昨日の天気から打って変わって朝から曇り空の一日、かと思ったら、午後からはシトシトと雨が降って来た。日中の気温は22度前後、やや肌寒い感じもあった。

 

「博士号求め、奈良女子大を提訴 論文審査『合格』も不授与」(配信)という記事が目に止まった。

 

「博士論文の審査合格や学術誌掲載などの要件を満たしたにもかかわらず博士号を授与しなかったのは違法として、奈良女子大大学院の学生が、同大学と運営主体の国立大学法人に博士号の授与と約1700万円の損害賠償を求めて奈良地裁に提訴したことが22日、分かった。提訴は18日付。」

 

審査委員会は合格と判断したが、その後に開かれた「別の会議」で出席者の賛成票が必要数に達しなかったことが「不合格」の理由だという。ただこれだけの説明だと、賛成の数が必要数に達しなかった理由はわからない。そこで 、記事は「学生は文部科学省に経緯を相談。文科省は、理由を丁寧に説明するよう大学を指導した。6月になって、指導教員らが、研究の設計やデータ分析が適切ではなく論文の内容を見直す必要があると文書で指摘した」とつづく。

 

博士論文の審査の段取りを考えると、まず指導教員を含めた関連分野の教員数名で構成する審査委員会で審議する。その後、審査委員会は審査結果を「大学院研究科委員会」などと称する「別の会議」に報告する。そのうえで研究科委員会での審議となって、最後に無記名投票となる。この一件では、この無記名投票で「否」と出たわけで、この一連の過程に問題点はない。

 

可否の判断は、研究科委員会における審査委員とそれ以外の委員との質疑応答などのやりとりに基づくものと考えられるので、研究科委員会の投票が「否」の結果になったのは、審査委員が「可」とした理由づけが不十分と考えられたからだろう。「指導教員らが、研究の設計やデータ分析が適切ではなく論文の内容を見直す必要があると文書で指摘した」というのは、研究科委員会での審議をふまえたものということになる。そしてここでも問題点はない。

 

では、問題点はどこにあるのか。一言でいえば、審査委員会での判断のレヴェルで論文提出者に「合格」の印象を与えてしまったことである。そして審査委員会での審査が甘かったということである。

 

ただし、大学院研究科は教育機関でもあるので、この博士学位請求論文を完全に棄却したわけでもないだろう。見過ごせない問題点があるので、再検討したうえで、書き直して再提出しなさい、としているはずである。

 

このように考えると、裁判所に「博士号の授与」や「約1700万円の損害賠償」を認めさせるのは難しいと思われる。書き直して再提出するか、ほかの大学院に論文審査を求める、といったところが取るべき道である。