HERE COMES A NEW CHALLENGER
楽天グループ株式会社
★前回までのあらすじ
・国がふるさと納税なる制度を始めた(H20(2008))
・ルールがガバかったので金稼ぎの荒い自治体がでてきた
・国がキレて制度改正して一部の自治体を締め出した(R1(2019))
・大損こいた泉佐野市がブチギレて訴訟起こしたら勝っちゃった(R2(2020))
(R7現在、特別交付税の訴訟は係属中)
今回は…
令和7年10月1日から施行予定となっている新ルール、
ポイント付与禁止に楽天さんがブチギレました。
★条文の紹介
(イカ、赤字は私のひとりごと)
(募集の適正な実施に係る基準)
第二条
法第三十七条の二第二項第一号及び第三百十四条の七第二項第一号に規定する
総務大臣が定める基準は、第一号及び第二号
(地方団体が食品(食品表示法(平成二十五年法律第七十号)第二条第一項に規定する食品をいう。以下同じ。)
を法第三十七条の二第二項及び第三百十四条の七第二項に規定する返礼品等(以下「返礼品等」という。)
として提供する場合には、次の各号のいずれにも該当することとする。
これは簡単に言うと
まず地方税法に「寄付したら控除いけるで」っていう規定があって
総務省告示で
寄付すると控除OKな寄付ってのはこういう条件下の寄付よ!
と詳しく書いてある、という構図で
↑はその内容を謳っている、ということになります。
一 地方団体による第一号寄附金(法第三十七条の二第一項第一号及び第三百十四条の七
第一項第一号に掲げる寄附金をいう。以下同じ。)の募集として次に掲げる取組を行わないこと
イ 特定の者に対して謝金その他の経済的利益の供与を行うことを約して、
当該特定の者に第一号寄附金を支出する者(以下「寄附者」という。)を
紹介させる方法その他の不当な方法による募集
↑これはもともとあります。
↓追加部分
ロ 次に掲げる者を通じた募集
⑴ 寄附者から返礼品等の譲渡を受け、当該寄附者にその対価として金銭の支払を
することを業として行う者することを業として行う者を通じた募集
⑵ 第一号寄附金の寄附に伴って寄附者に対し金銭その他の経済的利益(第一号寄附金に
係る決済に伴って提供されるものであって、通常の商取引に係る決済に伴って提供され
るものに相当するものを除く。)を提供する者(第三者を通じて提供する者を含む。)
(イカ略)
下線部…
つまり…
ポイント、アウト!
ってな意味になります。
私も勉学の現役(?)を退いて長いので感覚はさび付いていると思いますが…
中身を見てみたいと思います。
★楽天グループ株式会社の主張
ふるさと納税へのポイント付与を禁止する総務省告示の無効確認を求める訴訟の提起について
楽天グループ株式会社は、ふるさと納税へのポイント付与を禁止する
総務省告示の無効確認を求める行政訴訟等を、東京地方裁判所に本日提起しました。
等…?あー、執行停止とかかな?
訴訟の提起に至った経緯
当社はこれまで、地域振興や地域の自立的な成長を支援することを目的に、
~略~ふるさと納税の普及促進に取り組んできました。
従前より「楽天市場」の仕組みの一つであったポイントの付与は、
~略~2019年からは自治体に負担を求めず当社の負担において実施しています。
~略~事業効率や寄附者の利便性を高め、ふるさと納税の普及促進に大きく寄与してきました。
~略~
しかしながら、2024年6月28日(金)に、総務省が自治体に対して、ポイント付与を行う
ポータルサイトを通じてふるさと納税の寄附募集を行ってはならないとする告示改正を行いました。
~略~
当社は、本告示が定めるポイント付与の全面禁止が、
ふるさと納税制度の普及に向けた民間企業と自治体の協力・連携体制や努力、工夫を否定するだけでなく、
ポータルサイト事業者へ過剰な規制を課すものであり、
ふるさと納税の根拠法規である地方税法の委任の範囲を超え、総務大臣の裁量権の範囲を逸脱し、
またはこれを濫用する違法なものであると考え、
本告示が無効であることの確認を求める訴訟を提起するに至りました。
ちょっと泉佐野訴訟を意識しているように見えますね。
なお、当社は2024年6月28日(金)より、本告示に対する反対署名活動(注2)を開始し、
2025年3月18日(火)には、集まった295万2,819件(注3)の署名を、
当社代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史より内閣総理大臣に提出しました。
