この記事はSSSRC 2023 Advent Calender 20日目の記事として書かれています.

 

こんにちは,ロケット電装系リーダーからロケット全体のPMに昇進したB4の浅井です.
学部生としての日々もあと3か月ということで,卒業研究が佳境を迎えつつあります.当初の予定では,この時期はもうバチっと成果を出して論文執筆もスタートさせている…はずだったのですが,正直全然成果出てません.いつも通り切羽詰まってます.とうとう大学四年間,最後までずっとこの調子か…お前変わらんかったな(パァン!)

 

さて今回は,11月~12月にかけて取り組んだ加速度ロガー開発についてお話します.

 

経緯 

団体初となるハイブリッドロケットの打ち上げに向けて日々開発を続けている我々ロケットプロジェクト.

打ち上げた機体を減速落下させて回収するためのパラシュートを先日新たに購入しました.パラシュートを新調したとなると,やはり「このパラシュートの抗力係数がいくらなのか知りたい…知りたいよぉ…」という話になりますよね(シミュレーションに関わってくるので).

そこで,パラシュートを取り付けた物体を実際に落下させてその速度の変化から抗力係数を見積もる,という実験が構造系の方で計画され,

 

「速度ないしは加速度を記録できるロガーを作ってくれ」

 

と電装系に依頼が来たのです.そして「今日の日シリ第2戦でオリックスちゃんが勝ったら俺が担当するよ」とか宣った結果,見事勝利.鮮やかに自分の首を絞めた僕のロガー製作が始まりました.

 

 

構成 

そんなこんなで作り始めた加速度ロガー.構成は次のようにしました.

 

マイコン:Nucleo L432KC
センサー:BNO055(9軸センサーフュージョンモジュール)
記録用メモリ:micro SD
電源:006P型 9V電池

 

基本的にはロケット電装の流用です.
小型化・軽量化を目指していくならもっと然るべき仕様に落ち着くと思いますが,さすがにそこまでやる余裕はなかったので….まあ,こういう形にしておけばうちのメンバーならある程度扱いやすく,手を加えることもしやすいでしょうし,別に悪くないのではと思ってます.

 

 

EMの完成・実験実施 

ちょっと立て込んでいたこともあり,実験の3日前から製作開始となりました(またギリギリかよ…).ソフトも含め大部分が流用なので,そこまで手はかからん…と思っていたのですが,いざ作り始めるといろいろこだわりたくなってしまっていつものデスマーチがスタート,結局実験前日は徹夜したのでした(そして結局こだわりポイントは実装できず).
BBMを経て出来上がったEMがこちら.

 

 

バッテリーを接続すると7セグに電圧が表示され,トグルスイッチがONになると記録がスタート,赤色LEDが点灯します.

やはり「光る」は正義です.異論は認めない.

 

実験結果もそんなに大外れではなかった?ようで,


 

1枚目が加速度の理論値,2枚目がこのロガーで記録した実験値(三点移動平均)です.

(どちらも同期の天才が出力してくれました.ありがとうm(_ _)m.彼の書いた天才なアドカレはこちらからどうぞ.)

 

そんなわけで,安定の徹夜にはなりましたがなんとかそれなりのものを作ることができました.

 

 

代償 

この徹夜作業の間,LINE等を全然開かずほったらかしにしてたんですよね.

 

そしたら翌日,彼女にフラれました.

 

 

 

 

 

 

 

 

\(^o^)/オワタ

 

 

(さすがにこの1日連絡が遅れただけでフラれたわけではございません.これはあくまでダメ押しであって,以前から僕という人間に至らない点が数多くあったのがそもそもの原因です.)

 

なんというか…ロガー冷めちゃった(?).
記事執筆時点でフラれて一か月ほど経つものの,いろんな物まだ全然処分できてなくて部屋に残ってますね…僕がYouTuberだったら燃やして焼き芋やる ところですが,YouTuberじゃないからか出来ません.

 

彼女に構わずロガーにばかり構っていたあほちんは,然るべき報いを受けたのでした.

 

 

EMの問題点 

しかし,いつまでも落ち込んではおれんのです.
実験こそ終わったものの,EMには大きく3つの問題点がありました.

  1. 記録前に生成されるcsvファイルの名前が固定なので,計測の度にデータが上書きされる(都度PCにファイルを移す必要がある)
  2. 基板や部品がむき出しなので破損リスクが高く,固定に苦労する
  3. 加速度の記録しか実装できておらず,(抗力係数を出すために必要な)速度の算出・記録まではできない

今後同じような用途で使うときのために,重い体を無理やり起こして,これらを改善したFMの開発に取り組むことにしました.

 

 

FM開発 その① ~連番ファイル生成~ 

一つ目の問題点について取り組みます.

要するに「記録開始のスイッチがONになった回数(i)を数えて,記録前に生成されるファイル名の最後にそのiの値が入る」ようにすればいいわけです.

