身に与え、同世代の選手からの批判を免れようとし、スマートフォンのタップに必死になってツイートしていませんか。
多くの人から慕われるリーダーはきっと、、、
高野律雄府中市長と達海猛ETU監督を除いては、直接お会いしたことのある方々ですが、組織のトップに立つ人間は、時に「孤独」で(高野律雄府中市長、 2019)、時に「情熱的」で(有馬賢二ファジアーノ岡山監督、 2017)、時に「謙虚」で(早野宏史元横浜F・マリノス監督、2013)、負けて引退した選手に対して「甘い」と選手を叱れて(廣瀬龍元鹿島学園総監督、 2008)、「それぞれのサッカー観があるから」と部下を温かく見守れて(倉又寿雄立教大学監督、 2019)、中途半端な家を建てるくらいなら、立派な家を建てなくてはいけないとチームを作れて(達海猛ETU監督、2007)、、、
というように多くの考え方を司ることができるのだと思います。
そして、このようなリーダーは、正解を知らない。解すら出せないことを分かっているのではないでしょうか。
解すら出せない大学サッカー。
とにかく、解がない大学サッカーに悩み、もがき苦しみました。
しかし、私は、次の最終節vs東京国際大学で勝利して、自力で残留を手にした時には、もしかしたら、ほんの少しの解を掴み取ることができるのではないかと信じています。
いや、もしかすると、Aチームの指揮を執らせてもらってから手応えを得ているのかもしれません。
ここ最近の「逃げ場のない戦場」のような空間に、居ても立っても居られず応援に来てくださる多くの方々がいらっしゃることを知っています。
そして、前節のvs東京学芸大学では熱い勝利を掴み取ることができました。
この痺れる状況の中で、普段は乗り気にならない平日の仕事も、今週末の最終節のゲームをモチベーションにして仕事に取り組んでいらっしゃる方々もいるかもしれません。
義務でもない大学に行きたくないというのは矛盾していますが、嫌いな授業も、今週の最終節のゲームのために乗り切ろうと頑張ってくれている学生もいるかもしれません。
少なくとも、立教大学体育会サッカー部を生活の一部にして下さる方々を悲しませることはしない。
指揮を執る人間として90分間で勝利することだけにこだわる。
最後に結果が伴わなかったら、それは選手の責任ではなく、倉さん(監督/倉又寿雄)がおっしゃっていた通りコーチングスタッフの責任。
学部4年生と大学院1年生を兼ねていて、来シーズンも大学院2年生としてコーチを務められるかと言ったら、そんな保証なんてありません。
私も、勝ったら評価されて、負けたら評価されないという、シビアな世界に飛び込みたくて指導者になったので、その覚悟を持って戦います。
大学サッカーには解がない。
結局、曲がったことなどせずに、直向き(ひたむき)にサッカーに向き合うしかないのだと思います。
直向きにサッカーに向き合えば、時に人生の意味を大きく変えるのではないでしょうか。
そして、上手くいかなかったら、もう一度学び直せばいいのではないでしょうか。
その学びが、もしかしたら解を得られることに繋がるかもしれません。
同期のみんなが、ブログの最後に恥ずかしがらずに伝えている感謝の気持ちは、関東リーグが終了した時に伝えさせて頂きたいと思います。
是非、今シーズン最後の関東大学サッカーリーグ2部最終節vs東京国際大学@龍ケ崎市陸上競技場たつのこフィールド11:30k.o.応援に来て下さい!!
11/23(土)
関東大学サッカーリーグ最終節
vs東京国際大学
11:30K.O.@龍ヶ崎市陸上競技場たつのこフィールド
*有料会場のため、チケットの購入が必要です。
LAST… Hijiri Kuriyama