愛する総務省の文書が少し政界を賑わせていますね。
公開された文書を読んでみようと思いましたが、長すぎて止めました。
さて…私はT議員またはK議員、あるいは彼らの所属する政党の支持者では
ありませんが、とりあえず仕事柄総務省の顔が一部見えているので、
普段から疑問に思っていることを書き留めたいと思います。
地方交付税というものは、地方の財源均衡及び財源保障を目的とする制度で、
一旦国が吸い上げた税金を一定の法則に基づいて地方にばらまくものです。
ところが比較的制度がガバガバなのか昔から国の都合のいいように変形され、
昔でいうと「聖域なき改革」とかいう美名の下に、特に理由もなく地方の財源を
奪われるということもありました。
2010年くらいからはマシになりつつあったものですが、また雲行きが
怪しくなってきました。
国のお金事情がよろしくないんでしょうね。
というわけで、2021年度以降のおかしな点を列挙していきましょう。
ちなみに、個人的には何となく「総務省って国の中であんまりうまくいってなくて
色々苦労してんじゃないかな」と思っているので、本気の批判というより、
「でもそれっておかしいよね」という話にとどまります。
①臨時財政対策債償還基金費
臨財債は「本当はこれくらいお金あげないといけないけど国に金ないから貸す」
という制度ですが、臨財債償還基金費は「将来の臨財債償還分をあらかじめ渡す」
という、制度を抜本から否定するような意味不明な措置です
(「地方交付税の本質について」という記事で紹介したので内容は省略)。
恐らく何らかの事故で総務省の中でお金が浮いてしまい、ばらまくことに
なったのでしょう。
②令和3年度追加交付後の予算額
「令和4年度の地方財政の見通し・留意事項等について」によれば、令和3年度の
普通交付税は183,339億円、特別交付税は10,746億円となっているが、この内訳の
割合を計算すると普通が94.46..%となってしまう。
地方交付税法第6条の2があるため例年はほぼ94%に調整されていますが、これは違法には
ならないんでしょうか。
法文が百分の九十四としかかいてないから、四捨五入で94や!ってことなんですかね。
規則とか附則とか細かい部分に規定があるのかしら?
③令和4年度普通交付税当初算定
どこの自治体でも起きている現象かは調べられませんが、私が勤めている市で
「臨財債振替前の基準財政需要額」(つまり、「この自治体これくらいお金
使うでしょ」という金額)が前年度比で減るという、極めて珍しい現象が発生しました。
この額は、年々福祉関係の費用がオートで上がっていくことを考えると、理論的に
説明することは極めて困難です。
調べてみるとH18-H19ぶりで、その時は根拠不明な減額が行われ、普通交付税がほとんど
なくなってしまうという状況でした。
それに比べるとR4は普通交付税は減らず、臨財債との合計額が大きく減る程度であり、
また理論上説明が全くつかないとしても、R3に危機的状況にあった地方を救うために
爆上げした普通交付税+臨財債があって理論が破綻したのかと思うと、そこを地方の人間が
つっつくのは無粋か…とも思います。
④令和4年度追加交付
追加交付分を使って県から「何かやるように」と電話を受けたが、そもそも交付税は
一般財源であってそんなことを言われる筋合いはない、ということは「地方交付~」の
記事で説明したとおりですが、さらにその後、「出産子育て応援交付金の地方負担分
(R5.9分まで)は増額交付で対応」(「令和4年度の地方財政の見通し・留意事項等
について」より)、「デジタル田園都市国家構想交付金を活用して実施する事業の
地方負担分は地方交付税の増額交付等で対応」(内閣府デジ田QA資料より)と
国自身がR5以降の事業費に充てることを想定していると言ってしまっています。
この心変わり(?)もさることながら、繰り返しになってしまいますが、交付税は
一般財源であり、「これに使え」ということは本来筋違いなのです。
出産子育て応援交付金事業は国がいきなり始めたのに地方負担があるという素敵な
制度ですが、恐らく批判が大きかったんでしょうね。
こういったことは、地方交付税法第3条第2項(…使途を制限してはならない)の
趣旨に反すると思うのですが…。
⑤令和5年度地方財政計画における普通交付税 ⑴全体
令和5年度当初予算について、総務省は「しっかり財源確保したぜ」とアピールし、
地方交付税予算を微増とした一方、「地方の財政を健全化する」という理由で
臨財債の予算を減らし、これらの合計は微減となっています。つまり、基本的には
「本来交付すべき額を減らす」ということです。
消費税などが上がると見込んでいるようなので交付税が減となることは理論上
ありえなくはないですが、「健全化のために臨財債減らす」ってどういう理屈なん
でしょうか。
借金だし健全だとは思わないけど、制度趣旨からしたら後年度の基準財政需要額に
カウントされるわけですから、トータルでは財政を圧迫しないはずなんですよ、
あくまで理論上ですが。
むしろ地方からしたら総額減らされる方が健全な財政運営を阻害されることになると
思いますが…。
⑥⑵包括算定経費(と令和4年度の話)
国は令和4年4月26日付で、『コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」』
において、「学校の冷暖房費等について、今後の状況等も勘案しつつ、地方交付税等により
必要な支援の取組を進める」とぶちあげたが、令和4年度は結局何もしませんでした。
「今後の状況等も勘案して」やめたんですかね。4月以降にとんでもなく燃料費調整
単価(電気代に影響するもの)が上がってガチでやばいことになってたんですけども。
そしてそれを受けてなのか令和5年度予算ではその辺の電気代用ってことで
包括算定経費に+700億円、しっかり配慮してるよって感じで発表されています。
しかし700億というと、交付税全体からしたら1%未満であり、自治体によっては話に
ならないような額しかこないような規模です。
⑦⑶地方デジタル社会推進費
これは少し話題になっていますが、令和5年度はマイナンバーカードの申請率だか交付率に
より、この需要額の項目の1つである「地方デジタル社会推進費」で交付額に差をつける旨
発表されています。
一応理屈としては「マイナンバーカードが普及してればデジタル的なこと色々やれるし、
その分お金かかるよね」というように立てられますが、どう見ても国が交付税で地方を誘導
しようとしているので、従来の交付税の論理からすると論外ともいえるやり方です。
流石にこの点は総務省も気まずかったのか、ことあるごとに「全自治体について増額する」
ということをアピールしています。(上位1/3の自治体は+αもらえる)
そもそも全自治体増額の理屈が不明ですし、どこかを優遇するということは結局他を相対的に
減らすということだし、また先に述べたように実質の交付税は減らされているし、
そもそも普通交付税のあり方からして、適当にどっかを減らしてしまえば整合させることが
できてしまうので、実際は全く無意味な弁明なのです。
しかし、地方の財政部局担当がこの欺瞞に気づかないわけがないので、弁明していて
虚しくならないのか…と思いますね。
どうしても、どう考えても、どうにもならずに払わなければならない光熱費が700億増なのに、
こんなのに500億増とかしてしまうのが我が国の現状。
つまり地方が払わなければならないものは最低限(?)言い訳できるようにちょっとつけて…
地方を誘導するために国の施策に反応したやつにお金あげたい…こっちを優先しよう。
そういう思惑を交付税に乗せてしまっているということですね。
国の文書というかやっていることについて懐疑的になっている国民は近年多いと思いますが、
他方で、そうは言ってもある程度はちゃんとしてるでしょ、という思いもあると思います。
しかし私が普段見ている景色からすると、欺瞞しかない。
つまりくだんの公文書とやらがどれだけデタラメでも驚きはないな、と思ってしまいます。