繰り返しになるが、別の視点から
ソセゴン麻酔とレペタン麻酔を比べて
まとめてみる。
総使用量
ソセゴン: 15〜 60mg
(+15mg div)
レペタン:0.12〜0.4mg
(+ 0.08〜0.16mg div)
術中に 上記の量を使った後
(特に男性の場合)術後の鎮痛剤として
括弧内の量を点滴に入れ、さらに
オピオイドを 追加投与することもある。
(術後オピオイド点滴法)
したがって 術後点滴分も入れると、
1症例につき ソセゴンは 最大5A、
レペタンは 最大3Aまで
使用することがある。
初回投与量と追加投与量
ソセゴンは、
最初の30mg(2A)は
全量10mlに希釈後 2.5ml ずつ投与する。
その後は 新しいアンプルを切って、
1A ずつ投与する。
ソセゴンの初回投与量は、
原則 全例15mg(7.5+7.5)である。
レペタンは、
最初に0.4mg(2A)を 全量10mlに希釈後
3(0.12)ないし 4ml(0.16mg)投与してから、
0.2mg までは 1ml ずつ、その後は
0.08mg(2ml)→ 0.12mg(3ml)を
追加する。
ソセゴン・レペタンともに、
初回投与量も 総量も 体重に依存しない。
アンダーマスク換気中に
呼吸数が 20(18)回を超えるときは
一度だけ次回量を追加する。
次回量とは、
ソセゴンのときは 7.5mg
レペタンのときは 0.04mgである。
レペタンの初回投与量は、
手術の侵襲が「中」 のとき 0.12mg
侵襲が「大」 のとき 0.16mg
であるが、
高齢で元気のない人には
「中」 侵襲で 0.08mg
「大」 侵襲で 0.12mg から、
つまり 標準量より 0.04mg 少ない量で
開始した方が安全である。
この場合、導入中に
呼吸数が18回/分以上であれば、
標準量になるように 気道確保前に
1ml(0.04mg)追加投与する。
初回投与量と追加投与量:まとめ
ソセゴンは、
7.5+7.5mg+7.5+7.5+15+15mg
2.5+2.5ml +2.5+2.5ml+1A+1A
レペタンは、
0.12mg(or 0.16)+0.04+0.04+
0.08+0.12mg
3ml (or 4ml) + 1 + 1 +
2 + 3 ml
と、増やしていく。
作用発現と持続時間
ソセゴンは、
30秒で効果発現し
3分で90% 5分で効果100% となり、
その効果は 4〜6時間 持続する。
レペタンは、
2〜3分で効果発現し
10分で80% 15分で90% 20分で100%
の効果になり、
その効果は 6〜8時間 持続する。
この効果発現までの時間を頭に入れた上で
術前・術中・終了時の
目標呼吸数を参考にして、
適正なタイミングで 追加投与する。
効果が十分になるまで 時間がかかるので、
限られた時間の中では レペタンの方が
追加投与のタイミングが難しくやりづらい。
麻酔導入
:オピオイド+プロポフォール+GOS
三つ使って やや時間をかけて導入する
[オピオイド投与]
ソセゴンの初回投与量は、すべての症例で
7.5mg+7.5mgの15mgである。
レペタンの初回投与量は、症例により
0.12mg または 0.16mgである。
0.12mgは 中侵襲手術時か
大侵襲手術時の超高齢者の場合である。
0.16mgは
普通の人の大侵襲手術時のときである。
(中侵襲手術時の超高齢者の場合は
0.08mgから始める方が安全である)
0.16mg投与で ごく稀に 呼吸数が
1回/分前後まで減ってしまうことがあるが、
大侵襲手術なので 手術開始後の侵襲によって
「かならず」 呼吸数は増えてくる。
初回オピオイドの静注 1〜2分後に、
マスクで 5%セボフルランの
GOSガスを吸入させると同時に
プロポフォールを投与する。
[プロポフォール投与]
プロポフォールは 自発呼吸を残すために
2回に分けて分割投与するが、
1回目は、
なるべく自発呼吸を潰さない程度で かつ
1分以内に就眠するように投与する。
途中で話し始めるようなときは、
プロポを 1〜2ml 追加する。
2回目は、
1回目の反応をみて 投与量を決める。
1回目が ちょうど良い量であったのなら
2回目は 70%程度の量にして、
そうでないなら、
量を増やしたり もっと減らしたりする。
1回目の投与量は 女性の場合で、
