今夜はクリームシチューだというのに、妻が「少しで良いからお刺身たべたい」とご所望。カンパチは残り少なくなってしまったし‥‥丸で残っているのはウッカリカサゴ。

 カサゴは空揚げや煮付けてうまいが、刺身も白身でうまい。だが皮を引いて薄切りするだけじゃ芸がない。そこで皮をバーナーで炙ってみようと思った。家にはガスの料理用バーナーがあるが、炙りは本来、炭火でやるものという感じがぬぐえなかった。

 でも考えて見れば、ご飯は電気炊飯器で炊いているし、焼き魚はガスコンロのグリルで焼いているのだから‥‥。

 40センチ級の特大ウッカリカサゴに庖丁を入れて4分の1だけ切り取った。小骨を抜いて耐熱皿に置き、ガスバーナーで焦げるまで皮目を炙った。少し切って味見をすると、これが抜群にうまかった。嘘だろうと思うほど、深みのある味に仕上がっていた。前回、アクアパッツァにしたときより、カサゴの味に深みを感じることができた。

 そこで炙ったウッカリカサゴを少し厚めに切り、オナガダイの刺身と盛り合わせにした。

 生きた鮑のバター焼きも添えて、いつもの6時に妻と二人で夕餉の膳についた。近頃中学2年生の孫は遊びまくって帰ってきないので、静かな食事が始まった。まずはオナガダイの刺身を口にした妻は、「やっぱりお刺身は美味しいわ」と微笑んでいたが、大カサゴの炙りを口にした途端、「何コレ? こんな美味しい刺身、食べたことがないわ。エエッ、あの大きなカサゴを炙ったの? カンパチなんかも美味しかったけど、コレ、ずば抜けておいしい!」と感激しておりました。

 天然物の魚介をお持ちくださった丸山氏に感謝の言葉もないが、いかにおいしく家族に提供するかはわたしの腕にかかっているから、庖丁ひとつ入れるにも気をくばるようになったし、料理法のレパートリーも否応なく増えた。

 なんとも幸せなことであます。