 

簡単じゃん,と僕も思ってたんですが,EM開発時に沼ったのは実はこれでした.

普通にC言語で書くんだったら

こんな感じでいけるはずじゃないですか?

実際replで(iが1ずつ増えていくfor文の中に突っ込んで)動かしてみてもちゃんと連番で複数のファイルが生成されました.

 

でもmbed(Keil Studio)だとうまくいかないんですよ!なんのファイルも,作れませんでした!!

結局,実行ディレクトリが/sd/じゃないから,ということみたいです.実際に絶対パス(/sd/parachute1.csv みたいな)で指定したらうまくいくんですけど,それじゃあファイル名に変数が入れられないし….

 

いよいよ困り果てて朝4時にslack内のtimesに投げたら森瀧さんが一撃で解決してくださいました.

いや言われてみれば確かに…なんでこれ思いつかなかったんだ (;¬∀¬)

(まじでありがとうございましたm(_ _)m.森瀧さんのアドカレは明日です!)

やっぱ僕にはソフトは無理ね….

 

なにはともあれ一つ目の問題点は解決しました.

 

 

FM開発 その② ~ケース製作~ 

二つ目の問題点を解決するために,基板を収めるケースを作ることにしました.

せっかく3Dプリンターがあるので,活用します.

航空宇宙工学設計製図の授業で習ったことを活かして,大事なところから作りました.はい.

 

印刷したものがこちら

(何気にSSSRCの3Dプリンター使うのは初めてだったので,ロケット構造系の長にいろいろ教えてもらいました.ありがとうm(_ _)m.触れた物を爆弾に変えてしまいそうな彼のアドカレはこちら

 

いや設計通り出てるんですけど,このままだとちょっと味気ないですよね….

 

 

 

 

 

 

パッケージデザインするか….

 

 

 

 

というわけでパワポでデザインしてラベル用紙に印刷しました.

(団体ロゴとプロジェクトロゴはおまけ)

 

青空の中をロケットが駆け上がっていく様子をモチーフにしたんですけど,描いてる途中からハチワレの生え際にしか見えなくなるという呪いを受けました.

 

 

FM開発 その③ ~速度の算出と記録~ 

三つ目の問題点は,速度の算出と記録ができないこと.

パッケージに「Velocity」の文字を入れた以上は実装したいところ,でしたが…

 

 

 

 

間に合いませんでしたm(´・ω・`)m

 

なんとか本記事の執筆に間に合わせたかったのですが無理でした.加速度データをPCに移してから処理するかたちでもいけなくはないとはいえ,加速度センサーから速度をいかに精度よく計算するかこそ,いわゆる「顧客(読者)が本当に必要だったもの」だと理解していますので非常に心苦しいのですが,すみません限界です.優先順位的にはパッケージデザインなんかよりこっちの方が上だろとのご指摘,ごもっともでございます.アドカレだし,「作りたい」と思った方を優先してしまいました.

 

実際に実装するならこちらの記事のように台形積分で計算するかなというところです.

積分誤差の蓄積(ドリフト)が気になりますが,今回のようなSSSRCが実施するパラシュートの試験はデータを取る時間がかなり短い(10秒とかそのくらい?)ので,なんやかんや耐えるのでは,と楽観視しています.

 

FM完成 

以上でなんとかEMの問題点をすべて解決できましたね!

誰が何と言おうとすべて解決しました.いいね?

 

最後に,回路まわりで追加したかった機能を足していきます.

 

彼女にフラれても,それでも基板を手に,開発を止めないその強い信念.


「彼女ニ振ラレテモ 基板ヲ 手カラ離シマセンデシタ」
 

SSSRCの木口小平として新入生教育の講習資料に載る日も近かろう.

 

 

 

出来上がった基板をケースに収めて…

 

完成!!

EMからの細かい変更として,

  • micro SDの有無をチェックするLEDを追加(カードが刺さっていると点灯.刺さっていないと点滅し,記録開始のスイッチをONにしても記録中を示すLEDが光らない.)
  • 記録中を示すLEDの色を黄色に変更(赤は異常を伝えるSD有無のチェックの方に回した)
  • 電源投入用のロッカースイッチ(私物)を追加
    • ON/OFFの字の向きが気に入らないけどこれしか手持ちなかった
の三つをやりました.
 
(でもちょっとびみょい…ラベル用紙安っぽいし,極低頭とはいえネジの上から貼るのはやっぱダメだった.なんか赤色LEDと黄色LEDの明るさ違うし…納得いかないのでいつかなおすいつか(今回はもう時間がない)(締め切り1分前))
これから,各種パラシュート試験などの場面で活躍してくれたらと思います.
 

 

おわりに 

2年連続で4000字を超える長文にお付き合いいただき,ありがとうございました.

正直アドカレにリソース割きすぎました.くぅ疲どころの騒ぎではありません.来年からはちょっと考えます.

 

 

P.S. 速度算出と記録の実装は…無事に卒業出来てからで….