「時間の予算管理と仕事の分解」で仕事のスピードアップを実現する | 人事制度に「人材育成の仕組み」と「業績向上の仕組み」を組み込む法

人事制度に「人材育成の仕組み」と「業績向上の仕組み」を組み込む法

人事制度の策定と運用を実務面からプロデュース

ずいぶん前から、速読とか速聴などといったことが流行っているようで

す。

確かに3時間かけて本を読むより、30分で読み終えた方が時間を効率的に使えます。

これも立派な時間の有効活用ですが、もっと大切なことがあります。

 

30分で本を読める力があっても実際に読まないと意味がありません

し、読みたいと思う気持ちがあっても読まなければ意味がありません。

 

本当に大切なことは、読み終えるには3時間かかるけど「今すぐに読

み始める」ということなのです。

 

ですから、仕事のスピードアップで成果を出すには、「今すぐやる」とい

った意思決定と行動がとても大切なのです。

 

言ってみれば、「保有能力」(もちろん大切ですが)ではなく「発揮能

力」によって決まるということなのだと思います。

 

やると決めたら即行動に移す。

たとえ失敗しても、即改善し、再び即行動に移す。

この意識と行動こそが成果を出すためのコツであり、仕事のスピードア

ップにつながるのです。

 

とは言え、何も考えないで闇雲に突っ走ることはあまり賢明ではあり

ません。

「即やる」ことは仕事のスピードアップに必要なことですが、どのような

考え方やノウハウで実行すれば仕事のハイスピード化が図れるのか、

ここがとても重要です。

 

そこで今回は、仕事のスピードアップを図る上でとても大切な「タイム

バジェット(時間の予算管理)」といった考え方についてご紹介したいと

思います。

 

例えば、「これだけの売上を上げるためにはこれだけの経費(予算)を

投入する」といったように、時間にも「予算」といった概念を導入したタ

イムマネジメント実践上の考え方です。

 

私たちは1日24時間・1ヶ月間をフルに仕事に当てられるわけではあ

りません。

また、仕事以外にもいろんなプライベートな時間も必要です。

仕事もプライベートもどちらも重要です。

 

どのような仕事に、そしてどのようなプライベートに、どの程度時間を当

てられるかを、事前に予算として組むことにより、価値ある時間の使い

方をしましょう・・・ということです。

 

「プライベートなことにまで時間予算を組むなんて何だか味気ない」と

思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。

 

例えば分かりやすい例で説明しますと、家族で二泊三日の旅行を計

画したとします。

この場合、何処に行くのか、日程はいつがいいのか、どのような行程

で行くのか、チケットはいつまでに購入すればよいのか、ショッピング

はどこでどのくらい時間をかけるのか、初日・2日目・3日目とそれぞれ

どこでどの程度滞在して何をするのか、などなどいろいろとわくわくしな

がら家族みんなで計画を立てると思います。

 

多くの方は、行き当たりばったりで無計画でいくことはまずないでしょ

う。ある程度きちんとスケジュール(時間の予算配分)を立てて行くか

ら、楽しい家族旅行ができるのです。仕事も全く同様です。

 

話を元に戻しましょう。

 

仮に、自分の仕事で、1ヶ月の勤務日数を20日とし1日あたり8時間

働くとしたら、160時間/月の時間予算があるということです。

 

この予算を効率的に使うために、どのような仕事にどのくらい時間を使

えば良いのかをあらかじめ計画しましょう、と言うことです。

 

もちろん、事前に組んだ時間予算通りにいくとは限りません。

予定通りにいかない場合の方が圧倒的に多いと思います。

 

でも、それぞれの仕事をどのくらいの時間をかけてこなせばよいのかと

いった時間に対する意識を持つことは大変重要ですし成果にも大きく

影響します。

 

例えば、「営業マン業績管理システムの企画書を1ヶ月で作成する」と

いった業務が発生したとします。

 

この時に、「1ヶ月もあれば楽勝だ」と思うか、「30時間の時間予算で

片付けよう」と思うかでは、雲泥の差となって現れます。

 

1ヶ月といったスパンで活動を捉えてしまうと「これから1ヶ月もあるわ

けだから、まぁ、何とかなるだろう」といった意識が働き、どうしても活

動そのものが最後の残り一週間に集中してしまい、てんてこまいの状

態になってしまいます。

 

てんてこまいの状態で必死でやればまだ救いようがありますが、「ま

ぁ、いいか。来月頑張ろう」なんてことになったら、いつまでたっても企

画書は完成しません。

 

全ての業務には、他人(上司や取引先など)から納期設定される場合

と、自分自身で納期設定する2つの設定パターンがありますが、後者

であればあるほど、「まあ、いいか」と言うことになってしまいます。

 

