Ernst Mielck - Wikipedia Suomi
ミエルクについては、ここ で既に紹介しているので、
プロフィールについては省略します。
交響曲へ短調「おとぎ話交響曲」
Sinfonia "Satusinfonia"
f-molli, op.4(1896-1897)
ミエルクの残した唯一の交響曲。
フィンランド最初の本格的交響曲と言われ、
シベリウスに交響曲を書くきっかけを与えたとも言われている。
メロディラインからして劇的な描写が著しく、
まるで剣と魔法の冒険映画やRPGの世界観を描いたかのようである。
アナスン(アンデルセン)の童話「氷姫」(Jääprinsessa)
をイメージして書かれたという。
前回既に交響曲の紹介をしているので、今回は、
ONDINE版とSTERLING版の交響曲の演奏を聴き比べるというのをやります。
ONDINE版は登場して未だそんなに経過していないので、手に入りやすい。
が、STERLING版は登場が1999年と古いため、比較的手に入れにくい。
でも、最近タワーレコード新宿店に行ったら置いてあった。
今なら手に入れられるかも。
さて、演奏についてだが、全体的な演奏のバランスの良さは、
ONDINE版に軍配を上げたい。
強奏部分のトランペットが、STERLING版ではイマイチ迫力に欠ける。
「あともうちょっと!!」という感じで、ちょっと頼りなさげな印象。
逆にONDINE版のトランペットは、しっかりしている。
が、逆に弱奏部分は、STERLING版の方が細かく聴き取れる感じで、
ONDINE版では大雑把な印象である。
とにかく、両者の演奏を聴いた印象はかなり違ったものだった。
ピアノ小協奏曲ホ短調「フィンランド民謡による」
Konserttikappaleen pianolle ja orkesterille e-molli, op.9
"Suomalaisten kansanlaulujen pohjalta"(1898)
以前紹介した「ヴァイオリン小協奏曲」は、
如何にもその名の通り小規模の協奏曲だったが、
今回紹介する「ピアノ小協奏曲」は、ちゃんと平均的な「3楽章制」であり、
演奏時間も約30分程と、やはり平均的。
「小」と名付けるのは余り相応しくないと思う。
誤解を与える題名だ。
第2楽章にフィンランド民謡が用いられているので、
国民楽派の手法による作品である。
第1楽章(Allegro appassionato)は、
出だしからして如何にも民族的昔話を思わせるコテコテな雰囲気。
カレヴァラの中の一場面でも描いてるのか?という印象を私は受けた。
ピアノパートは適度に技巧的描写があり、中々聴かせてくれる。
8:00辺りの緊張感漂う描写は、
ドラゴンボールの悟空が闘いに苦戦している所のBGMに使えそう(?)。
第2楽章(Largo)は、
フィンランド民謡「2人の娘が行く」(Käy neitoa kaksi)が用いられている。
瞑想的な美しい旋律が印象的。
第3楽章(Allegro vivace)は、第2楽章と繋がっているのだが、
それまでとはうって変わって明るい曲となる。
でも、いささか古風な雰囲気。
バロック音楽というかドイツ古典派というか、
とにかく、悪く言えば「堅苦しい」感じ。
天才ミエルクの事だから、
もっと伸びやかな曲になっているだろうと思っていたので、
ちょっと意外に思った。
ミエルク「交響曲」「ピアノ小協奏曲」
演奏:トゥルクフィルハーモニー管弦楽団(Turun Filharmoninen Orkesteri)
ピアノ:リーサ・ポヒョラ(Liisa Pohjola)
指揮:ハンヌ・リントゥ(Hannu Lintu)
【CDS-1035-2】1999
【記事増補:2009.2.11】
(Käy neitoa kaksi)の日本語訳追加。
「ピアノ小協奏曲」第3楽章の記事増補。
【追記】
ミエルクの交響曲について。
NAXOSの音楽配信サイトでは
「おとぎ話」(Fairy Tale Symphony)と出ていますが、
『ONDINE版』や『STERLING版』のCDには、表題が出ていません。
表題が”通称”なのか”正式名称”なのか?ちょっと不明です。
『おとぎ話交響曲』を意味する『Satusinfonia』の記述は
ネット上に幾つか見受けられるのでそのまま出しますが、
『フィンランド交響曲』(Suomalainen sinfonia)の記述は稀なので、
削除します。
フィンランド初の交響曲は、
アクセル・ガブリエル・インゲリウス(Axel Gabriel Ingelius, 1822-1868)
によるもの(1847年)だそうですが、どんなものか聴いてみたいところ。
Axel Gabriel Ingelius - Wikipedia, Suomi
こちらによれば、内容は乏しいそうです↓
北欧音楽小史 第3 - NORDIC FOREST-北欧のクラシック音楽
【追記2:2019/5/4】
インゲリウスの交響曲の直後には、
フレドリク・パーシウス(Fredrik Pacius)が、
交響曲ニ短調(1850年)
Sinfonia d-molli
を書いているので、少なくとも私の知る限りでは、ミエルクの交響曲は、
フィンランド史上3番目の交響曲という事になりますが。
Fredrik Pacius - Wikipedia Suomi
ミエルクの肖像写真追加。
CD画像更新。