公的年金で老後の生活費はまかなえる?

生命保険文化センターによる「令和元年生活保障に関する調査」によると、78.8%の人が老後の日常生活は公的年金だけではまかなえない、と回答しています。同年に、「老後生活資金2,000万円問題」も話題になりましたので今更驚く結果ではありませんよね。

 

 

今回は、年金受給額に大きな影響のあるマクロ経済スライドの仕組みを取り上げます。

 

日本の公的年金制度

 

日本の公的年金制度は、現役世代が納めた保険料がその時の受給者の給付に充てられる賦課方式です。年金額は、賃金や物価の変動などを基準として改定します。

そして、新たに年金受給する人(新規裁定者)は賃金上昇率、既に年金受給している人(既裁定者)は物価上昇率で改定が行われていました。簡単に言えば、賃金や物価が上昇すれば年金額も上がり、賃金や物価が下がれば年金額も下がるということです。前述の年金額が上がるプラス改定の場合、「マクロ経済スライド調整」により、年金額の増額を抑制させます。

 

マクロ経済スライドとは

 

平成16年の年金制度改正法によって導入された、賃金・物価による改定率を調整して、年金の給付額を調整する仕組み。

具体的には、保険料を負担する現役世代の人口減少や年金給付を受ける高齢者の平均余命の伸びによる給付増のバランス悪化を避けるため、自動的に調整されます。

また、「スライド調整率」は、前記のような状況から「公的年金全体の被保険者の減少率の実績」と「平均余命の伸びの一定率0.3%」で計算されます。つまり、賃金や物価の上昇により、年金が増額される際、その上昇分よりも年金給付金額を抑制するものです。

一方、年金額が減額改定の際はさらに減額調整はされず、未調整として翌年度以降にキャリーオーバーされます。

 

ちなみに、令和3年度は、新たに年金を受給する人(新規裁定者)、既に年金を受給している人(既裁定者)ともに、名目賃金変動率(▲0.1%)によって減額改定されます。

<参考指標>厚生労働省資料より抜粋

・物価変動率

  0.0%

・名目手取り賃金変動率

 ▲0.1%

・マクロ経済スライドによる未調整分

 ▲0.1%(キャリーオーバー)

 

令和3年度から変わる年金額改定ルール

 

今まで、新たに年金を受給する人は賃金の伸び率、既に年金を受給している人は物価の伸び率より年金額を改定していました。しかし、令和3年度からは、現役世代の負担能力が低下しているときは、”賃金変動”に連動して改定されることになりました。(下記ケース参照)

年金は世代間の仕送りであり、現役世代の賃金が上昇しなければ高齢者が受給する年金の増額が難しくなりました。

ケース1  変動率が 0 > 物価 > 賃金

ケース2  変動率が  物価 > 0 >賃金

この様な「物価>賃金」ケース(物価より賃金の方が低い場合)は賃金変動に合わせる形になります。

 

まとめ

 

50歳以上の人に届く「ねんきん定期便」には、現在加入している年金制度に60歳まで同じ条件にて加入し続けたものと仮定して計算した老齢年金の見込額が表示されています。その見込額の近くには「年金見込額は今後の加入状況や経済動向によって変わります」と説明書きがあります。

年金は将来もなくならないにしても、「マクロ経済スライド」は今後いつまで続くか示されていなく、物価上昇があっても賃金上昇が低ければ年金増額は期待できません。

現役世代に自ら上乗せとして準備するか、健康に留意しながら生涯かけて働くか覚悟が必要ではないでしょうか。