マナーはできていますか? | 井上浩二の「現在(いま)を考える。」

マナーはできていますか?

昨年末から、お客様に私の会社で提供する新入社員研修のコンテンツ見直しに関わっており、『ビジネスマナー』に関して皆と改めて議論しています。お辞儀の仕方や名刺の受け渡しなどの所作、身だしなみ、言葉遣い・・・色んなトピックスがあるんですよね、改めて見てみると。勿論、一つ一つに意味があるのですが、そもそも『ビジネスマナー』とは何かという事をどう伝えるべきか、それこそが一番大事なんじゃないかと皆で話しています。

 

敬意 vs. 距離感
最近の若者は言葉遣いが乱れている、正しい言葉遣いを知らない、なんて話はよく耳にしますよね。実は、若者だけじゃないと思うのですが。そんな中、ビジネスマナーでも敬語や謙譲語の使い方などにも相応の重きが置かれれる。で、どこが間違っているか、正しい日本語はどうあるべきか、なんてコンテンツがあったりする。
・お客様の訪問を受けて会議室にお連れした際に、「どうぞ、こちら側にお座りください」と言った。
・お客様と商談をしている際に、当社の競合他社の新商品の情報をお客様から教えて頂いた際に、「ありがとうございます、参考になりました」と言った。
どうでしょう?上記の2問、皆さんはどこが間違いか、正しい日本語はどうあるべきか、分かりますか?正解は、文末に書いておきますね。ま、こんな風に書くのですから、当然両者ともに「正しい日本語」としては誤りがある。正しい日本語を学ぶことは、本当に重要な事。正しい日本語を使っていないが故に、今や稀ではあると思うのですが、「こいつは日本語の使い方も知らないのか!」と関係構築の入り口から躓くこともある。これは、損ですよね。勿体ない。そういうことを出来るだけ避けるためにも、正しい日本語は使えた方が良い。しかし、そこに拘り過ぎると、ギクシャクしたり固くなりすぎて場の雰囲気にいらぬ緊張感みたいなものが生まれることもある。私なんかは特にそうなのかもしれませんが、相手があまりにも丁重な言葉でコミュニケートし続けると距離を遠く感じちゃうこともある。私に対して敬意を表してくれているのは分かるのですが、時によそよそしく感じる事がある。一方、初対面からあまりにも砕けていると、それこそ「マナーも知らんのか!」なんて思う事もある。人って勝手ですよね。しかし、相手に示す敬意と距離感のバランス、ここにこそマナーの本質があるんじゃないかと思ったりするわけです。要は、相手が「この人と話す、一緒に仕事をするのはなんか気持ちいい」と感じて下さることが大事。そのために必要なことは、言葉使いだけではなく、所作、語調、身だしなみなど全てを組み合わせて相手に示す敬意と好意なんだと思うわけです。これが、相手に対するマナー。それは、初対面の方なのか、これまでに何度も議論している方なのか、あるいは社内の先輩なのか同僚なのか、などなど、相手によって使い分けなければいけない。このバランスを作ることが、ビジネスマナーなんじゃないかと思ったりするわけで、そう考えると先の2問はこの日本語でも全く問題ないと思うんですよね。ま、言い方ににもよりますが、あの表現で「こいつは失礼なやつ!」なんて思う人はいないでしょうからね。

 

こんなこと考えている中、先日「この人こそお手本」という方にお会いしました。懇意にしているお店のご主人なんですけどね。赤坂にある老舗の「炭火焼はやし」。有名なお昼の親子丼を始め、お料理が全て美味しいのは勿論なのですが、このご主人が本当に気持ちの良い場を作って下さる。お迎えの時の所作から、座敷でちょっとした世間話をするときの立ち居振る舞い、言葉遣いに語調。全て、お客様毎にバランスを考えて下さっていることを感じます。こういう現場で「マナーとは?」を考え、出来る人から盗むことが大事なのかもしれないですよね。私の周りにも、「この人、素敵!」と思うビジネスパーソンは沢山いる。実は、私もそういう方々から勉強させて頂いて、盗んでいる。これから社会で大活躍してもらう新社会人の皆さんには、固くなりすぎるマナーを教えるのではなく、良い人間関係を作るビジネスマナーとは何かを伝えられるようにしないとですね。

さて、正解です。
「お座りください」⇒「ご着席ください」
「参考になりました」⇒「勉強になりました」
だそうです。ま、どうでもいい気もしますが、如何でしたか?