それは突然やってきた!ストレスのリスク「一過性全健忘」 | 桜井妙の「新ストレスと怒りの調理法」

桜井妙の「新ストレスと怒りの調理法」

★職業:講師 ★専門:ストレスマネジメント アンガーマネジメント コミュニケーション危機管理 ★特徴:「あたま・こころ・からだ」をととのえる ★㈱コミュニケーション・デザイン結 代表

その日は疲れていました。

早寝したのに

疲れが残っていました。

 

ただ、それはよくあることで

大して気にも留めていませんでした。

 

夜に大事な講演会があり

主催者は公的機関で大きな団体でした。

 

一泊の荷物や仕事の道具を携え

普通に家を出て電車に乗りました。

 

車窓から見える風景は

すっかり冬景色でした。

 

電車の揺れは心地よく

知らないうちにウトウトし

眠っていました。

 

それから先に

自分に起きる出来頃なんて

露ほども想像せず・・・。

ここはどこ?

 

翌朝5時頃

ホテルの部屋で目が覚めました。

 

ぼんやりと白い壁と天井が見えました。

 

『ここはどこ?』

『あっ、ホテルの部屋・・・そうだった。

仕事で泊まりだった…』

 

トイレに行こうと身体を起こした瞬間

ぎょっとして

全ての時間が止まりました。

 

主催者が取ってくれた部屋はツイン。

連れはいないので誰も寝ていませんが

 

隣のベッドカバーの上に

豪華な花束がおいてありました、

 

「・・・・・・・・・・・・え?」

「・・・・・・・・・・・・え?」

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

どれくらいの時間

だったか分かりませんが

高速で脳の中をグーグル検索しました。

 

「花束 講演会 etc 」

様々なワードで脳の検索をかけます。

 

講演会に来たことは覚えているのに

何も検索されてきません。

 

Q「なぜ花束があるのか?」

A「講演会の後に貰ったのではないだろうか?」

 

Q「誰が講演会をして?」

A「私の部屋だから私がやった・・・よね」

 

Q「昨夜は講演会はどんな話をした?」

A「ええと・・・ええと・・・思い出せない。

 そもそも私講演会やってないよね・・・まだ・・・」

 

Q「ではなぜ花束が?」

A「花束を貰った記憶はない・・・」

 

Q「ではなぜ花束が?」

A「あるってことは・・・実施したの?え?」

 

こんな感じで

自問自答しても「・・・・」「????」が

頭から溢れてきて

答えが全く見つからず

混乱してどうしていいか分かりませんでした。

 

大変なことが起きてしまった

 

そして結論を出しました。

 

『私は記憶を失っている。

いつからだろう?』

 

会場について準備をして

打ち合わせをして控室にいる記憶。

 

ここまでは思い出せます。

開始まで少し時間があったので

椅子に座って・・・それから・・・

 

何度思い出しても

ここで記憶の糸が切れていました。

 

『私の身体に何かが起きたわけで

記憶はないということは脳疾患。

ということは、脳の血管が詰まったのだろうか?

手足のしびれも麻痺もない。

話せるかな「あいうえお」話せるから

言語障害がないから脳梗塞じゃない』

 

 

混乱ていても

対処しなければいけないので

仮説を立てます。

 

誰かに聞きたくても朝の5時

そこでパソコンを立ち上げて

病気の検索と関係者への連絡をメールで送りました。

 

危機管理はすぐ行動

 

リスクマネジメント危機管理の講師ですから

事態を受け入れたら即対処するべきなので

ここからは凄いスピードで一気に行動しました。

 

記憶はないなんて

もし実施していても普通に講演会が出来ていない。

 

Q「今私にできることは何?」

A「とにかく謝罪だけしよう!早すぎるからメール送信」

 

Q「次に出来ることは何?}

A「医療知識と専門家のヘルプが必要→Drにメール送信」

 

Q「他に出来ることは何?」

A「脳疾患だったら困るので家族に連絡→家族にメール送信」

 

Q「この時間に出来ることは何?」

A「自分でネットで調べる→脳梗塞 記憶喪失で検索」

 

パソコンやメールがある時代で助かりました。

もしそういうものが無ければ

動揺するだけで何もできず

部屋の中をウロウロ歩きまわるしかありません。

 

今できることは全てやったので

腹をくくってお風呂に入り身支度することにしました。

 

食欲はありませんが、何か食べよう。

逞しい自分に驚きつつ、身体は冷静に

事態に備えるべき勝手に動きました。

 

え?講演会も懇親会も実施した!?

 

お世話になっているDrと

友人の看護師さんと連絡が取れ

予測やアドバイスが貰い

どの病院に行くべきかも教えて貰いました。

 

脳梗塞ではないみたい・・・

 

万一脳梗塞であっても

症状はないからまずは安心。

 

主催者の責任者の方と

8時には会って話ができました。

 

桜井さん記憶がないって本当ですか?

 

でも昨夜は普通に2時間講演会やって

その後の懇親会にも出てました。

食事もして、参加者からの

質疑応答にも答えていました。

 

 

耳を疑いたくなるような現実です。

 

私の知らない私は講演会を普通にやり

花束を貰い、懇親会まで出て

食事もしちゃって質問にテキパキ答えた・・・・

 

わ・・・私が???