そしてやっかいなことに、この後者の納期設定パターンが私たちの業

務では圧倒的に多いのです。

 

これでは、いつまでたっても仕事は完了しませんし、負け癖がついてし

まいます。

でも、30Hで達成しなければならないといった様に時間を鮮明に意識

すると、この「企画書」業務のために必要な仕事の段取りを組むといっ

た意識につながります。

 

段取りをきちんと組むことができれば、30Hで可能なのか、もっと時間

が必要なのかといったことも見えてきます。

 

そうなると、「目標(企画書の作成)」と「目標達成のための必要時間」

の両者の整合性も自分なりに検討できるし、必ず仕事の精度(出来映

え)もアップします。すなわち、目標達成の可能性が大いに高まりま

す。

 

もう少し具体的にお話しますと、例えば・・・

 

・企画書の作成~30時間

・既存のA業務~60時間

・既存のB業務~40時間

 

で、合計130時間です。

 

(※現実にはもっと多くの様々な業務を担当するのでしょうが、ここで

はシンプルに3つの業務でご紹介します。)

 

160時間の内のせいぜい80%程度が正味投入できる時間です。

即ち、本来業務の稼働率ということです。

 

残りの20%、即ち約30時間は、社内事務やその他諸々の付帯・雑

務業務に使っているのが実態です。

 

いずれにしても、このように「企画書」業務を30時間で完了しなければ

ならないとなれば、その取り組み方は全く変わってきます。

 

要するに30時間で完了できるように「企画書」業務を設計しなければ

なりません。

 

そして、この時に大切なのが、仕事をブレークダウンするといった考え

方でありノウハウです。

例えば・・・

 

・企画書作成業務(30時間)

 → a.実態の調査(8H)

    b.関連部署との調整(6H)

    c.問題点や検討事項の洗い出し(5H)

    d.改善案の整理(5H)

    e.成果の予測(6H)

    f.・・・・・・・・・・

 

などなど、いろんな業務が発生します。

 

もちろん、立場によって分解(ブレークダウン)される要素も配分時間も

違ってくると思いますし、もっと具体的に詳細に分解した方が良いかも

しれません。

 

例えば、実態調査といっても、いろんな方法や進め方がありますし、お

そらく関係者への根回しなども必要になってくると思います。

 

いずれにしても、企画書作成業務を完遂させるために必要な仕事の

分解と必要時間(時間予算)をできるだけ詳細に落とし込み、ゴールま

での道筋をはっきりさせることが必要です。

 

このように、時間の予算管理をできるだけきちんと実行し、仕事の分解

を心がけることで、仕事のスピードは格段に高まっていきます。

精度も向上します。

 

ところで実は、20年以上も前のことで、私がまだサラリーマンとしてあ

る会社に勤務していた頃のお話ですが、このようなことがありました。

 

当時、○○部門に籍を置き、あるプロジェクトに参加していました。

私の担当業務の向こう1ヶ月間のスケジュールを上司に報告した時の

ことです。

 

上司から、「○○業務に2週間かけるなんて長すぎる。何とか10日で

できないか」と指摘されたのです。

 

私は、「そうですか、分かりました」と言って、すぐに2週間の線引き日

程を10日間に修正し上司に見せたところ、「よし、分かった、これでや

れ」といった返事が返ってきたのです。

 

今思えば、この上司にも問題はありますが、線引き日程の線を引き直

すだけで全てが解決したような気持ちになった私にも大いに問題あり

です。

 

これでは全く意味がありません。

この線の裏側に潜んでいる仕事の質的な課題や量的な課題が全く見

えていないのです。

 

10日間で完了させるには、どれだけの作業を、どういう方法で、どうい

う手順でやれば良いのかといったことを、まず計画に落とし込まなけ

ればなりません。

 

これが全くできていなかったのです。

落とし込むと、本当に10日間でできるかどうかが分かります。

 

出来なければ、少し日程をずらすか、できる方法を新たに考えないと

なりません。

また、最初に認識できなかった新たな課題も見えてきます。

 

見えてくれば、その課題にどう対処すればよいかを考えることもできま

す。そうすると、計画の精度が上がるのです。計画の精度を徹底して

上げていく。そうすると先々で発生する課題も見えてきます。

 

課題が見えてくると「課題そのものを計画の中に組み込むことができ

る」ようになります。

先々で発生するであろう課題さえも計画の中にアクションプランとして

盛り込むことができます。

 

大中小の仕事が、ただ単に線引き日程でつながっているだけでは、仕

事の質と量の裏付けが不明です。

線引き日程の裏側に潜んでいる質と量の問題を顕在化させる計画こ

そが大切なのです。

 

そしてこれこそが、リスク管理の原点であり、仕事の生産性を上げる

(即ち仕事のスピードアップ)ためにはとても大切な視点なのです。