麻酔の初心者の方は 

  決して この方法を真似しないでください。

 

 

 

  ここでは、レペタン麻酔の 導入から覚醒術後管理までについて より細かく説明する。

 

 

 

  レペタン麻酔詳細

 


[目次]

  初回投与量と追加量

  導入

  術直前管理

  術中管理

  手術終了に向けて

  覚醒

  術後管理

  いかがですか?




  初回投与量と追加量


  レペタンの導入初回量は 0.12mgであり、

  投与の最大総量は 0.4mg   考えておく。


  ただし、THAやTKA・RAOなど 侵襲の大きな手術では

  高齢で元気のない人を除いて 原則 初めから 0.16mg を投与する

RAOは寛骨臼回転骨切り術


  大腿骨頸部骨折時の人工骨頭置換術や骨接合術の時も基本的には0.16mg必要なのだが、

  多くの人は 超高齢で元気のない人なので 0.12mg から開始する。


  中程度の侵襲手術時や 大侵襲手術時の高齢で元気のない人 0.12mg だが

  普通の人の大侵襲手術時は 必要最低量の 

  0.16mg から開始する


  全例 0.12mg から始める方が安全なのだが 大侵襲例で 0.16mg から始めるのは、

  レペタンの作用発現が遅く 効果が確実になるまでに長時間を要するからである。


  そのために、気道確保直前の呼吸数が 20/分以上であれば

  気道確保する前に レペタンを 0.04mg 追加しておき セボフルランも深めにしておく。

大腿骨頸部骨折の大侵襲手術を 0.12mgで始めたときに限って

   気道確保直前の呼吸数が 18/分以上であればレペタンを 0.04mg 追加する



  レペタンの効果発現遅く、静注してから 23分後やっと効き始める

  そして 10分 80%15分 90%の効果を現し20分 やっと100%になる


  したがって 

  急ぐときでも10分は待ってから呼吸数を評価し、 不十分なら その時点で追加投与する

  ただし、慣れてきたら 5分後に投与することもできるようになる。


  この様にレペタンの効きはかなり遅いので 

  適切なレペタン量になるまで時間がかかり、

  ソセゴン麻酔に比べて 侵襲をコントロールすることがより難しくなる


  またレペタンを増量する追加単位として、 

  5倍に希釈して初回の 3ml(0.12mg)を投与した後は 

  1123ml と追加量を増やす。 つまり 

  0.040.040.080.12mg 追加して、

  総量を 

  0.120.160.20.280.4mg と増やしていく。



  レペタンの 0.08mg が ソセゴンの15mg と同等の鎮痛効果を持つと思われる。


  そして

  ソセゴンの作用時間が 46時間なのに対して、

  レペタンの作用時間は 68時間くらいである。


  レペタンの極量ceiling effect)は 0.4mgと考えられ、 

  これ以上投与しても 効果はなく 副作用も見られない。



  導入


  導入は、レペタンを静注した後に プロポの迅速導入と GOSの緩徐導入を 同時に行う

  迅速と緩徐の中間の速さの導入になる。


  レペタンを投与してから 1〜2分後に GOSとプロポフォールを同時投与する。

  そのとき プロポフォールは分割投与とし換気しながら 徐々に麻酔を深くする


  こうすることで、

  自発呼吸を残したまま 気道確保の侵襲に耐えうる十分な麻酔深度を得ることができる

ソセゴンは 分割投与したが

