タイトルで見るからにつまらなさそうと思ったそこのアナタ!
超絶長い上につまらないのでお勧めしません。
今回は美しい自然の画像もありません。
でもとりあえず踏んでくれたお礼として
めちゃくそ早く出勤したときにもらえたログインボーナスな景色をお見せしましょう
何の変哲もないまちですがみやびじゃの~
あ。
折角だし昔作った動画を紹介します。
朝日のネット記事を見て、こんなん制度に詳しくないと何も伝わらんやん…と思って作った動画です。
初めての試みとはいえ作りが雑すぎる
んですが意外にも500回以上再生してもらっています。
ふるさと納税制度をオカネ事情から見たい方は視聴してみてね^^
この手の動画によくある「隠された真実」とか陰謀とかの話じゃないよ^^
イカ本題
※いい加減な私見とか余談はなるべく赤字にしています。
※国の行動主体は”総務省”が正確ですが、便宜上なるべく国と表記します。
わたくし、かつて法(律)学に励んでおったので
社会で話題になっているリーガルバトルがあるとわくわく…
そわそわ?しちゃうんですよね。
最近久しぶりに「おっ」と思ったのがこれです。
ふるさと納税訴訟、弁論へ 訴え却下の二審見直しか―泉佐野市の交付税減額・最高裁
(時事通信2024/12/5の記事より)
ふるさと納税制度による多額の寄付収入を理由に特別交付税を減額したのは違法だとして、
大阪府泉佐野市が国に決定取り消しを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)は5日、
弁論期日を来年1月30日に指定した。
弁論は二審の結論変更に必要な手続きで、同市の訴えは裁判対象に当たらないとして却下した
大阪高裁判決が見直される可能性がある。ともに行政機関である国と地方自治体が訴訟で争えるのかを
最高裁が初めて判断する見通し。
で昨日1/30
ふるさと納税訴訟、2月判決 泉佐野市への交付税減額で弁論―最高裁
(時事通信)
ふるさと納税制度による多額の寄付収入を理由に特別交付税を減額したのは違法だとして、
大阪府泉佐野市が国に決定取り消しを求めた訴訟の上告審弁論が30日、最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)で開かれた。
同日結審し、判決期日は2月27日に指定された。
弁論は二審の結論変更に必要な手続き。
同市の訴えを裁判対象にはならないとして却下した大阪高裁判決が見直される可能性がある。
(以下略)
この訴訟は一体何なのでしょうか。
これを一つのゴールとして、
この訴訟の前までを前編
それからを後編として
ふるさと納税という社会制度の歴史と内容を追いたいと思います。
①はじまり
ふるさと納税制度は2008年に始まりました。
当時のことはあまり詳しく調べる気が起きないのですが、とにかく制度がガバガバだったようです。
最初はあまり制度の周知がなされていない関係で、乗り出す自治体自体少なく、
5,6年経つ頃にようやく全国的に知れ渡った感じのようです。
そして制度が波に乗っていくにつれて、
国は自治体に制御をかけようとします。
なぜそのようなことになるのでしょうか?
