皆さんの街にもありませんか? 

 

よくある、これといった売りのない街で行うマラソン大会。 

そう、歴史だけは無駄にダラダラと長いけれど、地域住民としては全く盛り上がっていない「あのイベント」です。

 

地域の誇りや活性化という名目を掲げながら、その裏側で起きているのは「手作りの市民イベント」という美辞麗句を使った、専門職やボランティアに対するあまりにも惨酷な善意の搾取です。

 

以前、私も一般ボランティアとして参加したことがありますが、現場で一緒に活動していた医療スタッフたちから話を聞くうちに、行政と大会運営の歪んだ実態が見えてきました。

 

現場で最も驚いたのは、国家資格を持つプロの医療従事者たちに対する扱いの酷さです。 

 

医療救護として呼ばれているはずなのに、専門職への敬意などは微塵もなく、運営側から医療とは無関係な雑用まで平気で押し付けられていました。

 

 

休日出勤手当がしっかりと支給される市職員や、顔を売るために邪魔をしに来るだけの政治家。

そして「地域貢献している自分」に酔う一部の裕福な高齢市民。

彼らを横目に、最前線で身体のケアを行う専門職には交通費すら出ません。 

この異常な格差と搾取構造に耐えかね、これまで自腹で交通費を補填してまで協力していた優良な鍼灸マッサージ協会は、ついに現場から撤退してしまったといいます。

 

 

 

 

「無料」が招く質の劣化と、ランナーへの危険

 

これまで現場を支えてきた熟練の職能団体も、最初から拒絶していたわけではありません。

長年にわたり、交通費すら支給されない過酷な条件のもと、団体側が自前で経費を補填してまで「地域のランナーのために」と協力を続けてきました。

 

しかし、行政や大会側から届くのは感謝や敬意ではなく、「タダでやってくれて当然」という慣れと、医療とは無関係な雑務の押し付けでした。どれだけ真摯に向き合っても専門技術が不当に扱われ続ける現実に、団体は苦渋の決断として撤退を選んだのです。

 

その穴を埋めようと参加した経験の浅い団体も、単なる「無料のマッサージ要員」として消費される現場の厳しさに直面し、短期間で次々と離脱していきました。

 

その結果、現在の「医療・ケア枠」に残ったのは、自店の宣伝や見込み客の集客を目的としたチェーン系の店舗や、本来の医療救護の知見に乏しいスタッフたちです。

 

さらに懸念されるのは、医師や鍼灸師・柔道整復師といった国家資格を持たない民間療法や整体の事業者が、十分な区分けもないまま「救護ブース」と同列に配置されている点です。

 

マラソン直後の身体には、急性外傷や重度の脱水、循環器系のトラブルなど、適切な見極め(鑑別)を要するリスクが潜んでいます。

医療としての法的責任や専門知識を持たない施術者が安易に疲労部へ触れることは、万が一の事態が起きた際の安全管理という観点から、あまりにも無防備と言わざるを得ません。

「人数さえ揃えば誰でもいい」という主催者側の認識の浅さは、参加するランナーの身体を危険に晒す構造そのものです。

 

 

声を上げ、搾取の連鎖を断ち切る

地方政治家たちも、ただ顔を出して自己満足に浸る暇があるなら、この「専門技術の不当な買い叩きと安全管理の崩壊」を正す行動をとるべきです。

地域の安全を守る仕組みを作ることこそが、本当の意味での票に繋がる活動ではないでしょうか。

 

ランナーの皆さんは、ゴール後に自分に触れているスタッフが「本物のプロ」なのか「宣伝目的の無資格者」なのか、一度立ち止まって考えてみてください。 

そして次世代の子どもたちを「タダで使えるコマ」にしないためにも、専門職の団体は不当なブラックボランティアを毅然と拒否していく時期に来ています。