本日は一日雨。日中は蒸し暑く、夜になって多少涼しくなった。

 

その雨のなかを、日本フィルの今シーズン最後の定期演奏会へ。

 

前半のリゲティのヴァイオリン協奏曲はなじみがないが、現代曲としてはとっつきやすい気もする。全5楽章で、演奏時間は30分少々。第1楽章のさざ波のような進行はケヴィン・プッツの作風を感じさせる。第2楽章は内省的なメロディがどこか東洋風ないし日本風。第3楽章は神秘的な雰囲気で始まり、それが急変する。第4楽章も最初こそ神秘的な曲調なのだが、次第に高揚していき、キーキーと甲高い響きはジョージ・クラムの「電気昆虫」を思わせる。そして最後の第5楽章はカデンツァが聴きどころだが、打楽器群の活躍は「春の祭典」を凌ぐか、といった感じ。独奏は米元響子で、十分な研究と準備の成果が発揮されているように見えた。アンコールのクライスラー「レチタティーヴォとスケルツォ」の豊かな響きもよかった。

 

後半はシューベルトの交響曲第8番。広上淳一の指揮は変幻自在で、各フレーズから様々なニュアンスを引き出していた。何よりも余裕と遊び心があって、一言でいえば、この作品に内在する感情の移ろいが十全に表現された演奏だった。おそらく指揮者も演奏者も聴衆もみな楽しい時間を共有したことだろう。そしてこれこそが「生演奏」のおもしろさなのだと思った。