国は、自治体に本腰を入れてほしいから規制を設けなかったのですが
そうなると当然、青天井にぶちかましてくる荒くれが現れるわけです。
国としては地元の産業の活性化をしたかったのですが、
てきとーに高級品もってきて売るだけみたいなことされても意味がないわけです。
ましてやアマギフとかね。
なもんでとにかく自分の思うように自治体を動かしたいがために
そうなったわけです。
泉佐野市のHP「泉佐野市の主張」によれば…
※泉佐野市は国に逆らって運営しまくってた自治体のうちの1つ
2015(平成 27)年 4 月 1 日付け総務大臣通知
初めての総務大臣通知
◎返礼品の価格を表示しないよう(にすること)
◎返礼品割合を表示しないよう
◎以下の返礼品を送付しないよう
・換金性の高いプリペイドカード
・高額の返礼品
・返礼割合の高い返礼品
2016(平成 28)年 4 月 1 付け 総務大臣通知
先の通知の項目に加え、
・金銭類似性の高いもの(を扱わないこと)
(プリペイドカード、商品券、電子マネー・ポイント・マイル、通信料金等)
・資産性の高いもの
(電気・電子機器、貴金属、ゴルフ用品、自転車等)
2017(平成 29)年 4 月 1 付け 総務大臣通知
今までのに品目を加え、さらに
・高額の返礼品(を扱わないこと)
・返礼割合の高い返礼品
◎返礼割合を3割以下にすること
◎市民には返礼品を送付しないよう(にすること)
2018(平成 30)年 4 月 1 付け 総務大臣通知
(今までのに加え)
◎(地場産品規制)「地域資源を活用し、地域の活性化を図ることがふるさと納税の重要な
役割でもあることを踏まえれば、返礼品を送付する場合であっても、地方団体の区域内で生
産されたものや提供されるサービスとすることが適切・・・」
だそうです。
国は当初、自治体を自由にしつつ、
法的義務ではなく
年々のネチネチ「技術的助言」によりコントロールしようとしたのですね。
しかし、全然言うことを聞いてくれないので毎年ブチギレていたのです。
そんな自治体に腹を据えかねた国は、
遂にそやつらの排除に動きます。
②制度の大改正 ふるさと納税指定制度
令和元年6月から、ふるさと納税制度は「ふるさと納税指定制度」となりました。
簡単に言うと今までのガバ制度に法的規制を加えるもので、主に、
返礼品が地場産品であること、
返礼品の調達費用を寄附金額の3割以下に収めること、
全体の運用費用を寄附金額の5割以下に収めること
これら3点を追加し、それを遵守することを誓った自治体のみ国から指定を受け、制度に参入出来ることとしたのです。
この指定は、毎年更新されます。
これまでの「技術的助言」を法制度化したと言う感じですね。
法制度といっても、地方税法に定められたのは一部で、
残りは法の委任を受けた「総務省告示」によるという、ちょっとヘンな形だったりします。
今まで従えやゴルァって国に言われても
あっかんべーしてた自治体も勿論参入したいわけですが、
当然国はそやつらを締め出したいわけです。
平成31年4月ごろからこの「指定」に関する手続きが行われ、
審査の通ったほとんどの自治体は令和元年5月ごろに「指定」を受け、
令和2年9月まで「やっていいよ」となりました。
しかしその段階で
大阪府泉佐野市、静岡県小山町、佐賀県みやき町及び和歌山県高野町が"不指定"になりました。
泉佐野市などは国から「どうせ君らルール守らんしアウツ(´・ω・`)b」と言われ、
ふるさと納税ワールドから蹴り出されてしまったのです。
こういった表現を使用すると市側に加担していると思われるかもしれませんが、
前から従事していた職員は、
「一部の自治体のせいで国から調査モノが来まくって最悪」
と漏らしていました。
その態度にもみられるように、
世間的にはどっちもどっちというか、
どちらかと言うとアコギな商売しとる自治体けしからんという風潮の方が強かったように感じます。
ガバい制度で自治体の積極性を釣りあげようとして
上手くいかず強権的に物事を進めようとする国
協調性をもたず我こそよければと
制度趣旨を無視したやり方を貫く自治体
法的な結論はともかく、これって「どっちが悪い」のでしょう?
