失業や病気、借金などで生活困窮に陥った人たちをサポートしているNPO法人SSS。そんな私たちが注力していることのひとつに「就労支援」があります。
今回のコラムで紹介するのは、SSSの中でも非常に熱心に「就労支援」に取り組んでいる川越寮の施設長、岸一郎です。
―――利用者一人ひとりが「働くよろこび」や人に奉仕することで生まれる「生きがい」を味わってほしい。
そう熱く語る岸。彼がそんな考えに至ったのは、自身の経験からでした。
もともと不動産会社で取締役を務めていた岸。マンション開発事業で数十億の売上をあげるだけでなく、人事労務や人材教育の責任を負うなど、会社経営をけん引していました。
しかし、リーマンショックにより業績が悪化。2009年には自主退職を決断しました。当時、強く思っていたのは「売上だけを重視する結果主義はむなしい」ということ。「利益のためではなく、人の役に立てる仕事をしたい」と考えるようになったのです。
2011年にはSSSに入社。施設長としてのキャリアを歩み始めます。
生活に困窮した方に対する自立支援をする中で、働きがいを感じるようになった岸は「この喜びを利用者にも味わってもらいたい」と考えるようになり、自ら工夫をし、独自に就労支援の仕組みを確立しました。
入所後、各種手続きを終えて、利用者の生活が安定してきたら、まずはパート・アルバイトを中心に就労先を探すところからスタート。体が慣れてきたり、能力の高い方に関しては6ヶ月後を目安にフルタイムへとステップを踏むよう促しているといいます。
さらに『自立支援セミナー』による自己啓発・履歴書添削や求人情報の検索、スーツの貸し出しといったSSSが統一でおこなっている支援の他にも、マインド面でのサポートを欠かしません。
宮沢賢治の『雨ニモマケズ』のフレーズや『平家物語』の「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす~」といった部分を説明しながら今までを振り返ってもらったり、これからの人生が永遠でないことなどを一緒に考えるのだとか。
自身の内面と向き合うことで、形式だけではなく、自分の人生と向き合い、今後の未来のために自分の意志で一歩を踏み出せるように促すのです。中には涙を流すような方までいらっしゃるといいます。
結果、岸が施設長を務める川越寮では定員39名のうち31名(約8割)が清掃や介護、製麺工場等に就労しており、30代~50代といった現役世代だけではなく、65歳以上の高齢者もなんらかの形で働いています。しかも、1年間で24名が自立退所した実績も。
また82歳の方が清掃業で働きはじめ、イキイキと仕事に通って1年以上が経過した事例は、岸にとっても大きな自信となりました。
岸が目指しているのは、最終的に利用者が「自分の人生はよい人生だった」と言ってもらえるような支援をすること。今後も岸は利用者の人生と向き合い続けていくはずです。
詳しくはこちらをご覧ください。
更新日:2020年02月19日
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https://www.npo-sss.or.jp/column/2019-6-12