   レペタンは 血管痛もなく ゆっくり効くので 分割する必要がない



  まず、レペタンを 0.12(or 0.16mg 投与するところから、  レペタン麻酔は始まる


  あらかじめ レペタン2A 0.4mg10mlのシリンジに詰めておく。


  患者さんが手術台に横になったら「すぐに

  補液の三括につないで5倍に希釈し全量を10mlにした後

  3ml(0.12mg)または 4ml(0.16mg)を 静注する

レペタンの効きが遅いので少しでも早いタイミングで静注する


  この後 麻酔回路の先端を 「蓋」 で塞ぎ、

  セボフルランの気化器を 5%に設定し

  麻酔回路内を 酸素・笑気を  3・3(L/分)で満たしておく。


  モニターをつけ 血圧カフを巻いて 血圧を測った後(初回投与12分後

  あらかじめ GOSガスで満たした回路に繋がれたマスクを 軽く患者さんの顔の上に載せ、 

  同時に 初回のプロポフォールを 0.5 or 0.6mg/Kg、看護師さんに 静注してもらう

ソセゴンのときは 0.4 or 0.5mg/Kgであった

   ソセゴンより多いのはレペタンの効きが遅く導入時では まだ効果が不十分なため


  プロポフォールを初回量として 

  0.5 or 0.6mg/Kg26mlほど静注すると、ほとんどの人は1分以内に就眠する。

  不十分なときは 12ml 追加するが、呼吸が止まらないように 過量に注意して行う。

 

  初回のプロポフォール投与量は、

  女性の場合が 0.5mg/Kg

身長160cm以上や40才未満のときが この基準で高齢者は少なめにする

  男性の場合 0.6mg/Kg

身長175cm以上や40才未満のときが この基準で高齢者は少なめにする


プロポフォールの投与量は呼吸を止めずに かつ早く麻酔するために重要である

「まとめ」 記事で確認し自分で すぐ簡単に計算できるようにしておくこと


  5%GOSで 5〜6分ほど換気しながら 血圧の低下を指標として麻酔が深まるのを待ち

  もう一度 気道確保の侵襲を抑えるために 

  2回目のプロポフォールとして 初回投与量の70%量を投与して

  酸素笑気を 1・1(L/分)に セボフルランも 2%に 下げてから

  2回目のプロポ投与から約30秒後に ラリンゲルマスク i-gelで 気道を確保する


  ただし、1回目のプロポが多めだったときは 2回目を少なめに、

  1回目が少なめだったときは 2回目を多めにする。



  文章だと ごちゃごちゃと面倒くさそうだが、

  何度か 自分でやってみれば   すぐに慣れる


  最初にレペタンを注射してから 気道確保が終わるまでの時間は、およそ 56分である。

  普通の迅速導入だと 2〜3分なので、それよりは時間がかかる。



  術直前管理


  気道確保した後、自発呼吸と

  気道確保器具の「リークの有無」 を確認し、

  セボフルラン濃度は 2%のままとしておく。 


  この状態で 手術開始時までに 

  自発呼吸 「」 を目安にしながら

  開始前の適正な呼吸になるように 

  レペタンを追加する

 

  もちろん 初回投与だけで 追加を必要としないこともあるが、そうでないときは

  レペタンの効く時間が遅いので 手術開始までに目標呼吸数にすることが難しくなる

  レペタンがなかなか効かず 量が多くなりそうなときは、

  過量に注意しながら 早めに追加投与する必要がある


  この追加タイミングは、経験を積めば 慣れてくる


  