へー・・・
訴訟における主張の概要
本訴訟における当社の主張の概要は以下の通りです。
•総務省による本告示は、実質的にポータルサイト事業者に対して
ふるさと納税寄附者へのポイント付与を禁止するものである
•総務省は本告示の理由としてポイント付与競争の過熱化を指摘するが、
そのような事実があったとしても、付与するポイントの割合に上限を設ければ十分であり、一律に全面禁止する必要性はない
一理ある
•クレジットカード会社等による決済に伴うポイント付与は引き続き認められており、
これがふるさと納税の趣旨に反するものではないのであれば、
ポータルサイトによるポイント付与も同様のはずであり、
ポータルサイトによるポイントの付与を一律全面禁止とするのは、過剰な規制である
いや、ふるさと納税を理由にクレカの会社がポイント競争するとは思えんな…
•本告示によるポイント付与規制は、10年以上にわたりふるさと納税の募集が行われてきた
ポータルサイトの運営方法の再構築を迫るものであり、
憲法22条1項が定める営業の自由に由来するポータルサイト事業者の運営方法を過剰に規制するものである
憲法違反は最終的に上告理由として言わざるをえなかったりするので
こういう主張はいわばお約束なんだけど、
まぁ苦しいわね。
•ふるさと納税制度の根拠となる地方税法が総務大臣に委任しているのは寄附の募集方法であって、
国民の権利義務に制約を課すことまでは委任されていないことから、
本来ポイント付与規制については、
国会での議論を踏まえた地方税法の改正など法令によって定められるべきであったにもかかわらず、
国会でポイント付与規制の是非や方法、内容について議論がされず、
法令による具体的根拠がないまま本告示が定められた
ここも泉佐野訴訟を意識しているようですね。
この点は詳しく考えたいところです。
•以上のとおり、本告示のポイント付与規制にかかる部分は、
ポータルサイト事業者へ過剰な規制を課すものであり、
地方税法の委任の範囲を超えてポータルサイト事業者へ過剰な規制を課すもので、
総務大臣の裁量権の範囲を逸脱し、
またはこれを濫用したものであって違法であることから、無効である
はい。
(赤字ひとりごと終了)
★勝算
ないです。
いや、
凄腕の弁護士さんがお揃いでしょうから
あまりめったなことは言わないほうがいいか…
そもそもこういう訴訟の前提となる要件を満たすのか
という点もありますが
※ちなみにどういう類型の訴訟かは触れられていませんが、
おそらく行政事件訴訟法の無効等確認訴訟…ではなく、
いわゆる実質的当事者訴訟なのではないかと思います。
マニアックなので省きます。
とりあえずそれはさておき
本丸の部分で言いますと
改正が違法無効なのかって点ですが…
VS泉佐野の最高裁判決を振り返りますと
地方税法の(総務省告示への)委任の趣旨を考えると
過去の実績まで踏まえて除外していいっていうようには読み取れない
やるにしたって自治体へクソデカダメージが行くし
それらのこと踏まえると
立法の段階でしっかり議論されるべきものだ
全然やってないやん
だから違法
こういう感じでした。
今回はと言いますと
別に過去の実績云々という要素もないし
完全に制度から排除されるわけでもないし
つまり、少なくとも
立法でやる話じゃろっていうその
例の最高裁判決の論理には乗らないんですよね。
じゃ実際の、中身の合理性はどうかというと…
ふるさとを想うステキな制度だから
競争過熱しちゃやーよ
という建前ではなく
ホンネ的な部分で言いますと…
ポータルサイトには
大体間接的にだとは思いますが
自治体からお金が流れます。
自社負担でポイントやっていると言っても
別の名目で自治体からとっていれば同じことなのです。
ポイントをつけようと思えば思うほど
利益を上げるには自治体からとろう、
どっかしらで誤魔化そう、となりかねないわけです。
そうなると
5割ルール(ふるさと納税の運用費用は5割に抑えてね、というルール)
も危なくなってくる(というか実際危なくなってきている)し、
新しいサイトが年々増えていっていることも考えると、
ポイントに目を付けるのは割と自然な流れかと…。
おっしゃるように上限決めればいいじゃん、ってのはありますけどね。
そこ、多少乱暴な気はしますが
いわゆる裁量の範囲内というやつじゃないかな~
フツウに適法かな~
と、思います。
結果が楽しみですね(´^ω^`)

