ペーテル・ファン・アンローイ(Peter van Anrooy)オランダの作曲家 | 妄想印象派 自作のイラストや漫画、アニメ、音楽など

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Peter van Anrooy

画像はWikipediaより拝借

 

ペーテル・ファン・アンローイ

(Peter van Anrooy, Anrooij)1879-1954

 

1879年、ザルトボメル(Zaltbommel)生まれ

ユトレヒト音楽院(Muziekschool te Utrecht)で学んだあと、

ドレスデン、モスクワへ留学。

 

フローニンゲン管弦楽協会(Groninger Orkest Vereeniging)

アルンヘム(アーネム)管弦楽協会(現:ヘルデル管弦楽団)

Arnhemsche Orkest Vereeniging(Het Gelders Orkest)

レズィデンツィ(レジデンツィ)管弦楽団(Het Residentie Orkest)

等の指揮者を歴任。

 

1954年、スフラーフェンハーヘ('s-Gravenhage)歿

 

【代表作】

ピート・ハイン狂詩曲(Piet Hein Rhapsodie voor orkest)1901(1900?)

 

Peter van Anrooy - Wikipedia, Nederlands

 

 

 

たまたま最近知った作曲家。

何と、既に4年も前にブログで紹介している人がいますけど、

やはり無名の作曲家です。

 

オランダのロマン派作曲家は今まで何人も紹介していますけど、

個性的と言える作曲家があまりいません。

ドイツロマン派等の亜流が多いという印象。

なので、国際的に有名な作曲家がいません。

 

個人的に、亜流を脱却する試みをしているなと感じ、

好感が持てる作曲家は、オランダ国民楽派の祖と思われる

ベルナルト・ズウェールス(Bernard Zweers)と、

オランダに因んだ表題の交響曲を幾つも書いた

コルネリス・ドッペル(Cornelis Dopper)と、

吹奏楽のための『オランダ狂詩曲』(1905)を書いた

フランス・ヨハン・スフヴァインスベルフ(シュヴァインスベルク)

(Frans Johan Schweinsberg)

辺りですね。

 

で、今回紹介する作曲家の曲を聴いて、

その出来栄えに「これは無名なのは勿体無いな」と思ったわけです。

私にとっての「これだ」と思う、

オランダの数少ない作曲家の一人に入りました。

 

 

 

ピート・ハイン狂詩曲(Piet Hein Rhapsodie)1901

生年からして、作曲されたのは、21か22歳位の頃です。

(Wikipediaによると、1900年作曲と書かれています。)

かなり若い年齢で書かれていますが、その割には、

構成力や管弦楽技術が申し分ありません。

 

陽気でおどけた明るい雰囲気の曲ですが、

“狂詩曲”という名に相応しく、

超絶的とも言える高い技巧性に溢れているので、

聴いていてとても心地よい。

 

中間辺りでは落ち着きますが、

魅力的なメロディであるため、全く退屈しません。

最後まで愉しんで聴ける曲だと思いました。

 

特徴としては、16~17世紀頃と思われる古風なメロディに、

後期ロマン派的管弦楽処理を施したという感じですが、

ピート・ハインという人物について調べてみた所、

16世紀から17世紀にかけて生きた、

『八十年戦争』に於けるネーデルラントの英雄だそうです。

フルネームは、

ピート・ピーテルスゾーン・ハイン(Piet Pieterszoon Hein)

だそうです。

 

『八十年戦争』というのは、16~17世紀に、

スペインによるネーデルラント(ベネルクス)支配に対して行われた叛乱で、

これを切っ掛けにオランダが誕生しました。

Piet Hein (zeevaarder) - Wikipedia, Nederlands

 

『八十年戦争』を題材にした作品には、

ベルギー国民楽派の祖と言われる

ペーテル・ブノワ(Peter Benoit)による

歌劇『ヘントの和約』(De Pacificatie van Gent)1876

http://www.youtube.com/watch?v=bZ1GwDm8n1U

があります。

 

古い時代の音楽、例えば、バロック音楽などを、後の時代、例えば、

ロマン派などの様式や管弦楽編成で作曲するという試みは

結構例があります。

有名所では、グリーグの

組曲『ホルベアの時代から』(Fra Holbergs Tid)や、

http://www.youtube.com/watch?v=OVKZgsQ8wnk

シェーンベルクによるバッハ作品

『前奏曲とフーガ』(Präludium und Fuge)等の編曲や、

http://www.youtube.com/watch?v=cwT91pHnlxA

レスピーギの『リュートのための古風な舞曲とアリア』

(Antiche danze ed arie per liuto)等があり、

http://www.youtube.com/watch?v=EFP4ozX3keU

無名所では、ダニエル・ステルネフェルト(Daniel Sternefeld)による、

『ブルゴーニュ女公マリーの宮廷での歌と舞曲』

(Zang en dans aan het hof van Maria van Bourgondië)や、

http://www.youtube.com/watch?v=FZi0nnJCzmQ

オランダの作曲家の中では比較的CDが数多く出ている上に、

隠れファンが多いという(?)、

ユリウス・レントヘン(Julius Röntgen)による

組曲『古きオランダ』(Suite “Oud-Nederland”)等があります。

要は、それらと同系列の作品だと思いますが、

往々にしてこういった試みは、模倣的要素が強いためなのか、

余り重要視されていない気がします。

 

しかし『ピート・ハイン狂詩曲』は、

一つの立派な作品であると言えると思います。

 

『ピート・ハイン狂詩曲』がYouTubeに出ています↓

http://www.youtube.com/watch?v=vo_DLPUAcvw

 

