第16章 あの頃の忘れ物(その2)
大広間に集まった男士達は審神者の話を聞くことになった。
「私と小狐丸が最初に出逢ったのは…私が友達とかくれんぼしていた時でした…隠れ場所を探してるうちに、小狐丸が木から落ちてました…」
「ブッハハハハ!」
「ギャハハハ!」
「アーッハハハハ!」
笑い声が響いた。小狐丸は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに顔を伏せた。
「その時はまだ名前すら知らなかったのですが…其れから、いつもと同じ場所でかくれんぼしようとしたら、犬に吠えられて木の上で泣いていた小狐丸が居たんです。その後、犬に引っ掻き傷付けられて…あの時は痛かったです…」
「主、お前が犬が苦手な理由はそれか…」
巴形薙刀が話した。
「ええ。あの後、飼い主である〇〇さん…と出会いました…そして…小狐丸と仲良くなりました…でも…小4の夏…傷だらけの加州清光を保護したのですが…その頃から彼奴が度々〇〇さん宅に来ていました…審神者職を追われた腹癒せでしょうか…地獄の番犬と名付けられた大型犬が〇〇さんの犬を噛み殺したんです…!小狐丸の悲しい怒りは計り知れませんでした…」
「其れで、其の写真の日付…」
蜂須賀虎徹が審神者に話した。
「ええ…審神者就任記念に残そうと撮影したものです…後継者と未来の近侍という報告書の写真として撮影したものです…」
「其れで、あんたはあの後…如何したんだ?」
山姥切国広が言うと、
「先程話したでしょう?記憶を消されたと…」
と哀しみの瞳で男士達を見つめながら話した。
「秋の遠足の帰りに小狐丸と三日月宗近と一緒に〇〇さんの帰りを待っていた…私は客間に居ました…来訪を報せるチャイムが鳴って、出迎えた相手は…彼奴だった…将来の夢を問われて、答えたんですが…彼奴…こう言ったんです…」
「何と?」
小狐丸が訊くと、審神者は声を低くして
「諦めろ。お前はなれない」
と言った。
「!」
その場に居た男士達は驚いた。
「そう言われた瞬間、頭の中が真っ白になって…本当の現実を知ったんです…」
「本当の現実ってのは…どういう事かな?」
石切丸が言うと、審神者は
「仮になったとしても、果たして、上手く行けるのだろうか…やってみないと分からないから…だけど…無理だと分かってしまうから…もうなれないと…感じてしまう…そういう現実を知ったんです…」
と話した。
「でも、なれたのではないデスか。アナタは立派な審神者なのデスよ。その記念に脱ぎまショウか?」
「はっ?!…脱ぐな!村正!だからお前は誤解されるんだ!」
「huhuhuhu…冗談デスよ。蜻蛉切♪」
「…(汗)…」
千子村正と蜻蛉切のやりとりを見た審神者は唖然とした。
「ゴホン…失敬…主殿、続きを…」
「分かりました…確かに村正の言う通り、私は審神者になれたのですが…其の素質を彼奴は見抜いてたのです…あの頃は無自覚でした…〇〇さんと再会したのは…15歳の時ですね…高校受験が近い冬の時だったから…塾に通ったりしましたけど…うろ覚えですが…小狐丸が木から転落してました…あの後、小狐丸が顔を真っ赤に染めて、泣きそうな顔をして、逃げ出したんです…恥ずかしかったみたいですね…(苦笑)」
「そういや、この前も木から転落してたよな?」
鶴丸国永が小狐丸をからかう。
「穴があったら入りたいのでありまする…(泣)」
小狐丸は恥ずかしさのあまり俯いた。
「って事は…」
鶴丸国永は意味深な笑みを浮かべた。
「えっ?!」
「はい?」
小狐丸と審神者は訳が分からないというような仕草をした。
続く