ライフワークの一つだった釣り用語の語源さがしや、正しい語釈の探求も道半ばだが、雑誌などで呼びかけても後継者の名乗りはなかった。様々なジャンルで「用語辞典」が出ているが、『釣り用語辞典』は未だにない。
わたしのパソコンには約1,000の釣り用語が入れてあり、三分の一ほど語源や語釈をつけたが、完成するにはまだまだ。
語源が分かると、用語の正しい使い方も理解できるはずだし、語源探しという作業はじつに楽しい。
だが、残念なことに、金にはならない。
そもそも「釣りを生業にする」、それ自体が困難なこと。賞金で食っていけるような大会もないし、協会もない。
釣具メーカーのテスターになっても釣具の提供を受けるていどで、年収は保証してくれるわけでもない。
今はユーチューバーで稼ぐ釣り人もいるようだが、年寄りには無理な話。
何度か書いたが、釣りに使う鉤の「チメ」「チモト」の語源は、もう50年も前に深川図書館の図書館司書の方に教えていただいた。わたしの小学校の同級生の姉で、「古事記の海幸・山幸を呼んでみると参考なると思いますよ」と声をかけてくれた。
そこで古事記を読んでみると、例の鉤を無くす話の鉤の文字に「チ」とルビが振ってあった。古語辞典を引くと「ち」=「チ・鉤の古語」と出ていたのである。
こんな小さな発見がじつに嬉しかった思い出である。
魚が一匹も釣れなかったとにも言う「坊主」や「おでこ」。いずれも「毛が無い」つまり「その毛もありませんでした」という江戸っ子の洒落が語源である。