story 94 吹っ切れる
拓也「き、君は今朝の・・・」
愛「元気そうじゃん!!」
楓(ち、違った・・・)
(一瞬、葵かと思った。)
「心配して損しちゃったな。」
「楓が危篤だって言うから心配して来たのに。」
「エヘッ。」
楓「だ、誰が危篤だ・・・」
「そう聞いたんだけどなぁ~」
「そんな事言ったのか、拓也!?」
「あの時は本当に危ないと思ったからさっ。」
「顔色も真っ青になってたし。」
「マジでビビッたよ。」
英二「まー大事に至らなくてよかったじゃないか。」
「そ、そうっすね。」
バタン!!
扉の開く音がする。
楓「あっ!!」
「恵さん!!」
恵「大丈夫なの!?」
「はい。大丈夫です。」
拓也(恵さんだ・・・)
(なんか気まずいな。)
恵「人様にあんまり迷惑かけたらダメだぞ。」
「す、すいません。」
「元気そうで良かった。」
「何事かと思った。」
英二「楓も大丈夫そうだし、そろそろ店に戻るわ。」
拓也「えっ!?店には透さんがいてるんじゃ・・」
「透!?」
「居る訳ないだろ!!」
「あんなヤツ知るか!!」
「じゃー俺戻るから。」
「じゃーな楓。」
「ゆっくり休めよ。」
「は、はい。」
重たい雰囲気の中、時は刻まれる。
愛「じゃ、私も帰ろうかな。」
楓(えっ!!)
(もう少しいて欲しいな・・・)
拓也「せっかくここまで来たんだしゆっくりしていけば。」
「う~ん」
「でも、明日早いしな~」
「明日何かあるの!?」
「明日の朝にはココを離れるから。」
「もう帰っちゃうんだ。」
「でも、せっかく来たんだし、お茶でも飲んで帰りなよ。」
「何か買って来てあげるよ。」
拓也(恵さんをどうも意識してしまう。)
(楓もあの子の事気に入ってるみたいだし、そろそろ俺は帰るか。)
(本当は恵さんと一緒にいたいけど、変な意識しちゃうしな・・・)
「じゃー俺、何か買って来るから。」
「楓、後は頼んだぞ!!」
楓(拓也のヤツ。)
(気を使ってくれたんだ。)
拓也の後を恵が追うように出て行く。
恵「じゃー私も食べ物でも買って来るよ。」
そして、拓也に声を掛ける。
恵「拓也くん。」
拓也「あっ。」
「恵さん・・・」
「昨日は本当にゴメンね。」
「全然、良いっすよ。」
「理由はどうあれ、俺を頼ってくれたのは嬉しかったです。」
「私も吹っ切れそうな気がする。」
拓也(吹っ切れる!?)
(って言う事は俺にもチャンスがあるか!?)
「さっき来てた女の子いてたでしょ。」
「うん。」
「なんか楓のお気に入りらしいんですよ。」
「だから、飲み物買って来るとか言いながらそのまま帰ろうと思ってたんですよ。」
「へぇー、そうなんだ。」
「じゃー私も帰ろうかな。」
「二人の邪魔すのも悪いし。」
「エヘッ。」
拓也(や、やっぱり可愛い・・・)
(意外と普通に会話が出来るな~)
楓達は
愛「本当に大丈夫!?」
楓「大丈夫だよ。」
「ちょっと疲れが溜まってただけ。」
「店に来てくれてたんだ。」
「ちゃんとお礼を言っておこうと思って。」
「ありがとう。」
「あ、あー・・・」
「楓に見つけてもらって指輪捨てれたから、もう吹っ切れちゃった。」
「前の彼氏の事なんか、もうどうでも良くなった。」
「アハッ。」
「もう少し、ココに居ようかな。」