  セボフルラン濃度が 2%の状態で、

  程度の手術侵襲の場合の術直前目標呼吸数は10回/分以下で、

  きな   手術侵襲の場合の術直前目標呼吸数は  6回/分以下である。


  6回以下を目指してレペタンを増量すると、

  ごく稀に 呼吸数が 1回/分以下になり 呼吸が止まってしまったように感じることがあるが

  手術侵襲の刺激で かならず呼吸は出現するので 心配しなくていい

呼吸が出ないときの対応は、「解説」 5. を参考にされたい


  中程度の侵襲の手術とは、

  脊柱の固定術・下肢の骨切り術や骨接合術

  ACL再建術などであり、


  大きな侵襲の手術とは、

  THA・RAO・人工骨頭置換術・ガンマーネイルによる骨接合術などの股関節の手術と 

  TKAである。


  エンダーピンや ハンソンピンによる大腿骨頸部骨折の骨接合術の場合は

  ソセゴン麻酔で対応する


  患者さんの元気度や 全身状態に応じて、

  若干この数値を変更する。

  例えば 大腿骨頸部骨折のときのように 

  超高齢で元気がない人の場合は、

  目標呼吸数を 6回以下でなく 10回/分以下とする


  もちろん 初回投与だけで十分で、追加を必要としないこともあるが、

  一方で 超高齢で元気がないように見えても

  レペタンも ソセゴンと同じく、

  その感受性に4倍ほどの個人差があるので、

  レペタンが 2A(0.28〜0.4mg)必要な人もいることを頭に入れておくベキだ。


  認知症が酷い人は 上手く痛みを伝えられなくて 痛みのためにせん妄になることがある

  オピオイド感受性の低い耐性のある人は 

  通常の術後鎮痛剤では 痛みをコントロールできず、その場合

  メジャートランキライザーを使っても無効であり、

  マイナートランキライザーは 効果があるが 舌根沈下により気道閉塞しやすい。


  私のオピオイド麻酔では

  術中の呼吸数をコントロールすることで 

  術後の鎮痛を得ることができるので、

  オピオイド感受性の低い耐性のある人でも 

  術後に鎮痛剤を必要とすることは少なく

  使うとしても  通常の術後鎮痛剤で 十分 

  疼痛コントロールが可能であり、

  今まで 術後せん妄を経験したことがない。



  セボフルラン2% 手術開始前の呼吸数が 

  上記の値になったなら

  セボフルラン濃度を 3%に上げて待機する


  これは 

  皮膚切開時の侵襲を少なくするためだが、

  収縮期血圧が 80mmHgより下がったり

  1回換気量が 100ml  を切るとき

   ETCO2が  60mmHgを超えるとき

  セボを 3%に上げれないこともあるし、

  ソセゴン麻酔では   ほとんど見られないが、

   2%より下げなくてはならないこともある


  特に、ETCO2が溜まって60mmHgを超えることが 頻繁に見られる

  ETCO2は 70mmHgになっても問題となるようなことを経験したことがないが、

  一応 60 mmHgを大きく超えないように 

  セボフルラン濃度を調節しておく方がいい

ETCO2の上限については、「解説」 7. を参照


  レペタン麻酔では、

  時間が足りなくて 手術開始時にレペタンの効果が十分に発揮されていないことも多く、

  かつ レペタンの対象となる侵襲の手術では 皮膚切開部位の局所浸潤麻酔があっても 

  メスが入って少ししてから痛がり バイタルが変動することが多いので、

  可能ならセボフルランは 3%に上げておき

  十分量のレペタンが投与されて効いてきて術中の目標呼吸が達成されてから2%に下げる



  レペタン麻酔では、

  手術が始まるまでに 目標の呼吸数にすることが 最重要ポイントであり、

  これが達成できれば 後は かなり楽にできるようになり、慣れてくると 

  この達成率が上がり 8〜9割以上になる。


  だが、

  レペタンの効果発現時間を考慮し 追加投与の要/不要を考えながら 

  手術前の目標呼吸数を達成するために レペタンを早めに投与するのは なかなか難しく、

  このときは 

  ストップウォッチが必須アイテムとなる。


  したがって 多量のレペタンが必要となる症例では、

  手術が始まるまでに 目標の呼吸数にできないことがある


  この場合は、手術が始まってからでも

  セボフルラン濃度を調節することで なんとか侵襲を抑えながら、

  レペタンの効果発現時間を考慮し 追加投与の要/不要を考えながら麻酔を行って、 今度は

「術前の」 目標呼吸数でなく

術中の」 目標呼吸数になるように

  少しでも早く レペタンの必要量を投与するようにする。



① 目標呼吸数にするため 追加投与した際に、

  呼吸数が極端に減って 無呼吸(1回/分以下)になることがある

  この場合は いったん セボフルレンを切って セボ濃度を下げて 呼吸を出してから

  気化器のセボ濃度を1%程度(0.5〜1.5%)で維持すると 数回/分の呼吸数となる。


  この際に 換気を多くすると、

  セボ濃度は早く下がるが ETCO2も下がって呼吸刺激がなくなるので

  なかなか 自発呼吸が出現しない。

  ETCO2が下がり過ぎない程度に換気しながら セボ濃度を低くするのがコツである。


  この後 手術開始とともに 呼吸数が早くなるなら、それに合わせて セボ濃度を上げる


② また、目標呼吸数に達していないのに ETCO2が60mmHgを超えることがあるが、

  この場合は 目標呼吸数に下げることを優先しセボフルレン濃度は 2%のままで

  バッグで補助呼吸しながら ETCO2を60mmHg前後(or 70以下)に保つようにする。

  セボ濃度を下げて 麻酔を浅くしてしまうと

  メスが入った際に痛み刺激に耐えきらず、  体動を起こしたり 息こらえてしまうことがある。

  

