熱中症は怖い。友達は、自宅の隣の野菜作りの畑で、7月中旬に農作業をやっていて、熱中症にかかり、身体じゅうに何とも言えない悪寒がはしり、このままでは死ぬかもしれないと言う風に感じたそうだ。夏場の野菜作りの趣味は暑い盛りは止めた方が良い。
今から25年ほど前に15年間ほど近所の農家から10畳ぐらいの広さの畑を借りて、いろんな野菜を作っていたことがあったが、どうしても雑草が生えて来てしまい、3週間に一度は大掛かりな除草作業をしないといけない。5月ごろまでなら左程大変ではないが、7月に入ると、急に雑草の成長が激しくなり、暑い盛りの午後の除草作業となると本当に大変っだ。
あの頃は、まだ熱中症と言う言葉は出始めたばかりであったし、この数年のような猛暑の夏ではなかったので、途中で数回の休憩を取って1リットルのペットボトルの水をのみのみ作業を続ければ、3時間もすれば、雑草取りは何とか何事も無く終えられたが、今から20年ほど前の夏の或る日は、異常に暑く、夕刻の2時間の作業中に、これは熱中症の初期ではないかと思わせる身体の異変を感じた。
そんな訳で、趣味と身体作りの農作業は夏場は卒業と決めつけ、6月に玉ねぎの収穫を終えたら、畑の8割はビニールシートで覆い休耕地とすることにした。それから数年して単身赴任でその畑での作業の続行は無理になったので、その畑は土地を1年間5000円で貸してくれていた農家さんにお返しして、それ以降は畑仕事はしていない。自宅には、30畳ほどの広さの庭が有るが、女房から庭には農作物を植えてはいけない厳命されているので、本当に農作業は止めたままになっている。
話のはじめから、ずーっと話題が横道に逸れているが、今日の物忘れ日記の主題は、熱中症がらみの急性痴呆症のことである。昨年の8月末のことだった。その日も猛暑が続いていた。僕は自分の寝室兼書斎の二階の八畳の和室で窓を開けて風邪を通しながら、エアコンを切って論文執筆を昼過ぎからずーっと続けていた。
黄昏の頃になって、何か頭にもやがかかったような気分がするので、窓を閉めてエアコンでも利かそうかと考えていた矢先、突然パソコン画面がモザイク状に見えているのに気づいた。この症状は、目をこすっても、視線をパソコン以外の所にそらしてみても一向に治らなかった。突発性の緑内障の悪化などが起って、網膜剥離でも起きたんじゃないかと疑ってもみた。
そのうちに、これは熱中症の初期の症状ではないかと気付き、エアコンを最強にして冷風に当たり身体を冷やそうと考えた。すぐにエアコンのスイッチを入れて、先ずはパソコンでの仕事を一旦停止しようと考え、開いていた文書ファイルをOFFにして、「保存」のボタンを押したまでは良かったのだが、次にパソコンをシャットダウンしようと考えて、その操作をしようとしたが、何とそのシャットダウンの操作が分からなくなってしまっていた。
「えーと、シャットダウンの操作はどうだっけかな。」とブツブツ呟くばかりであった。結局、パソコンのシャットダウンは諦めて、一階のエアコンの利いたリビングに移動して、氷水をちびちびと飲んで身体を冷やした。5分ほどしたら、だんだん頭の靄が晴れてきて、視野の中のモザイク模様も消えて、パソコンのシャットダウンの操作も「そうだ。スタートボタン+Xボタンの同時押しだ。」と思い出すことが出来た。まさに、軽い熱中症による視野欠損と一過性痴呆症、すなわち一過性の物忘れの症状だったのである。
翌日は、念のため眼科に受診して精密検査を行ってもらい、軽度の緑内障疑いと視神経乳頭の神経線維がやや細くなっているとの診断で、一過性の痴呆症状は、もしかすると虚血性の脳疾患の可能性が有るから、脳神経内科も受診したほうが良いと言うことであった。素直に眼科医(博士論文の指導をしたので、学問的には僕の弟子である)の言うことを聴いて、その翌々日に脳神経内科でMRIと頸動脈エコーをやってもらい、特に異常なしと言う診断結果を頂き、現在も定期的な経過観察のために眼科と脳神経内科を受診している。
何れにしても、一過性の物忘れの陰には、生命に関わる大事が潜んでいることがあるので侮ってなならない。大きな血栓が飛んだら、脳梗塞や肺梗塞を起こし命取りになるので、注意が肝腎である。面倒くさがらずに、医師の診察を受けた方が良い。