先週、浜離宮朝日ホールへ川口成彦さんのフォルテピアノを聴きに行きました。

1843年製のプレイエル。貴重な古楽器を近くで見られるだけでも来て良かったなと思えます。


「愛の歌」をテーマにしたプログラムでした。演奏会が11月22日だったので、いい夫婦の日を意識したのかな?と密かに思っていましたが、ご本人は何も触れずに。

↑演奏だけでなく、プログラムノートもとても楽しめました。少し早めに着いて読んでおき、この川口さんの考察を踏まえておくと、作曲家に思いを馳せながら演奏を聴くことができます。


1曲目から、私の大好きな「デュエット」(メンデルスゾーン)でしたが、冒頭の数小節で涙がブワッと来ました。今まで聴いたことのある「デュエット」の演奏の中でも、かなりゆっくりでしたが、一音一音を噛み締めるような、愛情深い歌い方が心に強く響き、とても好きな歌い方だなぁと思いました。


リストの「愛の夢 第3番」も、今ちょうどレッスンで習っているので、聴けてすごく良かったです。細かい溜めやテンポの揺らしなど、あんなふうに弾けたら素敵なのになぁ、、と自分が弾く「愛の夢」とあまりに違いすぎましたが、とにかく歌い方が重要だなと再確認できました。

自分がどう歌いたいのか。…今はまだ、指が動くようになるまで練習を続けている段階ですが、少しずつ自分なりに歌い上げられるようになる過程を想像し、楽しみながら練習していきたいと、改めて思いました。


フォルテピアノの音色は、優しいオルゴールのような、おとぎ話の世界に誘われているような、あるいは過去を懐かしむような気持ちになったり、時には真っ直ぐに想いを強く伝えるような表情も感じられ、様々なかたちの愛を歌うというテーマにぴったりでした。

川口さんの演奏を聴いていると、作曲家の人生そのものを背景に感じられるような魅力があり、聴いている自分にも重ね合わせたり、また定期的に聴きに行きたいと思いました。



この日はお天気も良く、ランチタイムコンサートだったので、帰り道は一番暖かい時間帯の中、柔らかい陽射しに包まれながら東京駅まで歩きました。素敵な演奏を聴いたあと、すぐに電車に乗るのは一気に現実へ引き戻されてしまう気がして脳が追いつかない。フォルテピアノの音色を脳内で再生して、余韻を味わいながら少しずつ熱を覚ましていくのに、このお散歩はちょうど良かったです。