見知らぬ電話番号だ。誰だろうと出てみると、以前の会社でお世話になっていた得意先の社長だった。

あたしが二十歳の時からずっと取引をしていた。電話の理由は分かっていた。先日、残暑見舞いなるお礼状を送ったからだ。
一年たった今、振り返ってみると本当にお世話になっていたんだなぁと思った。でも思っているだけでは何も伝わらない。で、出してみた。

あたしが思っているよりこういうものってのは大切なんだな、と話しながらつくづく感じた。
本当に仲良く商売させてもらっていたけど、実際は違ったんだなと思う。やっぱり看板があっての商売で、あたしはただの橋渡しでしかなかったんだ。
なぜなら、今のあたしにかけてくれる言葉がまったく違う。独立して収入は違えど、同じ立場になったからなんだろうな。普段孤独な分、ますます心に響いた。看板を取っ払ったなにもないあたしに、身体の心配や仕事というものへの気の持ち方を教えてくれた。もしかしたら、同じ言葉を以前から言ってくれていたかもしれないが、なんだか泣きそうになった。

赤の他人が気にかけてくれていることが、これほど嬉しいとは。いや、他人からの言葉でこれほど感謝するとは思ってもみなかった。

答えは当たり前のようには出ないけれど、あたしは今、感謝という言葉を言えるぐらいにはなった。