家に戻ると彼女がベッドに突っ伏しているというのは良くあることで。
 
 
 お昼の時間に少し遅れて家に着いた。
 玄関が閉まっていたので、家の隣の木に登る。
 寄り添うほどに近い枝から屋根に飛び移り、屋根裏の窓を爪先で押した。立て付けの怪しくなっている窓はキィときしんで簡単に開く。ホコリっぽい空気が鼻につく前に、小さく吸って息を止める。
 床に飛び降り、薄暗い中隙間をぬって。
 ホコリのつもっていない線の手前で立ち止まった。
 前足で床を叩く。光の差し込む隙間が出来る。
 入り口だ。
 僕はそこに体を滑り込ませた。
 
 
 まだてっぺんを過ぎたばかりの日の光が差し込む家の中は明るい。
 誰もいない台所を抜けて奥の部屋へ。
 この家でいちばん日当たりのいい場所、窓辺に置かれたベッドに彼女の姿はあった。
 きちんと整えられた布団の上、膝から下はベッドからはみ出していて、うつぶせに倒れ込んでそのまんま、といった風情。やわらかな毛布に突っ伏した顔はこちら半分だけが見て取れた。
 無造作に投げ出された手を飛び越えて、のぞき込む。
 気持ちよさそうな寝顔。
 もう1歩近づくと、目蓋が薄く開いた。
 片方だけの黒い瞳がぼくを見つける。
「お昼だよ」
 一応声をかけてみた。
 けれど彼女は聞いているのか分からないような様子のまま、ぼんやりと2回まばたいて、また瞳を閉じた。
 すぐに聞こえてくる小さな寝息。
 
「しょうがないなぁ、もう」
 ぼくはため息をつく。
 でもその声もため息も彼女には聞こえないように。
 肩口に寄り添って丸くなる。
 ほんとはお昼なんてどうでもいいんだ。
 
 
 くすぐったい距離と、時間。
 ぼくの特等席。