本日は朝からよく晴れた。気温は31度を超え、予報では「熱中症に注意」と呼びかけられていた。

 

熱中症という言葉を初めて聞いたのは1994年ころだったように思う。7月下旬の日曜日、夕方のラジオで少年野球チームの小学生が熱中症で病院に運ばれた、というニュースが流れていて、日射病ではなく、「熱中症」を知ったのだった。

だいたいそれまでは運動するときは水を飲むな、などといっていたし、夏の高校野球も炎天下で行なわれることに疑問を持つ人は少なかった。また、高校のクラブ活動の合宿でテニスをしていた生徒が意識を失って倒れ、救急車で病院に運ばれた、というのも単なるエピソード的な話だった。

 

今にして思えばあれは熱中症だったのだろうか、という個人的な体験を一つ。

中学1年の夏休みのこと、39度台の熱が出た。近所にかかりつけの医者がいて、往診してもらった。食欲もなく、冷蔵庫のアイスクリームを出されても、ベトベトした感じで食べる気がしなかった。医者からはブドウ糖の注射を打ってもらったような気がする。だが熱は3、4日つづいた。土曜日の午後だった。仕事から帰ってきた父が熱が下がらない様子を見て、病院に行った方がいい、といった。かかりつけ医は当てにならない、という意味合いもあった。

近所の知り合いに頼んで、車で家からさほど遠くない病院へ連れて行ってもらった。夕暮れ時で、待合室には誰もおらず、すぐに診てもらうことができた。

医者は開口一番、「脱水症状を起こしている」、「トイレに行きたければ行ってください」といった。「トイレ」の意味は、これからしばらく動けないから、ということだったようだが、からだは空焚き状態なので出るものは何もない。そこでただちに点滴の準備となった。中学1年ということもあって、500ccの点滴を30~40分かけて打った。終わって体温を測ってみると、37度台前半に劇的に下がっていたのだった。

これで帰ってもよかったのだが、医者が「泊まっていけば」というので、大事を取って入院することにした。結果的に2泊3日の入院となったが、病院の食事をあまり摂ることもできず、ふらふらの状態だったが、3日目に体温が36度台になったので帰宅して家で休むことにした。

 

後日かかりつけ医に入院したことを話したところ、「(熱が下がらないのは)腸チフスを疑いました」、「点滴は時間がかかるのでできなかったです」ということだった。もちろん「腸チフス」などではなかったが、あれは夏の風邪から熱中症のような状態になったということなのだろうか。

いずれにしても、私の顔を一目見て、「脱水症状」と診断した医者の眼力に救われたのだった。