人によって考えが分かれるところだと思います。
③国地方係争処理委員会(R1.9.2) 泉佐野市vs国 Round1
地方団体が国との間のことで争いたい時、フツウは一般的な一審である地方裁判所ではなく、
「国地方係争処理委員会」というところに仲裁をお願いします。
泉佐野市は不指定を受けて、ここに駆け込みました。
主な争点としては、総務省告示のルールの中に
「過去にクッソ稼いでたらアウトな」という条項が入っていたことです。
つまり当時の第2条第3号
三 平成三十年十一月一日から法第三十七条の二第三項及び第三百十四条の七第三項に
規定する申出書を提出する日までの間に、前条に規定する趣旨に反する方法により
他の地方団体に多大な影響を及ぼすような第一号寄附金の募集を行い、
当該趣旨に沿った方法による第一号寄附金の募集を行う他の地方団体に比して
著しく多額の第一号寄附金を受領した地方団体でないこと。
国地方係争処理委員会はこれを受け、国に是正勧告を発出しました。
曰く(要約)
国が「泉佐野市はルール違反するだろうし」って書類の不備とした点について、
指定制度後にはルールどおりやるとも考えられるため、理由がない。
告示第2条第3号は、この理由一つで不指定とする趣旨であり、法の委任の範囲を超えるおそれがある。
またそのようにする不指定は、技術的助言に従わなかったことを理由とする
不利益取扱い(地方自治法第247条第3項)と評価される余地がある。
そして、過去の行為が評価されるということであれば、今後の指定不指定にも影響を与えることとなり、
目的を達成するために必要最小限度の関与とすべき基本原則(同245条の3第1項)にも抵触するおそれがある
(以上より、この規定を根拠に不指定とすることは妥当でない)。
以上より、泉佐野市の書類提出には不備がなく、告示第2条第3号は不指定の理由とすべきでなく、
返礼品基準等について再度検討する必要がある。
法の委任云々とは、
民主的な手続きで生まれた「法律」が「ここの細かいとこのルール作っていいよ」と
言ってくれたら
行政が政令だの省令だの…総務省告示だの…でやっちゃってもOK
という、そういったことを指します。
それがないんじゃねーの!?ってことです。
Round1 泉佐野市○ ●国
これで国はしゅんとして泉佐野市への態度を改め…
ませんでした。
大臣曰く、
法で縛らなかったのは自治体の良識ある行動に期待したから。
おかしな行動とる自治体にしっかり対応なんて無理やわ~
なんか報道では「国の敗北」とか言ってるけど、「再検討しろ」と言われてるだけだから。
制度改正しろなんて言われてないもん!
とのこと。
この態度を受けて泉佐野市は、
不指定処分の取り消しを求める裁判を起こすことになります。
④大阪高裁判決(R2.1.30) 泉佐野市vs国 Round2
国地方係争処理委員会は裁判所ではありませんが、機能としては一審みたいなもんなので、
不服申し立て先は高等裁判所になります。
高裁判決曰く(要約)
制度の根幹を揺るがすような泉佐野市のやり方を汲んで、過去の行動を一つの理由として不指定とした総務省の決定は、
裁量権の逸脱濫用ありとは認められないとして、泉佐野市の請求を棄却。
(租税法律主義に反するという泉佐野市の主張について)特例控除対象となる寄附金を受けうる利益というものは
事実上の期待にすぎず、既得の法的地位に変更をもたらすものではないから問題とされる余地はない。
本件指定制度の導入は、…地方団体間に秩序を回復することにその趣旨があることが明らかであり、
…枠組みに反することを許容しないことを本件制度に改めて明示することにより修正しようとするものである…。
(関与法定主義の点について)技術的助言として…指摘した行為について、
その旨を改めて明確な基準をもって法定化した上、以後に効力を発する指定の要件とすることは、
関与の法定主義に何ら反するものではない。
簡単に言うと、元々の制度趣旨に沿った改正で、おかしな部分を直してるだけだから、
そこは行政の判断でやっていいでしょ、というものです。
しかしまぁ、にべもないというか。国に忖度したのかなぁと思いました。
Round2 泉佐野市● ○国
これに対し泉佐野市は不服を申し立てます。すなわち、最高裁判所です。
⑤最高裁判決(R2.6.30) 泉佐野市vs国 Round3
曰く(要約)
本件告示2条3号は、…返礼品の提供の態様を理由に指定の対象外とされる場合があることを定めるものであるから、
実質的には、…従わなかったことを理由とする不利益な取り扱いを定める側面があったことは否定し難い。
(こういうやり方をOKとするには)告示2条3項のような基準の策定が、