① ②ようなことソセゴン麻酔では起きず、  レペタン麻酔にだけ起こる 注意すべき特徴である。



  術中管理


手術中の目標呼吸数の一応の目安は 

  等度であれ 侵襲手術であれ 12回/分以下であり、上限を 18回/と考える。

  ただし THAやTKAのような大侵襲手術の場合は、可能なら 8回/分以下が望ましい。


  呼吸数が 18(12)を超えるときは

  これが

  一時的な侵襲によるものでないときは

  レペタンをなるべく早く 追加する

  だが

  一時的な侵襲による可能性があるときは

  追加しないで 様子を見る


  18(12)回を超えるが様子を見たいときは、

  セボフルラン濃度を上げて  麻酔を深くし

  18回を超えないようにして    様子を見る


  レペタンを追加 増量するときも、呼吸数が18(12)回を超えていれば、 

  レペタンが効いて呼吸数が下がるまでは麻酔を深くして、18回を超えないようにする


  上記のようにして レペタンの場合は

「18 (12)回/分を上限とする

  自発呼吸数が 18回以下であれば

  手術侵襲はコントロールされているとみなす。 

ソセゴン麻酔のときの上限は 20回だが

   レペタン麻酔のときの上限は 18回

                        

  レペタンのときの 「術中適正な呼吸数は 

  12回以下であるが、

  呼吸数の下限は 特に設定していない

  メイン操作中の呼吸数が極端に少なくても(1回/分前後でも)

