ギランバレー症候群と僕の共存生活(その⑩)       ~白血球減少と抗体検査の結果~ | stockracerの雑記録

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    ~その⑨からの続き~

 骨髄穿刺の検査が始まった。うつ伏せに寝た僕の腰骨の中心辺りを、消毒し、局所麻酔をかけるところまでは腰椎穿刺の時と変わらない。違っていたのは、骨髄まで到達するように、針を深く刺す感覚とそれに伴う痛みだ。だが、恐れていた激痛というわけではなく、例えるなら、弁慶の泣き所をぶつけた時の方が余程痛い。今回もまた、病気の症状のせいで、痛みの感覚が鈍っていたのかもしれない。ただ、実際に施術した医者にその事を聞くと、「そういう事もあるかもしれないが、痛みを全く感じない患者もいるからねぇ」と返事はそっけなかった。昔テレビで見た記憶があるので、相当ビビッていたが、拍子抜けするほどあっけなかった。それよりも、検査の為に骨髄液を抜き取る時の気持ち悪さの方が、一生忘れられない嫌な感覚として残っている。文字通り骨の髄を取るわけだから、身体の中心に手を突っ込まれて、はらわたを引き抜かれるような、ちょっと大袈裟だが、そのくらいの違和感があった。できれば、2度と受けたくない検査だ。

 検査が終って暫くすると、看護師が2人現れ、病室を移る為に移動するという。ベッドに載せられたまま4人部屋を出て、着いた先はナースステーションの目の前の個室。訳も分からず、多分きょとんとしていると、主治医のM先生が来てこう言った。

M先生、「白血球の数値がかなり低いので、感染症を防ぐ為に、個室に入ってもらいます。それから、食事の時以外は、夜寝る時も含めて、マスクをつけてください。血液内科に予約を入れておきましたから、後で呼ばれたら、診てもらってください」

僕、「先生、僕は、白血病か、他の血液の病気の疑いがあるんですか?」

M先生、「さっきの検査の結果が出ないと詳しいことは分かりませんが、今のところ特にこれといった病気が疑われるわけではありません。ただ、白血球がかなり減少しているので、その原因と突き止める必要がありますね」

僕、「……あのぉ…、この個室なんですけど、差額ベッド代が掛かるんですよね?」

M先生、「(にこっと笑顔になって)あぁ、治療上の判断で移ってもらった場合は、一切掛かりませんよ。心配しなくてもいいですよ」

 白血球の事も心配だったが、、高額医療費制度を利用した限度額内での支払いが適用されるのは翌月からで、この月は、高額の免疫グロブリン製剤も使っている事もあり、この上差額ベッド代など、例え後から返還されるお金だとしても、とても払えそうになかった。先生の言葉には、とても安堵したことを覚えている。

 入院生活では、ただ病気と戦っていれば良いというものではなく、医療費の問題もあるし、色々な人に迷惑をかけているのだから、そのフォローもしていかなければならず、思いのほか気苦労が多いものだ。それに加えて、ギランバレー症候群のように、(この時点よりはもう少し先の話だが)回復期に長期間のリハビリを要する疾患の場合、ゆっくり身体を休める暇などなく、毎日残業付きのフルタイムで働いているのと同様の労力を使っていたと言っていい。それでも、僕には全く不満はなかった。なぜなら、病院というところは、回復する見込みのない患者も大勢入院している場所だからだ。その事を知ってか知らずか、殆ど全ての患者が、少しでも良くなろうと、必死にがんばっている。それを、親身にサポートしてくれる、医者,看護師,理学療法士,作業療法士,看護助手,介護福祉士,ソーシャルワーカー,薬剤師などの病院関係者。こういった全ての人達の様子を目の当たりにすれば、自分にできることを、120%の力でやらない訳にはいかないのだ。それに加えて、絶対に歩けるようになってやるという気持ちが強かったので、「過労で倒れてもここは病院だ、誰かが助けてくれるだろう」という考え方に行き着いた。

 さて、その日の夕方近くになって、車椅子に乗せられて血液内科の診察を受けた。その医者の話によると、白血球の全体数が、基準値の下限よりかなり少なくなっている。中でも、好中球の数が少ないことが問題なのだという。好中球が少ないと、免疫力が下がり、さまざまな感染症に罹りやすくなるらしい。ただ、他に病的な所見はなく、今の数値より下がらずに上昇してくれば問題ないとの事で、様子を見るとの話だった。免疫グロブリン製剤の副作用の可能性について聞くと、その可能性も含めて、現時点では原因が特定できないので、経過観察が必要だと説明された。最後に、1週間に1度、病室から通うように言われたが、その言葉から、「俺はいつまで入院していればいいんだ?」と先の見えない状況に、気が重くなった。

 病室に戻ると、沈んだ持ちに追い討ちを掛ける情報が待っていた。△△大学に依頼していた、抗体検査の結果が出ていたのだ。以前にも、このシリーズの中で書いたが、この抗ガングリオシド抗体検査の結果で、僕のギランバレー症候群の病気の型(リンク先3項目参照)がある程度分かる。また、どの程度重症化する可能性があるのかや、予後についての見通しもある程度予測できるのだ。僕の場合、この時点では、既に症状の進行は止まっており、再発・再燃しない限りは、悪化する可能性はまずないのだが、看護師から渡された、検査結果について書かれた報告書を見ると、その内容は意外なものだった。一通り目を通して、僕の口から最初に出た言葉は、「危なかったなぁ」だった。

    以下、その⑪へ続く

 では、また。