今回は、アイナメ釣りの面白さをお話ししましょう。

 アイナメは寒冷地の魚ですが、僕の自宅が在るそれほどの寒冷地ではない地方(日本海側の県ですが、冬場に根雪になることはありません)でも結構釣れる魚です。テトラポッドでの探り釣りで、2号ぐらいの錘の先に20センチぐらいのハリスを付けて、チヌの1号針を付けて根がかりしないように、餌のオキアミを針先が出ないように付けて、テトラとテトラの間に、餌をなるべく深めに沈めて待っていると、アイナメやカサゴ(僕の留守宅のある地方ではボッカと呼んでいます)が釣れてくるのですが、15~20センチそこそこの小物ばかりです。

 

 初めから、この探り釣りをやりに行くことは稀で、まずは何といっても最初はチヌの浮子釣りに挑戦です。チヌを狙って2,3時間竿を振り続けてもなかなか当たりすら無いとなると、そろそろ「今日は、おチヌ様のお出ましはないな。」と考えて、そのままボウズで家に帰るのも何だし、春先で凪いでいて波が無い時は、海面の所まで下りて行って岩海苔を採ったり、5月ぐらいだと新ワカメが生えてくるので、それを採ったりしますが、冬場ではそう言うものの収穫は望めないので、チヌ釣りをぶっ込み釣法に切り替えて置き竿にしておいて、アイナメとカサゴの探り釣りを1時間ほどやってみます。まあ、あまり大物は期待できませんが、ある程度の釣果は望めます。

 

 今までに釣ったアイナメの大物では、40センチから43センチの3匹で、釣りサンデーと言う週刊誌(今は刊行されていないそうです)なら、記録物として取り上げてくれるサイズですので、一応魚拓に取ってあります。今から、二十数年前のことでしたか、5月の連休に前の記事で書いた川沿いにある小さな漁港の河口に長く続いているテトラポッドの先端から100メートルほど手前の場所の海側で、チヌ狙いで糸を垂れていた時のことですが、その日は波がほとんど無く、海水も澄んでいて2メートルの深さの底までしっかりと見える、所謂チヌ釣りには最悪の状況でした。海中を漂う仕掛けの餌が丸見えで、その餌の周りには小物の魚が一匹も姿を見せておらず「今日は、駄目だな。場所替えでもしようかな。」などと考えていました。

 

 こういう時は、テトラポッドすれすれに深めの棚で餌を流していくと、テトラとテトラの間に潜んでいるアイナメやカサゴが飛び出してきて餌に食いつくことがままあるので、やってみて損はありません。「まあ、期待薄だな。」などと考えながら仕掛けを潮に乗せて流していたのですが、急に結構大き目の当たりがあり、合わせを入れてみると、かなりな引きがあり、「おー、これは、これは。」などと期待を込めながら糸を巻き上げてみると、何と、かなり大物のアイナメが浮き上がってきました。

 

 その日は、面倒なので(5月は海水温が一番下がる時期なので、どうせ大物は釣れないという予感があったので)、タモは持ってきておらず、2号のハリスでは釣り上げるのは難しいなと思いましたが、ちょうど運の良いことに、そばで中学生ぐらいの子供らが昆虫採集用の網を持って魚掬いをしていました。そこで、子供たちの昆虫採集用の網を借りて、何とかその大物アイナメを釣り上げました。

 

 「おじさん、すごい大きい魚だね。何て言う魚なの。」と訊かれたので、「網を貸してくれて有難う。君らの網がなかったらまずはバラしていただろうね。これはアイナメと言ってね、水炊き鍋にすると美味しいんだよ。この程度の大物はなかなか釣れないんだ。」と答えて、「今日はこれ以上の釣果は望めないな。」と判断し心うきうきと家路についたのであります。家に帰って、長さを測り魚拓を取ってみると、43センチの大物でした。「釣りサンデーに投稿しようかな。」などと思ったほどでした。そのアイナメは、その日の夕食に水炊きにして食しました。柚子の絞り汁を使ったポン酢のつけ汁で食べましたが、白身の柔らかな食感の魚で、大変美味しく頂かせてもらいました。

 

 それから2年ほど後のことですが、いつもチヌの夜釣りに行くファミリーフィッシングの盛んな大きな漁港の波止で、早朝からチヌ狙いの釣りをしていた時に、岸壁すれすれに流していた仕掛けに大物のアイナメが掛かりました。その波止は海面から7メートルぐらいの高い岸壁で、長竿のタモがないと大物は上げられません。幸いに隣に釣り座を構えていた二人組の人がタモを持っていて、親切にもそのタモでその魚を掬ってくれました。感謝、感謝です。「大きいアイナメだなぁ。久しぶりに見たよ。僕等も頑張ろう。」と言って、彼らは期待を込めて竿を振り続けていました。このアイナメは41センチの大物でした。このアイナメも水炊きで食しました。

 

 波止やテトラポッドでは、こんな大物が釣れることはほとんどなく、いつもは15~20センチ程度の小物ばかりですから、鱗と鰓と内臓を取ってから、一応、皿に盛るときの表側の身にはバツ印の浅めの切れ込みを入れ、裏側には2本の切れ込みを入れて、一度、熱湯に30秒ほど浸してから湯を捨てて魚のぬめりと臭いを取り去ってから、醤油、日本酒、砂糖、生姜の2, 3片を所謂「さしすせそ」の順番で入れて、15分ほど中~強火で煮て、最後に味醂を入れて照りを入れれば、アイナメの煮ものの出来上がりです。柔らかな食感の結構美味しい煮魚を楽しめます。

 

 なお、煮魚に限らず、美味しい日本料理を作るには、それなりの知識が必要ですが、「日本料理のコツ」(杉田浩一、比護和子、畑 耕一郎著、角川ソフィア文庫)と言う文庫本が出ていますので、興味があったら読んでみて下さい。日本料理の名人の技を科学的にその理由を検証して合理的な説明を試みているとてもためになる本です。