トヨタ自動車は営業や経理など、ほぼすべての事務・管理部門で「原則禁止」としてきた残業の制限を撤廃しました。

まだまだ、人件費抑制のため残業を抑えている会社が殆どですが、残業を復活させてでも「人材育成の再強化が必要」と判断したとのこと。

残業時間の抑制は、先輩社員から後輩社員への指導の時間を減らすことにつながります。

残業が増えれば人件費は増すことになりますが、先輩からのノウハウを伝承するメリットの方が長い目で見て大きいと考えたようです。

またトヨタは、今春から技術開発部門で、少数単位で部下を管理・指導する「係長職」を約20年ぶりに復活させました。
組織のフラット化を勧めることで減っていた、中間の管理・指導者を増やすことを狙いとしたものです。

まだまだ続く景気低迷、さらにトヨタにとっては逆風の先が見えない円高のこの時期に、人件費の拡大が進むことになるこの判断は、目先の収益より国際競争力を蓄え、将来を見越した、勇気ある英断といえるかもしれません。

なんせ分母(社員数)が違うので、増える人件費は膨大です。

実際、多くの企業では残業抑制に加え成果主義の導入が急激に進み、人材を育てる風土が希薄になった感があります。

人が人を育てるのです。


この6月に日本生産性本部がまとめた、「新入社員の働くことの意識調査」によると、新入社員は、「残業」(82.8%)が「デート」(16.6%)を大きく上回り、仕事することに飢えているようです。
http://activity.jpc-net.jp/detail/lrw/activity000921.html

仕事をしたいという若いパワーを使わないでおいておくことはありません。


トヨタのこの報道を聞いて、昨日10年連続200本安打を記録したイチローの、ライバル会社のCMのキャッチコピー「変わらなきゃ!」を思い出しました。

日本経済や日本の産業が、このままズルズルと中国や韓国に遅れを取ってほしくないと思うのです。