石原慎太郎の「酒は飲むべし乱れるべし」か | 山本祥一朗の酒情報

山本祥一朗の酒情報

山本祥一朗の酒情報

以前にこのWebで東宝で撮影中の石原慎太郎のことを書いたが、先頃に出した拙著『酒つながり』(社会評論社)では野坂昭如のことを書いた欄で昔に出した『作家と酒』のことに触れ、そこでモデルにした19人の作家のうちで今も健在なのは石原慎太郎だけ、ということを書いた。 その石原が月刊誌「正論」7月号に「国民に告ぐ――聞け!暴走老人の遺言を」と題して勇ましいことを書いている。そこでは都政から国政へ再度出ることを決めたのは、90歳になる戦争未亡人のうた「かくまでも醜き国になりたれば、捧げし人のただに惜しまる」に深い共感を覚えたからだ、といっている。 さらに靖国神社のことや尖閣諸島のことなどにも触れているが、今年で81歳にしては気が若い。昔にいろんな意味で書いた『作家と酒』では、石原慎太郎を「酔の男の酔狂のすすめ」と題している。 文壇へ出て間もない頃に三島由紀夫が、「石原君は滑っている感じだなあ」と評している。この「滑っている」というのは言い得て妙な言葉で、時代のヒーロー的なデビューやその後の執筆ぶりは確かに「滑って」いた。 その頃の石原は「この世で一番になりたい職業は何か?」と訊かれたら、「闘牛士だ」と答えていた。それは男らしく、キザで美しい男は他にない、ということでもあった。 今、「老境」と自称する石原にはとても想像できない若さゆえの発言である。 さらにその頃、「酔い」から遠ざかろうとする実存主義だった友人が自殺したことを挙げて、「酒を飲めない奴」「酔から遠ざかろうとする人間は信用できない」ともいっている。「酒は飲むべし、乱れるべし」とよく言っていた石原慎太郎である。この人のことなどを詳しく書いた『作家と酒』は久しぶり再版してもいいかと思っている。 写真は太陽族ブームの頃に映画の監督をしていたもの。

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会 オフィシャルブログ