今日も晴天だが、何となく視界がぼやけているのは湿気のせいか、それとも黄砂の影響か。ずいぶん前の話になるが、この時期に旧甲州街道・上野原宿から見た富士山がか幽霊のように霞んでいたことを思い出した。たぶん湿度が高かったためだろう。

 

それはともかく、午後からNHKホールへ。原宿からの道が人でごった返していて、たどり着くまでが難行苦行。ロビーでしばし休んで気分を変え、5分前に座席に着いた。とはいえ演奏が始まったのは8分遅れ。一曲のみだから余裕を取ったのだろう。

指揮のエッシェンバッハについては2年前にもマーラーの5番を聴いている。その時の印象はというと、「ステージに現れたエッシェンバッハはがっしりとした上半身に比べて脚が細く、少し足取りがおぼつかないところに年齢を感じさせるが、その姿は穏やかな僧侶のようである。棒の振り方は決してうまいとはいえないが、小さな身振りで要所を抑えたものだった」というもので、今回も全く変わらない。

 

本日のブルックナー、最初の二つの楽章のテンポがやや遅めなのは指揮台までゆっくりとした足取りで歩いていたことと関係しているのだろうか。第1楽章はホールの余韻が乏しいこともあってオーケストラの「素」の音を聴いた気分だったが、終結部の弦と金管のバランスが見事だった。第2楽章にはいるとオーケストラの調子が上向いてきた感もあり、あの頂点に至るまで「これぞブルックナー」という大音響を楽しむことができた。つまり、ここでオーケストラはホールの限界を突破したということだろう。そして残りの二つの楽章はいくぶんかテンポを速め、全力を傾けた爽快な演奏になった。

 

ということで、終わってみれば自然な流れをもった演奏で、作品と演奏者との一体感がよく表れた演奏だった。そして放送と実演を比較してもあまり意味がないと改めて思った。