  覚醒に向けてセボを薄くする過程で 呼吸数は上がってくるからだ。



  ① 新たな手術部位に進んで組織の破壊が進むとき

  ② 術中の 「痛い」 操作のときが、麻酔深度のコントロールが必要なときである。


   の場合 レペタンを追加投与し

  ② の場合 レペタンを追加投与しないで吸入麻酔を深くして じっと待つ


  ② は、

  THAの手術で骨頭を脱転させる時 股関節周囲の操作をする時 大腿骨の髄内を削る時

  などである。


  このときに、血圧が上がったり 頻脈になったり 呼吸数が増えたりする。

  しかし、これらの変化は 一時的なので 

  原則として レペタンは追加せずに

  セボフルランを濃くして、 侵襲が収まり

  呼吸数が下がるのを じっと待つ。

ただし 呼吸数が24回を超えるときは

   レペタンを追加する


  特にTHAの場合、 手術操作によって 呼吸数が増えたり 減ったりを 繰り返すことが多い。

  この増減の上限が18回/分を超える場合は

  呼吸数の動きを見ながら18回を超えないように セボフルラン濃度をこまめに調節するといい


  THAで低血圧麻酔を行っているときは 

  呼吸数の増減とともに血圧も上下するので、

  このセボの調節を 細かく行う必要がある


  一方 TKAの場合、手術中の呼吸数は 比較的安定している



  あくまでも 上記の①と②を分けて対応するのが原則なのだが、 

  実は ①と②との区別はかなり微妙であり、 この鑑別が難しい

  このため レペタンを追加投与すべきか どうか 迷うことも多い


  セボフルランは ときに 4〜5%に上げることもあるが、

  5%にするときは 時間は1分以内とし、

  気化器から手を離さないようにする

  4%のときも可能な限り早く3%にまで下げる


  そして、メインの手術操作が行われている間は 侵襲が大きいことが多いので、

「原則」 として セボフルランは 2%のままにしておく


  ただし 

  患者さんの状態によっては この限りでなく、

  レペタンがしっかりと効いていて 

  収縮期血圧が 80mmHgより下がったり

  1回換気量が 100ml  を切るとき

   ETCO2が  60mmHgを超えるとき

  セボフルランを 2%より下げなくてはならないときもある。

  このようなときは、セボが 2%未満でも 

  麻酔深度は十分保たれている。


  このような理由で、TKAのメイン操作時でもセボフルラン1%で維持することがあるが、

  だからといって レペタンが過量というワケではない。



  メインの手術操作が終わったら、ここから 覚醒に向けて麻酔深度を浅くしていく



  手術終了に向けて


  メインの手術操作が終わり 閉創操作に移ったら

  覚醒に向けて セボフルラン濃度を 急速に 

  または 徐々に下げていく



  終了までの時間が 20分以内と短いときは

  まず いったんセボフルランを切って

  なるべく早く濃度を下げる

  さらに急ぐ場合は、酸素・笑気 1・1から 

  2・2 または 3・3に流量を上げる


  そう急がなくてもいいときは

  ゆっくりと徐々に 2→1%  1→0.5%と、

  そして 最後には  さらに 0.50.3%と、

  セボフルラン濃度を下げてゆく


  呼気中のセボフルラン濃度が、

  メイン操作中の 2.0%から 覚醒レベルの 

  0.1%になるまでは 1020分

  1%維持のとき、   510分かかる


  十分なオピオイドが投与されていて 笑気も併用されているときは、

  原則として セボフルラン濃度が 0.1%になるまで覚醒しない


  十分なレペタンが投与されているので、

  皮膚または皮下縫合時までに セボフルラン濃度を かなり浅くしても、

  0.3%で維持していれば 早期覚醒することはない


  ソセゴンのときは 0.5%で維持した方がいい場合があったが、

 レペタンは強力であり 呼吸数も少なめに保っているので、

  縫合時には 全例 0.3%維持できる


  したがって もしも、0.3%に下げる過程で 麻酔が浅くなる兆候があれば

  それは レペタンの追加が必要なことを示している。


  ここまでセボフルランを浅くできれば、

  手術終了とともにセボを切ったとしても 多くの人を5分以内に覚醒させることができる

  ただし、ソセゴンと比べると 覚醒不良の頻度は 若干高くなる


  手術が終了し 創のドレッシング等 すべて終わり、

  それ以上 何もすることがなくなる 12分前まで笑気は使い続ける

  ただし 高齢で元気のなさそうな人は 早めに 純酸素にするようにする。


  こうやって 笑気を利用することで 早期覚醒することなく

  デスフルランと同じくらい 早く覚ますことができる



手術終了時」セボフルランを切る直前の 

  望ましい呼吸数の目安

  侵襲が程度か きいかにかかわらず 

  レペタンの場合は12回/分以下が目標である。


  レペタン麻酔では、術中に呼吸数が少なくとも 

  セボフルランを浅くすると 呼吸数が増えてくることが多いのだが、

  ときに 終了時でも呼吸数が極端に少なく、2回/分以下になることもある

  それでも 覚醒と同時に この呼吸数は ほとんどの場合 6回/分以上に回復する。


  回復しないで 1〜2回/分のままのときも 