この曲はCD化されているのですが、

Tower Recordによると現在は廃盤だそうで。

Amazonでは、「一時的に在庫切れ」と出ているのですが、

ダメ元で注文しました。

(この場合、長く待たされた末に入手不可の通知が来る事が多い。)

 

アンローイと同時代を生きた、コルネリス・ドッペルの

交響曲第7番『ゾイデル海』(Symfonie nr. 7 “Zuiderzee”)1917

『ゴシック様式によるシャコンヌ』(Ciaconna Gotica)1920

とのカップリングです。

 

 

演奏:オランダ放送交響楽団(Nederlands Radio Symfonie Orkest)

指揮:ケース・バケルス(Kees Bakels)

【NM Classics 92060】

 

音盤は他にも幾つか確認出来ましたが、あとはLPばかりのようで・・・。

演奏:レズィデンツィ管弦楽団(Residentie Orkest)

指揮:アンタル・ドラティ(Antal Dorati)

【Philips 411 960 SE】

Peter van Anrooij – Piet Hein Rhapsodie (vinyl EP) - Te koop

 

こちらは、ヘンドリック・アンドリーセン(Hendrik Andriessen)と、

ヨハン・ヴァーヘナール(ワーヘナール)(Johan Wagenaar)

とのカップリングLP。

演奏:レズィデンツィ管弦楽団(Residentie Orkest)

指揮:ヴィレム・ファン(ヴァン)・オッテルロー(Willem van Otterloo)

アンタル・ドラティ(Antal Dorati)

【Fontana 6530 044】

Peter van Anrooy - Piet Hein Rapsodie - Rate Your Music

 

 

 

【他の作品】

Wikipediaで紹介されている作品欄は余り充実しておらず、しかも、

ピート・ハイン狂詩曲以外で「これは」と思える作品が、

題名から察してありません。

 

実際に聴いてみないと分かりませんが、

単に「序曲」「ロマンス」等といった、

無味乾燥なタイトルばかりなのです。

 

良質な曲を色々書いている筈だろうとは思うのですが、

リヒャルト・シュトラウス唯一の弟子と言われる

ヘルマン・ビショフ(Hermann Bischoff)

の例があるので何とも言えません

(リヒャルト・シュトラウスに才能を高く評価されたものの、

寡作過ぎるためなのか?埋もれてしまった作曲家)。

 

 

 

【追記】2012/7/23

Tower Records では廃盤とされていた

唯一のピート・ハイン狂詩曲収録のCDが、

Amazonから届きました。

未だ手に入るかも知れませんよ!!

 

【追記】2016/2/3

肖像写真を追加。

ピート・ハイン狂詩曲の動画が削除されていたので、

新しい動画を貼りました。

 

【追記:2024/5/3】

CD画像を差し替え

 

Wikipediaのドイツ語版を見たところ、

作品一覧が出ているのですが、

殆ど10代の頃に書いたものばかりで、

ルーマニアのジョルジェ・エネスク、

スコットランドのヘイミッシュ・マッカン、

フィンランドのエルンスト・ミエルクばりの神童でした。

 

「ピート・ハイン狂詩曲」

が20歳そこそこで書かれていながら

完成度が高い理由が分かった気がします。

 

しかも、同曲の作曲年が1898年と出ています。

だとすれば、19歳頃の作品という。

(でも本文では1900年と出ているんですよね)

 

ピアノ連弾のための行進曲(1891)

Mars voor piano vierhandig

ピアノ四重奏曲(1896)

Pianokwartet

管弦楽のための前奏曲とスケルツォ(1896)

Introductie en Scherzo voor orkest

序曲 ヘ長調(1897)

Ouverture voor orkest in F

「ピート・ハイン狂詩曲」 - 「銀の艦隊」の管弦楽編曲(1898)

Piet Hein Rhapsodie, een bewerking voor orkest van De zilvervloot

付随音楽「冷たい心臓」 - ヴィルヘルム・ハウフのおとぎ話より

Das kalte Herz, toneelmuziek naar Wilhelm Hauff

ヴィオラとピアノのためのロマンス(1900)

Romance in e mineur voor altviool en piano

In het woud.

児童合唱と鍵盤伴奏のためのカンタータ「森の中」

作詞:アハータ・スネレン

In het woud. Cantate voor meerstemmig kinderkoor met klavier-begeleiding,

op een tekst van Agatha Snellen

 

最初の作曲は12歳くらいですか。

 

とはいうものの、

若い頃にしか作曲していなかったわけではなく、最後の作品は、

1937年に書かれたオランダの旋律による変奏曲だそうで。

(Wikipedia英語版より)

 

「ピート・ハイン狂詩曲」には、

オランダの古い歌「銀の艦隊」(De Zilvervloot)

が使われているそうです。

 

政治的に熱い性格も持っていたようで、

1937年、リッペ侯子ベルンハルトと

オランダ王室のユリアナ王女の結婚式の時、

ナチスドイツの党歌である、

「ホルスト・ヴェッセルの歌」(Horst-Wessel-Lied)

の演奏の指揮を拒絶するという骨のあるところがあったそうで。

 

ナチスの党歌の演奏って何故?ですが、

ベルンハルトがドイツ人だったことと、

当時はナチスがドイツの政権を握っていたからですかね?

 

ユリアナの母ヴィルヘルミナは、

ピート・ハインに怒ったそうですが、

当時はまだドイツ軍のポーランド侵攻もオランダ侵攻も無く、

ナチスが現在の様なイメージで見られていなかったからの様です。

 

後の1940年にドイツがオランダに侵攻し、

オランダ王室は国外に亡命することになったわけですが。