昨日のブログを見た知り合いが、就業規則で従業員の政治活動を禁じることは可能か?と聞いてきました。

可能なら、就業規則で規定することで、ある程度抑止できるのではないかということなのです。



日本国憲法では、思想及び信条の自由、信教の自由、表現の自由など、人権保障を規定しています。

政治活動は憲法の国民主権の原理に直結したものであり、その自由は当然の権利といえます。

本来、制約を受けるものではないのです。


しかし、こと職場内においては就業規則によって政治活動を禁止することは合理的であるという最高裁判例があります。

職場内の政治活動は、他の労働者の作業または休憩を妨げ作業能率を低下させるおそれがあり、そういった企業秩序維持の見地から、職場内における政治活動を禁止する定めは一般的には有効なのです。

その場合、就業規則の「服務規律」に、職場内での政治活動を禁止する条項を入れることになります。



ところで、公職選挙法では、選挙運動と政治活動をはっきりと理論的に区別しています。

【選挙運動】
特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかること又は当選させないことを目的に投票行為を勧めること。

【政治活動】
政治活動上の目的をもって行われる一切の活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの。


しかし広い意味では選挙運動も政治活動の一部であり、政治上の目的をもって行われる一切の活動は広義の政治活動と解釈ができます。

したがって、職場内での選挙運動も、企業秩序を乱すものなら、政治活動を禁止とする服務規律違反の対象とすることも可能と思われます。

ただそこで問題は机上の解釈論ではなく、実態として職場の規律を乱したか、どうなのかということになります。


注意すべきは、企業が行う制裁としての懲戒処分は、就業規則にあらかじめその種類と事由を定めることによって、はじめて行うことができる点にあります。

まず就業規則ありき、なのです。

なので10人未満の就業規則提出義務のない会社においても、企業秩序の観点から就業規則を作成することは大きな意味があるのです。

懲戒の規定をはっきりと明示することで、不良(?)社員が会社の秩序を乱すことへの大きな抑止力となります。

大事なのは、問題が起きたときの規定そのものよりも、そういった規定を従業員に周知し、規律を守る心理状態になるよう、労使の信頼関係を築くことだと思います。



そういう意味では、冒頭の私の知り合いの言うことはもっともなこと。エライ!(^_^)v


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