







昨日行なわれた競馬の天皇賞・春(GⅠ)は、昨年の4冠馬オルフェーヴル惨敗という衝撃的な結果となった。レース後、しばし呆然とテレビ画面を見つめた後、まず思ったことは、天才肌の鼻っ柱の強いやんちゃ坊主の気勢を削いでしまっては、好結果など初めから望みようが無かったのだろうという事。彼は、勝負根性を表に出してこそ真価を発揮するタイプの馬。昨日の彼は、折り合いがついていたのではなくて、闘争心が欠けていたのだ。トライアルの阪神大賞典の逸走劇から、なぜそんな状態になったのか。テレビ桟敷のオヤジの目で見ても、理由を挙げれば五指に余る。
僕は、返し馬が終った後の輪乗りの所からしか見ていないが、落ち着きがあって、関係者が上手くコントロールできているんだなと、安心して見ていた。ところが、ゲート入りの彼を見て、安心は不安に変わる。厩務員や按上の言う事を、妙に素直に聞いて、考えられないほどスムーズにゲートに向かう。その歩く姿に、思わず、「大人しいなぁ、これから走るのに目が優しすぎるなぁ」とつぶやいた。それでも、スタートを無難に決めて、後方とはいえ馬込みの後ろにつけた時には、「これで勝った、後は追い出しのタイミングだけだな」と、この時点でも、ゴール板を先頭で駆け抜ける彼の姿を想像できた。
だが、1周目の直線を走る彼のフォームを見て、ゲート入り時の違和感がよみがえる。首を大きく使って、馬体が沈み込むような走りが全く見られない。反面、いつものように行きたがるそぶりも見せず、口も割らず、池添騎手の指示に従っているようには見える。この時、勝ったビートブラックは、3番手以下を大きく引き離し、2番手追走。厩舎サイドが敗因として挙げた、超高速馬場の影響か、ペースは遅くないのに楽逃げの様相となりつつあった。4コーナーを回った時点で、勝馬とオルフェーヴルの差は20馬身以上。万全の状態であったとしても、追いつくのは不可能に近い差がついていた。
この敗戦で、最も腑に落ちないのは、池添騎手の騎乗ぶりだ。オルフェーヴルは、自身の過去のレースのみならず、父・ステイゴールド、全兄・ドリームジャーニーや、近親の今年の皐月賞馬・ゴールドシップらを見ても分かる通り、切れる脚を使って追い込みを決めるタイプの馬ではなく、長く良い脚を使って、早めに抜け出してから、そのまま押し切る(或いは突き放す)タイプの馬だ。大外18番ゲートから馬を前に置く為に、最後方につけたにしても、前があれだけ離れていたのだから、2周目の坂を上りきる頃には、差を詰めておかなければ、間に合うはずがない。早めに仕掛けると、また暴走するかもしれないという恐怖心があったのだろうか?大舞台で緊張したり怖気づいたりしては、冷静な判断は望めない。頭の良い、オルフェーヴルは、そんな池添騎手の雰囲気を敏感に感じ取り、ソラを使ったのではないか。更に、4コーナーで外に振られたのは展開のあやがあったにしても、直線の追い比べで、どうして一度も馬体を合わせに行かなかったのだろう?あの場面は、いつもとは様子の違う彼の闘争心に火をつけるような手綱捌きをするのが、当然ではなかったか。
レース後の、池江泰寿・調教師や池添騎手のコメントも、納得のいかないものが多い。まず、誰もがそう思ったに違いないが、道悪で足を取られてというのは聞いたことがあるが、パンパンの良馬場過ぎて、つまづくなんて本当にありえるのか。2重のメンコやリングハミの使用により、折り合いをつけようとするのはいいが、冒頭にも書いたように、オルフェーヴルの一番の特徴である気の強さから来る勝負根性を削ぐような事態に、なぜ陥ったのか。中間の調整方針にも問題があったのではないか。調教再審査により、何度もダートを走った影響で、歩様が硬かったとも語っているが、いつもの彼の気性なら、能力だけでカバーできたのではないか。癖馬をなだめすかして、能力を最大限に引き出すのが、騎手の腕の見せ所のはずなのに、自分が緊張して結果を出せなかったのに、レース後に言い訳なり責任転嫁とも取れる発言をするようでは、今度ばかりは、乗り代わりが現実味を帯びても、仕方ないのかもしれない。個人的には、武豊と言いたいところだが、色々なしがらみがあるようで難しいかもしれない。
この2戦は不本意な結果になったオルフェーヴルだが、4歳過ぎればただの馬(サラブレッドの4歳は人間で言えば二十歳くらい)という事では断じてないと思っている。もう一度、以前の闘争心を呼び覚ませば、4冠馬の輝きを取り戻し、更なる成長が望めるはずだ。父・ステイゴールドは、8歳(現在の数え方では7歳)のラストラン(海外遠征)で遂にGⅠを制覇した。全兄・ドリームジャーニーも、5歳暮れの有馬記念を制している。晩成型のステイヤーである、母の父・メジロマックイーンの血も受け継ぐ彼が、早熟タイプで、もう終ってしまったなどという事があるはずがない。関係者には、これで萎縮せずに、堂々と凱旋門賞を取りに行ってほしい。僕は今でも、彼は日本競馬史上最強馬になれる器だと思っている。但し、メンコとリングハミは外した方が良いかもしれない。

第145回 天皇賞・春(GⅠ) 2012.4.29 京都 芝 3200m 良
余談だが、馬券の話を少しだけ、このレースの3連単は、1,452,520円もついた。誰かこんな馬券を買うのかとの声もあるが、僕は、穴党の中には狙って取ったファンも大勢いたのではないかと思う。今回穴狙いをするなら、まず初めに考えることは絶対的1番人気のオルフェーヴルを馬券対象から外すこと。その代わり、2番人気と3番人気は必ず馬券に絡めることにする。そうして残るもう1頭はオルフェーヴル以外何が来てもいいことにして、着順も問わない買い方をすれば、僅か90通り9000円で、145万円が手に入った計算になる。買う時に面倒なら、2,3番人気の2頭軸で、3連単のマルチで買っていれば、96通り、9600円でも同様の配当になる。後付けの机上の空論ではあるが、きっとこの方法で取った人が何人もいるのではないか。うらやましい。僕は、17年近く馬券を買っていないけど。
では、また。