前回紹介した吉川良氏の著作4冊はすべてハードカバー。
氏の本はまだあり、今回紹介するのは文庫本である。
「人生をくれた名馬たち」
著者:吉川良
発行元:(株)毎日コミュニケーションズ
発行日:2003年9月25日
17編、17頭が載っている。
一見、名馬物のようだが、内容は著者自身の体験から成る競馬エッセイ。
著者は牧場関係者にも知り合いが多く、デビュー前の牧場時代からの思い出や思い入れも書かれている。
もちろん、自身の馬券勝負絡みの話も多い。
牧場関係者の、母ゴールドサッシュからの思い入れが語られるステイゴールド。
デビュー前の牧場時代、気弱で落ちこぼれだったというレッツゴーターキン。
日本一の牧場・社台ファームの総帥である吉田善哉の、なかなか勝てないダービーへの思いと、初のダービー制覇をもたらしたダイナガリバー。
皆が忘れられない馬として、引退から12年後に振り返るオグリキャップ。
G1を最低人気で勝ったダイタクヤマトの天皇賞。
メジロマックイーンの世紀の降着で、繰り上がりで天皇賞馬となったプレクラスニーの生産者は、表彰台に立っているのが辛かったという。
「競馬に中央も地方も無い!」と訴えていると感じたホクトベガ。
「シービークロスを男にする会」と、父・シービークロスを男にしたタマモクロス。
騎手の起用をめぐるオーナーと調教師の確執が転厩騒動にまでなったシリウスシンボリ。
普通の名馬本には大昔の、それこそ戦前の馬から載っているものもある。
この本は著者自身がリアルタイムで観て感じてきた、ファン目線の名馬本だ。
載っている17頭は自分もリアルタイムで観てきた馬ばかりなので、自身の思い出とともに楽しく読めた。