見極めることができますか? | 井上浩二の「現在(いま)を考える。」

見極めることができますか?

「お前は、日経に出ている記事にも目を通していないのか!」なんて、私が若い頃には怒られたもの。お客様との話で、日経に載っている事も知らないようじゃ恥だ!ぐらいに言われていました。その頃は、若かったからかなぁ、新聞読んでいても違和感を持つ事は少なく、技術系の誤報ぐらいしか引っ掛からなかったのですが・・・最近は「これって、本当?」とか、「こういう記事はよろしくないんじゃないか」なんて思うことが増えました。その理由は、事実の報道以外に記者が自分の意見を書く部分が増えたからじゃないだろうか、なんて事を思うのですが、皆さんはどう思われています?若い人たちが、こんな記事を読んで鵜呑みにしなければ良いのですが・・・

 

偏った事実認識に基づく報道
論理思考の教科書にもよく出てきますが、特定の事実だけに着目して、偏った解釈をしてはいけないですね。しかし、最近の新聞にはこの手の記事をよく目にするように思います。例えばですが、最近の記事にはこんなものがありました。

 

 

昭和の高度経済成長期に、GMSや百貨店は団塊の世代の受け皿として大量出店、大量消費で利益を生み出し、成長した。大衆消費社会を実現する舞台装置がGMSであり、百貨店だった。

しかしその成功モデルがゆでガエル現象を招いた。消費者の嗜好や行動の変化やインターネットによる購買行動の変化への対応を怠った。団塊の世代にしがみつくあまり、団塊ジュニアや平成生まれを取りこぼした。

 

 

どうなんでしょうねぇ。確かに『怠った』企業もあります。しかし、全てではない。対応が十分でないところは沢山あるかもしれませんけどね。『団塊の世代にしがみつく』って、団塊の世代は非常に大きなマーケットなので、それを捨てて他のマーケットだけに注力することなんて出来るわけがない。しがみついたわけじゃなく、そのマーケットへの注力、あるいはそこしか知らない人達が、若い世代を取り込む戦略を上手く作れなかった。更に悪いことに、両方に対応しようとしたから、団塊世代への対応も中途半端になり、その世代の変化への対応も上手く出来なかったのはイマイチだと思いますが。

この記事は、続いて若者世代に受けたドン・キホーテがGMSの跡地に出店し、ユニーも傘下に収めて・・・と続きます。しかし、現在のGMSや百貨店の凋落のように、30年後にドン・キホーテが凋落していないと何故言えるのでしょうね?もしダメになっていたら、今のGMSや百貨店と同様に叩く癖に。更に、この記事はこんな風に続きます。

 

川上への関与も力不足だった。消費者の支持を得ているのは、製造現場へも踏み込み、消費者の「ほしい」ツボを押さえた商品を作るニトリホールディングスや、ファーストリテイリングだ。(中略)

ネット販売への対応が後手に回ったのは、大量にリアルな売り場を抱える既存事業への影響を恐れたためだ。

既存小売りのPBは、どうなんでしょうねぇ?発売10周年のセブンプレミアムの18年2月期の売上は、1兆3200億円で前年同期比14.8%増を達成しています。これは、消費者の「ほしい」ツボを押さえていないのかな?また、ネットへの対応もこんなに安易に書いて良いのですかね?最近、米国ではウォルマートの復活が目を引きます。ECは特に好調で、店舗を活用した生鮮の扱い、ピックアップタワーの増強など、持つ者の強みを発揮し始めている。しかし、ウォルマートでさえこのような業績転換を図るのに、9年も要したわけです。これから数年後に、日本でウォルマートのように変われている企業がどこか、変われない企業はどこかを書くのであれば、まぁ分からなくもないですけどね。

 

事実と意見を分ける
上記の記事、余りにも酷いというか稚拙というか・・・こんな記事を読んで鵜呑みにすることなかれと思ったので色々書いたのですが、他にも本当にこういう記事が散見される。いつの世でもそうなのかもしれませんが、頼みになるのは自分。読んだものから、本当はどうかを見極めないといけない。こういうことをする際に注意すべき事は、「事実」と「意見」を分けることなのでしょうね。過去に栄華を誇った小売業者が凋落しているのは事実。買い手のニーズをきめ細かく分析し、商品やサービスを展開している企業が成功しているのも事実。一方、それが何故出来なかったのかの分析は意見。ここを分けて読まないといけないわけですね。ただ、昔の新聞は、そもそも事実と意見をちゃんと分けて書いていたように思うのですが、これは単なるノスタルジー?

 

さて、話はガラッと変わって・・・ある人が、「ああ、最近よく見る『耳からうどん垂らしているやつ』でしょ。」と喩えたものがあるのですが、何だか分かりますか?そう、AirPodsです。で、個人的にあまりにもウケたので、息子にやらせてみました。左右どっちが本物か、分かります?ってこうして見比べたらすぐ分かりますが、左の写真だけで『新型AirPods発売!』って写真出したら・・・なかなか分からないんじゃないかなぁ?自分の目で見極める、こういうfakeがあったら、難しいですよねぇ。