Qスイッチレーザーの登場は革命でした。
1980年代の後半にQスイッチレーザーが相次いで実用化されました。
Qスイッチという電子シャッターのような部品を組み合わせることで、
ため込んだレーザー光を一挙に放出して、ナノ秒(10-9)オーダーの
パルス幅を実現できるようになりました。
これにより、太田母斑、後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)の
治療効果が飛躍的に向上します。
Qスイッチルビーレーザーを用いれば、ADMで明るい褐色調のものは1回、くすんだ灰青色調のものは2回で気にならなくなる程度まで改善されます。
左頬ADM Qスイッチルビー 2回治療後
難治だった後天性真皮メラノサイトーシスはここまで改善される
ようになりました。これは歴史的な快挙です。
ナノ秒(10-9)のパルス幅よりもっと短いパルス幅にしたら、
どんな臨床効果が発現されるのか?
レーザーに携わる臨床家ならだれもが思う疑問です。
2013年から、各レーザーメーカーからピコレーザーが発売されました。
パルス幅ナノ秒(10-9秒)オーダーとピコ秒(10-12秒)オーダーレーザーの効果の違いは?
2013年 Cynosyure社がピコアレキサンドライトレーザーを発売。
2014年 Cutera社がピコNd:YAGレーザーを発売
2015年 Syneron Candela社がピコNd;YAGレーザーを発売
ピコ秒レーザーが販売されて5年以上が経過しました。
臨床経過からいろいろなことが分かってきたようです。
ナノ秒レーザーにはなく、ピコ秒レーザーにある特性として、
光音響作用(photoacoustic reaction)です。
粒子内の高圧化・衝撃波生成を通じて粒子の破砕を起こします。
ピコ秒レーザーがナノ秒レーザーより圧倒的に効果が高いのは、刺青(入れ墨)です。
老人性色素斑、太田母斑、ADMに対して、
Qスイッチレーザーとピコレーザーのどちらが効果が高いのか?
これが、最大の検討課題です。
(本当は結論を知っていますが、あえて述べません。)
最近はADMに対して、ピコトーニングなる怪しげなレーザー治療を
するクリニックが増えてきています。
肝斑に対しては、QスイッチYAGによるレーザートーニングのように
ある程度の効果があるかもしれません(かなり限定できです)。
ADMのように、病変の主体が真皮内に存在する疾患に意味がある
のでしょうか?
トーニングとはレーザーを皮膚から離して、defocous 照射することを
意味します。
レーザーは精密機器であり、焦点距離を正確に測定して、照射する
ようにできています。
・ defocous 照射にどんな意味があるのか?
・ defocous 照射で真皮内までレーザー光が届くのか?
ADMへのトーニング治療(Qスイッチ、ピコ)は、おかしい!!
C社のセミナーに参加したことがあります。
ADMに対して、
QスイッチYAGとピコレーザー(enLIGHTen)のレーザートーニングを
7~8回照射して、効果を比較判定するという内容でした。
どちらも、ほとんど効果はなく、効果ないものどうしのスライドを見せられ
ややピコのほうが改善度が高いという結果の発表でした。
頭が???になりました。
tattooもトーニングを繰り返したら、薄くなるのですか?
これ、セミナーで発表するレベルの内容ですか?
全国のピコレーザーのユーザーを小馬鹿にしていませんか。
真皮内色素病変についてはQスイッチ、ピコとも
レーザートーニングはまったく無意味です!!