地方税法37条の2第2項の授権の趣旨から明確に読み取れることを要する…。
(地方税法の解釈として)…文理上、他の地方団体との公平性を確保しその納得を得るという観点から、
本件改正規定の施行前における募集実績自体をもって
指定を受ける適格性を欠くものとすることを予定していると解するのは困難…。
次に委任の趣旨についてみると、
…他の地方団体との公平性を確保しその納得を得るという観点から
特例控除の対象としないものとする基準を設けるか否かは、
立法者において主として政治的、政策的観点から判断すべき性質の事柄である。
また、…地方団体の地位に継続的に重大な不利益を生じさせるものである。
そのような基準は、総務大臣の専門技術的な裁量に委ねるのが適当な事柄とは言い難いし、
…柔軟性の確保が問題となる事柄でもないから…委任の趣旨が妥当するとはいえず…。
さらに、(法改正にあたって)過去の募集実績を考慮するか否か明確にされたとは言い難く、
…その前提において可決されたものということはできない。
以上によれば、…法の委任の趣旨等のほか、立法過程における議論をしんしゃくしても、
…基準の策定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れるということはできない。
…本件告示2条3号の規定のうち、本件改正規定の施行前における寄附金の募集及び受領について定める部分は、
地方税法37条の2第2項及び314条の7第2項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。
さらにどちゃくそ要約をすると
「高裁は行政の裁量でいけると言ったけど
クッソ自治体に影響与えるようなことは本来立法府で調整すべきことだろう
そして法改正に当たってそこまで意識して作ったようには見えんわ
よってダメ。」
ということです。
(実際には、議論の形跡はあったらしいですけどね。)
こんだけ大それたルールなら
ちゃあんと法律の委任を受けていないとだめなのです。
ちゃあんと(「授権の趣旨から明確に読み取れる」)ね。
「そうとれなくもなくね?」くらいだと厳しいんだと。
そういうことです。
Round3 泉佐野市○ ●国
なんという逆転サヨナラホームラン。
当時、驚き興奮しました。
先ほどは忖度と申し上げましたが、勿論本来司法がそんなことをしては困ります。
司法は、民主政下における少数者の守護神ですからね。
とはいえ、まぁ、覆ったら色々めんどいし、そうはならないだろうと予測していました。
実際、いかに裁判官が「泉佐野のやり方に文句垂れたいか」
その未練がましさを感じる補足意見も付せられていました。
それだけ微妙な判断だったのです。
この判決を受けて、ついに国は屈して
総務省告示第2条第3号を廃止したのです。
それから間もなく泉佐野市含め、他の3町もふるさと納税制度に復帰しました。
3町は「ラッキー」って感じですね…
⑥次なる一手
さて、こうなってしまったら…
泉佐野市は、
「違法な不指定処分で受けた不利益全部返せ!
直近のふるさと納税の実績500億な!はよ返せ!
(実際に令和元年6月ごろから弾かれ、1年間ほどそのままでした)
って言うのかなぁと思いきや
次なる一手は「特別交付税」でした。
実は国の泉佐野市への攻撃の一つとして
「特別交付税の減額」というものがありました。
特別交付税というのは
いわゆる「地方交付税」のうちの一つでして
「自治体がこういうことやってたらお金あげりゅ!」
っていう制度です。
つまり、ほぼ国庫補助金と変わりないです。
しかし交付税制度というのは基本ガバなので
建前はすごく立派なのですが、その中身はヘドロです。
語りだすとキリがないので今回のケースの話だけすると
「特別交付税に関する省令」という、特別交付税の交付に関するルールでは
後ろに附則とかいうのが大量についており
ここで様々な”調整”が行われるのです。
「こういうことやってたら増やしたるわ/減らしたるわ」って感じにね。
交付額のコントロールですね。
(基本的には時限的なもの)
つまり、そういうことです。
国はこの仕組みを利用して、気に食わん行動をとっている泉佐野市への
特別交付税を減額するため、
「そういうことしてるやつは減額な」っていう附則を追加し
減額を行ったのです。
正確な数値は分かりませんが、減額幅は5億円くらいでしょうか。
「この減額はおかしいやろ!」
って言ったのが次の…記事冒頭に紹介した訴訟で
来月に結論が出ます。
流石に500億…いや支出もあるだろうから桁一つ少なくなるかもしれんけど…
いずれにしてもそっちのルートは無理があるというか、
リスクが高すぎると思ったのかなぁ。
ま、そうだよね。
~(多分)つづく~
