よいこのエセ童話
こっちの「えせどうわ」じゃないよ↓
えせどうわ行為で捕まって裁かれちゃった!!よいこはマネしないでねッ!!
こぐまのハウアス
HOURS the Little Bear !
24話:熊好きもいいけど・・・
ハウアスのパパが新聞を読んでいます。
ハウアスの住む世界の新聞は、
人間の世界の出来事も記事にしたりします。
その中の或る記事を見て、
パパがため息をついています。
パパ:ふうーッ!!
ハウアス:どうしたの、パパ?
パパ:人間の世界に住む熊が、
人里に近づいたせいで、
射殺されてしまったんだよ。
ハウアス:えっ、
何で?どうして殺されなきゃならなかったの?
パパ:大人の熊は人間よりも体が大きく腕力がある上に、
下手したら熊に出遭った人間が危害を蒙る危険性がある。
だから、人間の生命の安全を優先して、
射殺されてしまったわけだ。
ハウアス:麻酔銃で眠らせれば良かったのに。
パパ:どうしてそうしなかったのかはよく分からない。
熊に襲われて人間が亡くなった場合、
その人間を殺した熊の可能性が高いと見なされると、
制裁のつもりで射殺するといった事はあるようだ。
ハウアス:人間は自分勝手だよね。
パパ:自然破壊で熊の生活圏を狭めといて、
それで人里に近づいたからといって
射殺するのは勝手過ぎると言わざるを得ない。
人を殺した熊にしたって、
自分の生命が脅かされたと思ったからやったのかも知れないし。
ハウアス:ボクつくづくこう思うんだ。
「クマさん可愛い!!」
「クマさん大好き!!」
とか言ってる一方で、
こういったリアルな話になると
事情が変わって、
「危険で怖い」「射殺」とか言う。
自分勝手な都合で扱い方を変えるよね。
勿論、「クマさん大好き」とか言ってる人と
「危険だから射殺」と言ってる人は
全くの別人なんだろうけどね。
もし同じ人がそうやってたら、
かなり分裂してる人だよね。
パパ:身内が熊に殺された遺族にとっては、
熊は憎らしい存在なのかも知れない。
「熊さん可愛い!!」なんて、
死んでも思う事が出来ないだろうね。
その気持ちも凄く分かる。
でも、それを乗り越え、
上手く人間と熊が何とかやって行かなければならない。
どちらの存在も、
魔法で消せる訳ないからね。
ハウアス:その通りだね。
パパ:人間よりも力の弱い動物は、
人間次第でどうにでもなるという辛い立場に立っている。
でも、丁度人間と熊では、
立場が逆転してるわけだ。
かろうじて人間は「猟銃」という
「卑怯な」武器があるから優位に立ってるけど。
ハウアス:今一度立ち止まって、
その辺の事をよく考えて欲しいよね。
パパ:ところで、
「テディベア」って知ってるかい?
ハウアス:有名だよね。
パパ:その由来について説明しよう。
1902年の秋にセオドア・ルーズベルト大統領が
趣味の熊狩りに出かけたとき、
熊が一頭も仕留められなかった。
そこで、大統領の面目を保つ為に、
同行者が前もって用意された年老いた雌熊・・・、
一説によれば傷付いた小熊とも言われているが、
とにかく代わりにそれを撃ってはどうですか?
と提案したんだけど、大統領は、
繋がれた熊を撃つというなどという卑怯な真似は出来ない、
とそれを拒否したんだ。
その事が、同行した新聞記者によって新聞に掲載され、
大統領の通称である「テディ」と名付けた
熊のぬいぐるみを或る店が販売し、
それが人気になったということだ。
逸話は他にも幾つかあるが、これが有名らしい。
ハウアス:これって、美談なの?
パパ:そうらしいけど。
ハウアス:何かおかしくない?
パパ:我々熊の立場から考えたら、
「えっ?」と思うよな。
ハウアス:まず、熊狩りなんかするなよ!!!!!
それから、
もし用意した熊を提案通りに射殺したら、
どうなってたんだろうね?
凄い血も涙も無い
卑怯者の鬼畜みたいに見られたのかな?
それとも、「普通」って見られて
何も起こらなかったのかな?
誰もツッコミ入れなかったの?
パパ:当時のアメリカ人の感覚はどうだったかよく分からないが、
少なくとも、動物に対して
愛護する気持ちは余り無かったんじゃないかな?
だから、特別誰も変だとは思わなかったかも知れない。
白人の有色人種に対する差別意識が今よりも強く、
弱肉強食、侵略戦争が当たり前の時代だったしね。
ハウアス:その大統領って、
「いいことやった」とか思ってたのかな?
要はさ、罪の無い生き物を殺害するにしても、
卑怯な殺害の仕方が出来ないって言ってるだけじゃん。
卑怯もへったくれも無いと思うんだけど。
娯楽のために生き物を殺そうとしてたんだから、
良いか悪いかも無くて、完全に「悪」でしょ。
パパ:セオドア・ルーズベルトは、後に、
選挙戦にもテディベアをマスコットとして利用したようだ。
ハウアス:熊狩りした上に、
熊の縫いぐるみを選挙にまで利用しやがって!!
どんだけ熊を利用してんだよ!!
パパ:まあまあ、ハウッ、落ち着いて!!
そういった事を今更どうこう言っても始まらないよ。
ハウアス:逆に狩られる立場に立たなければ、
事の本質が理解出来ないのかも知れないね。
その立場に立った時点で、
「はっ!!狩猟自体が間違いだった!!」
と、やっと気付くんだろうね。
保護者の方へ
狩猟に出掛けた先で誤って息子を射殺してしまった親御さんに、
この似非童話を捧げます。
母と子で見る関連童話
クマクマ、クマがいっぱい!
文:マラ・バーグマン
画:ヘレン・クレイグ
訳:山口文生
評論社1998-5
きょうは みんなで クマがりだ
文:マイケル・ローゼン
画:ヘレン・オクセンバリー
訳:山口文生
評論社1997-10
【画像・記事修正:2008.12.20】
【画像追加・記事加筆修正:2008.12.22】
「きょうは みんなで クマがりだ」追加
【記事修正:2008.12.23】
「ワシが『えせどうわ』の人じゃ!!」削除
【追記:2023/12/1】
作品画像を新しくスキャンし直して上げ直し。
その他画像2枚も上げ直し。
文章を読みやすい様に整理。
人肉の味を憶えた熊は、
次もまた人を襲う危険性があるため、
駆除は必須の様ですね。
仕方がないのかなぁ…。
【前作】
こぐまのハウアス 23話 ハリネズミの服とズボン