絶句です。

 

「私はどこか変じゃなかったですか?」

「そう言われると同じことを何度も言っていました」

「それって変ですよね?」

「でも、そういうセミナーにわざとしたのかと思いました」

「パワポは?」

「普通にパワポを説明していました」

「ワークは?」

「はい、ワークもやってました」

「食事は?」

「そう言えばあまり食べていなかったです」

「質疑応答にホントに答えたのですか?}

「はい答えていました」

「時間どうりに終われましたか?」

「時間内に終わりそうもないので声かけたら

そこからスピードアップしてパワポ説明してました。」

「変だと思わなかったんですか?」

「確かに『今日は無意識がセミナーやってます。』って

自分で言ってましたけど・・・。」

「はぁ?無意識がセミナーやってるって??」

「それから 私は今日は大丈夫かって

何度も私に確認をしていました。」

「・・・・・・・・・・・」

「あの昨日の記憶ないって本当ですか?」

「・・・・・はい・・・・」

「えーーー!!!!!」

主催者の方も驚いていました。

 

私の知らないもう一人の私が

知らない間に仕事をしている。

 

何だか怖くなりました。 

TGA一過性全健忘

 

札幌の脳神経外科の専門病院に行き

MRI検査を受けました。

 

結果は、TGA一過性全健忘という

聴いたこともない病名を告げられました。

 

TGA一過性全健忘

・新しい記憶を維持する能力と、

発症後に起こった出来事を思い出す能力が

突然かつ一時的に失われる。

 

・患者は不安で用心深くなり

しばしば同じ質問や言い回しを繰り返す。

 

・時間や場所について混乱がみられる。

 

・周りの人が誰であるかについて混乱することはない。

 

・記憶障害の持続時間は通常は1~8時間。

30分の場合もあれば、まれですが最長で24時間続く。

 

・原因不明。兆候もなく突然発症する。

 

・近似記憶と長期記憶はあり運転も可能。

1分前の短期記憶が形成されない。

 

・24時間後には元に戻り再発はない。

 

・「今日は何日?」 

「(自分は)どうしてここにいるの?」

 「記憶がない」 などとひっきりなしに言い始める。 

 

・答えを聞いて一度は納得するが、

それを記憶に とどめることができず次々に忘れて、

さも今初めて 自分が気付いたかのように、

同じ質問や言葉を 繰り返す。

 

・意識障害はなく健忘以外の機能障害はないので

周囲は疾病に気が付かないこともある。

 

10万人に5人の割合で発症するので

専門病院でも2年に1人患者が来るぐらい少ない症例。

 

という説明を受けました。

 

ネットで調べると

物理的ストレスや

心理的ストレスと書いてありました。

 

確かに、発症前の一週間

カウンセリングで重い相談があり

その相談のことで心配で心を痛めていました。

 

そして、今年はとても忙しく

研修につぐ研修で移動も多く

身体はかなり疲労していました。

 

ストレスを消化できないと身体はSOSを出す

 

記憶がないのは今回初めてですが

うまく思い出せないことは過去に一度ありました。

 

32年前人生で最大の辛い出来事があり

嵐のような日々を過ごしましたが

最近その渦中のことを思い出そうとすると

 

一番辛い部分の記憶は

白黒の写真のようになっていて

欠落しています。

 

見たくなかったことは

脳は記憶を消してしまうか

あるいは今回のように

記憶しないようにするのかもしれません。

 

周囲の友人にも記憶喪失した経験があるかと聞くと

似たケースはありました。

 

・運動部の特訓が辛すぎて意識不明になったが

練習中の記憶がなくなってしまった(女性)

 

・恋人に裏切られたことがショックで

最後の別れの話し合いの記憶が思い出せない(男性)

 

ストレスはディストレスな状態になると

癌や生活習慣病の原因になります。

 

これは誰もが知っているリスクです。

しかし、今回のような記憶障害が起こることは

誰も知りません。

 

今日は「抗NMDA受容体脳炎」に苦しんだ

2人の女性の映画が公開されます。

「彼女が目覚めるその日まで」と

「8年超しの花嫁」です。

 

共に実話ですが

最近まで病名が分からなかった

謎の病気です。

 

災い転じて福となす

抗NMDA受容体脳炎から回復した女性

スザンナ・キャラバンさんは新聞記者でした。

 

自分の体験を活かすべく

自らがプロヂューサーになり

「彼女が目覚めるその日まで」の映画を

自ら作ったのです。

 

このことに背中を押されて

この病気「一過性全健忘」を

知ってもらうために。

ブログでカミングアウトすることにしました。

 

完璧主義の私にとって

記憶できないまま実施したセミナーは

とてもショックな出来事でした。

 

でも

全てのことには意味がある・・・。

 

そう考えると

ストレスマネジメントや

リスクマネジメントの講師として

ケーススタディとして役に立つ体験です。

 

今回の体験を仕事に活かして

先日講師を務めた救急のDr達の研修会の

ランチセミナーで報告させて頂きました。

 

実話なので

ストレスマネジメントの重要性を

プロのDrたちも熱心に耳を傾けてくださり

ディストレス解消について聞いてくださいました。

 

**************

 

私を診た脳外科の先生が

 

「この症状の患者さんで

セミナーみたいな複雑な仕事をこなし

懇親会や質疑応答をこなしたケースは

聴いたことがない。

君のプロ意識は相当だね。」

 

と笑っていました。

嬉しい褒め言葉です。

 

プロはどんなときも仕事をこなす。

無意識状態であっても

仕事をこなし結果を出す。

 

今年も後2週間

忙しい日が続くと思いますが

ストレスはためないようにしてください。

 

今日からやっと休日です。

たまりにたまった事務と家事を

これから一気にこなします。

 

 

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皆様ありがとうございます。

2017.12.31(SUN)
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