ソセゴン麻酔のときは 0.4mg/Kg
レペタン麻酔のときは 0.5mg/Kg とし、
そして
身長160cm以上の体格の大きな人や
若く元気な人が この基準 or 多めで、
高齢で弱々しい人はそれより少なめにし、
0.5ml 単位で静注する。
50Kgの女性の場合、
ソセゴンだと2ml・レペタンだと2.5ml
になる。
1回目の投与量は 男性の場合で、
ソセゴン麻酔のときは 0.5ml/Kg
レペタン麻酔のときは 0.6ml/Kg とし、
そして
身長175cm以上の体格の大きな人や
若く元気な人が この基準 or 多めで、
高齢で弱々しい人はそれより少なめにし、
0.5ml 単位で静注する。
60Kgの男性の場合、
ソセゴンだと3ml・レペタンだと3.5ml
になる。
もしくは
プロポフォールの1回目の投与量は、
女性 ソセゴンの 0.4ml/Kg を基準とし、
男性とレペタンを
それぞれ 1点の加点要因とし
1点につき 0.1ml ずつ量を増やしていく、
または 性別とオピオイドの組み合わせで、
[女性 ソセゴン]だと 0.4ml/Kg
[女性 レペタン または 男性 ソセゴン]だと
0.5ml/Kg
[男性 レペタン]だと 0.6ml/Kg とし、
そして 体格の大きな人や 若く元気な人を
この基準 or 多めとし、
高齢で弱々しい人は さらに少なめ
にする、としてもいいだろう。
[GOS換気]
導入中も
自発呼吸がしっかり残っているときは
換気でセボフルラン濃度が深くなるので、
換気時間は短めで済む。
導入中
自発呼吸がなくなったり 気道確保が難しくて
うまく換気できないときは、
セボフルラン濃度を深めるために
換気時間は長めになる。
麻酔前の血圧に比べ
収縮期血圧が 40/ほど下がった頃が
気道確保のタイミングであり、
多くの場合 最初のオピオイド投与後から
5〜6分後である。
つまり 導入に要する時間は 5〜6分である。
ソセゴンとプロポフォールは分割投与だが、
レペタンは分割投与ではない。
術前・術中・終了時の 目標呼吸数 と
術後オピオイド点滴
目標呼吸数
このオピオイド麻酔を始めた頃は、
「終了時の呼吸数を16回/分以下にする」
という原則だけだったので
とても シンプルだった。
しかし 今では、
この目標呼吸数が 術前・術中にも適応され、
しかも 症例毎に微妙に数値が違うので、
とても 複雑になってしまった。
その複雑さを書き記す前に、
まず 大雑把な数値を上げておく。
術前の目標呼吸数は、 10回以下が
覚えておくべき最も重要な数値であり、
それより侵襲が軽い場合は 12回以下となり、
それより侵襲が強い場合は 8回以下となる。
術中および終了時の目標呼吸数は
術前より4回多い14回以下が
重要な数値であり、
それより侵襲が軽い場合は 16回以下となり、
それより侵襲が強い場合は 12回以下となる。
以下に もっと細かく詳しい数値を
参考値として示すが、
上記の数値だけを基に麻酔をかけることも
十分に可能である。
これから記す 各時期の目標呼吸数を
すぐに頭に入れるのは、 とても大変だと思う。
したがって この麻酔をする始めの頃は
上記の数値だけを覚えておいて、
メモや このブログ記事を
いつでも参照できるようにして
麻酔した方がいいだろう。
おおまかには
ソセゴンは 侵襲 小・中 の手術に対して使い、
レペタンは 侵襲 中・大 の手術に対して使う。
ただし 以下の分類で
ソセゴンの 侵襲「大」とした
肩の腱板縫合や上腕骨骨折の髄内釘固定は
レペタンの 侵襲「中」として
麻酔しすることもできるが、
トイレ歩行時の PONVを起きにくくするために
ソセゴンを使っている。
また ソセゴンの方が使いやすく、
ソセゴンで対応できるなら
ソセゴンの使用を優先している。
以下の分類で レペタン「中」としたものを
ソセゴンでトライしたことはないので、
ひょっとすると ソセゴンの方がいいものも
混じっているかも知れない。
ソセゴンの術後点滴を行うような手術では、
女性はソセゴン 男性はレペタン、
という使いわけも可能かも知れない。
侵襲が小さい手術ほど
局麻による侵襲軽減効果は大きくなり、
全身投与された大量のオピオイドが
局麻の代わりになってくれるため、
逆に 侵襲が大きい手術では
局麻をする意味は 少なくなる。
したがって 局麻する方がいい症例は、
