厚生労働大臣が替わりました。


長妻(元)大臣が力をいれて進めていた、企業での健診でのメンタルヘルスチェックはどうなるのでしょう。


自殺者3万人、「うつ」の罹患者100万人。
そういった背景に、企業でのメンタルヘルスチェックを義務化を提言されました。


しかし、こと、心の病気はやはり扱いが難しく、実現に向けての実務レベルでは話が紛糾していたと聞きます。


職場における「うつ」の原因で一番多いのは、職場環境と職場の人間関係です。

健診でのメンタルヘルスチェックで、社員がそれを申告したとして、それを知った会社がどうするか?

そこそこ大きな会社なら、人事部長あたりの指示で改善に走るでしょう。

でも日本の殆どは中小企業なのが現実です。

その申告者の上長といったら社長で、もしかしたら原因も、そもそも社長にあるかもしれません。

その場合、メンタルヘルス不調を申告した社員はどうなるでしょう。

もっと言うと、具合が悪くても本当に申告するでしょうか?という問題があります。


そうなると、さらに深刻な問題があります。

メンタルヘルス不調なのに、メンタルヘルスチェックで異常ナシという記録が残る・・

万一の場合が起きてしまった場合に、マイナスの証拠として残ってしまうということです。。



そこで、メンタルチェックの結果は事業主に返すべきではない、健診と切り離して、結果は本人にのみ返す
べきではないかという話も出ていたそうです。


しかし、今月初め、健診と一緒にする旨の新聞報道がありました。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100908dde041010026000c.html


検討会でも少し混乱しているという話を伝え聞きます。


どうも報道では、産業医がいる会社が前提になっているような印象を受けます。

でも、産業医の選任が義務づけられているのは、50人以上の事業場です。

さらに産業医がいても、精神医療の方面は疎かったり、実態としては月1回の巡視も形骸化していたりする会社も珍しくないのです。


日本の約9割は中小企業、約65%が中小企業従事者であることを、考えると、まだまだ実現に向けての先は長いかもしれません。



まず法律で健診でのメンタルヘルス対策を縛るより、労働時間の管理はもちろん、そこそこ大きな会社なら、産業医を見直し、社内の産業カウンセラーを育成し、産業保健スタッフの組織化を考える、また、中小の企業もTOPや管理職を含めたメンタルヘルス研修を進めるといったような、それぞれの会社の実状にあった施策を講じるよう進めることが必要なのではないかと思うのです。


ただ、冒頭の背景に加え、職場でのメンタルヘルス教育が遅れ、職場での中途半端な知識が事態の悪化を招いていることを考えると、長妻元大臣の投げた石には意味があります。


心の問題は、そもそも一元的なルール化自体が難しいとは思います。


でもこれが契機となって、メンタルヘルス対策に真剣になってくれる会社が増えてくれることを、私は願ってやみません。