  過去には何度かあったが、

  術後酸素を投与すればまったく問題ないし、

  今ではそんなことは見られなくなった。


  レペタン麻酔では 終了時の呼吸数が4回/分程度のこともよく見られるが

  上記の説明を聴けば まったく心配ないことが分かるだろう。


  したがって レペタン麻酔での終了時の適正な呼吸数は、 一応 412回である。

  ただし THAやTKAのような大侵襲手術の場合は、可能なら 8回/分以下が望ましい。



  私のオピオイド麻酔で「呼吸」が問題になるのは気道」だけであり、

  注意すべきは「舌根沈下である

舌根沈下については、「解説」 8. を参照のこと



  術前術中終了時の 各目標呼吸数については

  各手術を その侵襲の大きさによって

  レペタン 中大 と分類して整理すると分かりやすい。

まとめ」 は、この分類に沿って 説明している



  覚醒


  さて、 いよいよ ここからが 「覚醒」 である。


  ソセゴン麻酔よりレペタン麻酔の方が やや覚めにくいので、 それを踏まえて覚醒させる。

  その他については、「概略」 を参照して貰いたい。



  実は男性のTHAの手術で術直後のせん妄の頻度が多く、 これがまだ解決できない課題だ。

  終了時の呼吸数に問題がないことより

  せん妄の原因は「痛み」でないと判断し、

  結局 ホリゾン5〜10mg の静注で対応していた。


  この際には舌根が沈下し 気道が完全閉塞するので

  ネーザルエアウェイを使用して 病棟に帰ってもらっていた。

エアウェイについては、「解説」 8. を参照のこと


  でも 男性THAのせん妄の原因は ひょっとすると 「痛み」 なのかも知れないとも思う。

  でも 覚醒後にレペタンを使うと その評価までに20分かかるので、

  なかなか トライすることができなかった。


  一方で ソセゴンを使った後にレペタンを加えたり、

  レペタンを使った後に ソセゴンを使用しても 臨床的にはまったく問題なく 効果があり、

  教科書的には 違う種類のオピオイドを混ぜて使ってはいけないことになっているが

臨床的には問題ないと思っている。


  そこで、男性THAでせん妄が起きたときに 

  ソセゴンを15〜30mg 使ってみるのも 

  一つの手だと思う。



  術後管理


  術後の 

疼痛 ②嘔気嘔吐 ③低酸素対策について。

さらに詳しい説明はオピオイドの 「詳細」 「まとめ」 「解説」 10. の記事で述べる



疼痛対策

  女性の場合は、

  手術終了時に ロピオン1A静注投与し、

  男性の場合は、手術終了後 麻酔終了前の 

  覚醒前にボルタレン座薬50mgを挿肛する


  ただし 女性の場合も

  術後の疼痛発現の可能性が高そうな時は

  ロピオンに代えて、または追加して 

  ボルタレン座薬50mgを挿肛する


  TKAの場合 術後疼痛が強いので、

  全例に レペタンを点滴投与していた

  女性の場合 0.12mg/8時間、

  男性の場合 0.16mg/8時間で、

  かなり術後疼痛をコントロールできた。


  だが近年 術者が行うカクテル注射という鎮痛法が普及してきたおかげで

  女性では 術後レペタン点滴が不要になり

  男性では レペタン量が 0.16→0.1mg に減った


  一方 THAでは 

  女性には レペタン点滴を使わず、

  男性では レペタン0.16mg/5時間 投与している。


  中等度侵襲の手術では女性にはレペタン点滴を行わず 男性では行うことが多い。

  男性の術後レペタン点滴は、

  0.08〜0.12mg/5時間くらいである。

  


嘔気嘔吐対策

  この 術後嘔気・嘔吐対策が もっとも難しいと感じている。

  といっても、現在の 術後 嘔気・嘔吐率は 20%ほどだが…


  現在の 術後嘔気嘔吐対策は、手術終了時に全例 PZC1A静注し、

  術後 嘔気嘔吐のあるときは プリンペラン1A静注 というものだ。


  以前は ソセゴン麻酔よりレペタン麻酔で POVNが多かったが、

  侵襲コントロールをチキンとするようになった今では、どちらの頻度も変わらなくなった。


  以前レペタン麻酔でPOVNが多かったのは

  レペタン麻酔では 侵襲をコントロールすることが難しいことに加えて

  レペタンが過量になり易いからだったと思う。



低酸素対策


  レペタンを十分に使った 「私の麻酔」 では、

  術後 低酸素血症が よく起こる


  しかし 原因はオピオイドによって 呼吸が抑制され、

  CO2が溜まって 肺胞酸素分圧が下がったためなので、

  酸素を投与するだけで 「簡単」 に改善する。


  私は  術後のSpO2モニターを指標にして

  その値が低いときに限って 酸素を投与してもらうことにしている。


  ソセゴン麻酔と比べるとレペタン麻酔の方が術後低酸素の頻度は多く、 その程度も重い

  そして 手術室を出るときには大丈夫でも、

  病棟に帰り着いたときに 低酸素になっていることがあるので、要注意だ。

  しかし 酸素投与さえしていれば、そのことが問題になることはない



  ネーザルエアウェイを挿入した人も

  数時間後には 自己抜去したり しっかり覚醒して不要になるので、

  その旨を看護師さんに伝えておく。

  嫌がらない場合、翌朝まで入れておくこともある。