暮れに実家に帰省した時、普段入らない部屋に競馬の写真パネルが飾られていたのを見つけた。

父が買ったものだろうが、自分は初めて見た。

父は自分が高校生の時、40代の若さで急死したが、今まで見たことが無かった。

 

今の家は自分が就職で実家を出た後に建て替えられた物で、その時に出てきたのを掛けたのだろう。

競馬ファンとなった今、父がわざわざパネルを買ったこのレースが何なのか、俄然興味が沸いた。

 

10番の馬が勝ったのだろう。

右回りのコースで、スタンドを埋め尽くす大観衆。

おそらくは有馬記念か?

 

10番の馬が勝った有馬記念で調べてみようと思ったが、パネルの裏に年月日やレース名が書いてあるかもしれないので降ろしてみた。

正解は長押(なげし。鴨居の上にあるハンガーなどを吊るせる所)に隠れたパネル正面下部にあった。

 

「第20回 有馬記念」

さっそく調べてみる。

1975(昭和50)年12月14日(この頃は暮れの施行ではなかったのか)、勝ち馬は馬番10番、7番人気のイシノアラシ。

レースの成績表を見ていて、父がパネルを買った理由が分かった。

 

自分が競馬を始めた頃、帰省中の実家で競馬新聞を広げていたら、覗き込んだ母が「大崎って、まだ乗っているのか」と驚いていた。

なぜ競馬に興味が無さそうな母が大崎昭一騎手を知っているんだ?

「亡くなったお父ちゃんが大崎のファンだった」という。

大崎昭一は、自分が競馬を始めるきっかけになったスズマッハの主戦騎手でもあり、不思議な縁を感じたものだ。

 

話は戻って、第20回・有馬記念である。

このレースに1番人気のフジノパーシアに騎乗していたのが大崎昭一騎手である。

好きな騎手が有馬記念で1番人気馬騎乗となれば、父はフジノパーシアから馬券を買い、大崎・フジノパーシア2着で枠連2060円を獲ったのだろう。

 

このレースの4年後、父は亡くなった。

父が最後に見たであろう有馬記念は第24回で、優勝馬はグリーングラス。

その鞍上は大崎昭一だった。