ソセゴンの「小 か 中」である。
かけようとする麻酔の対象となる
手術の侵襲の大きさが どの位なのかを
いつも心がける様にしていると、
すぐに ソセゴンかレペタンか
のどちらかを選択できる様になる。
これが分かってくると、
このオピオイド麻酔をするのが
ぐんと楽になると思う。
術前目標呼吸数は セボ 2%で達成し、
達成したら セボを 原則 3%に上げる。
セボを3%に上げることで
呼吸数は 2〜4回/分増える。
術中目標呼吸数は セボ濃度を調節しながら、
手術進行に伴う侵襲の増大に応じて
オピオイドを追加投与する。
終了時目標呼吸数は セボを下げながら、
それに伴い呼吸数が増大するようなら
オピオイドを追加投与する。
術中と術後の目標呼吸数は、同じである。
ソセゴンか レペタンか、
侵襲が 小・中・大 のどれか、
局所浸潤麻酔があるか ないか で、
「目標呼吸数」 は以下のように変わってくる。
ソ 最小:ソセゴン・侵襲 「最小」・局麻あり
陥入爪切除や乳腺良性腫瘍切除
・手根管解放術など、
局麻だけでも できそうな手術
局麻だけでほぼ完全に手術できそうなときは、
上記原則の例外とし ソセゴンは7.5mg。
局麻だけでは 不十分と思われるときは、
ソセゴンは 原則通り15mg使う。
目標呼吸数は 特に設定しないが、
最終的に14〜18回くらいになることが多い。
ソセゴンだけでは不十分と思うときは、
終了時にボルタレン座薬を併用する。
ソ 小:ソセゴン・侵襲 「小」・局麻 あり/なし
乳腺温存手術やピンニングのときの
最終的なソセゴン総量も
30mg以下のことが多い。
30mgを超えて使用する症例は
ソセゴンの効きにくい症例であり、
したがって 多く使ったからといって
副作用が増える訳ではない。
制吐剤として 全例に PZC1Aを静注する。
原則として 女性には ロピオン1A静注、
男性には ボルタレン座薬50mg
を挿肛している。
(以下、この記載は省略する)
侵襲が「中」 以上の場合は、
局麻のあるなしによって
目標呼吸数が変わることはない。
腰のヘルニア切除や除圧術
比較的小さめの骨の手術
(鎖骨や橈骨や腓骨のプレート固定など)
大腿骨頸部骨折に対する
ハンソンピン固定やエンダーピン固定術など
術前目標呼吸数は、 10回以下である。
肩の腱板縫合術や
上腕骨骨折の髄内釘固定術など
術前の目標呼吸数は、 8回以下であり、
侵襲が「中」 以上の場合は、
局麻のあるなしによって
目標呼吸数が変わることはない。
そして「中」のときは
局麻によるメリットがまだ少しあるものの、
侵襲「大」 になると
メリットは ほとんどなくなる。
超高齢者の 大腿骨頸部骨折に対する
人工骨頭置換 または 骨接合術
腰椎のスクリュー固定術 ・ACL再建術
下肢骨折の髄内釘固定・HTO など
術前の目標呼吸数は、 10回以下であり、
超高齢者でない 大腿骨頸部骨折に対する
人工骨頭置換 または 骨接合術
THA・TKA・RAOなど
術前の目標呼吸数は、 6回以下であり、
ソ 最小 :ソセゴン・侵襲 「最小」 局麻あり
陥入爪切除や乳腺良性腫瘍切除
・手根管解放術など
局麻だけでも できそうな手術のとき
局麻を併用し 目標呼吸数は特に設定しない。
術前の 目標呼吸数は、12回以下で
「ソ 小」 だが、
術前の 目標呼吸数は、10回以下になり、
「ソ 中」 になる。
腰のヘルニア切除や除圧術・
比較的小さめの骨の手術(鎖骨や腓骨プレート固定も)
・大腿骨頸部骨折に対する
ハンソンピン固定やエンダーピン固定術
術前の目標呼吸数は、10回以下であり、
肩の腱板縫合術や
上腕骨骨折の髄内釘固定術など
術前の目標呼吸数は、 8回以下であり、
超高齢者の 大腿骨頸部骨折に対する
人工骨頭置換 または 骨接合
・腰椎のスクリュー固定術 ・ACL再建術
・脛骨骨折の髄内釘 または プレート固定
・HTOなど
術前の目標呼吸数は、 10回以下であり、
超高齢者でない 大腿骨頸部骨折に対する
人工骨頭置換 または 骨接合
THA・TKA・RAOなど
術前の目標呼吸数は、 6回以下であり、
超高齢者の 人工骨頭置換or骨接合
男性のみ レペタン 0.1mg/5hrs。
超高齢者以外の 人工骨頭or骨接合
男性のみ レペタン0.16mg/5hrs。
男性には
ボルタレン座薬50mgを挿肛している。