今回は、サヨリ(針魚、細魚)釣りの面白さをお話ししましょう。

 

 サヨリ釣りは群れに当たれば、誰でも1時間で10匹以上を釣り上げることのできる比較的簡単な釣りです。

 若い頃の夏の或る日、教室の助教授(今の准教授)と同僚の助手(今の助教)の先生と僕の3人で、車で30分ほどで行ける岩場に行き(駐車場から15分ほど歩き、かなり急な崖を降りて釣り場に辿り着きます)、そこで少しの間泳いで小さなサザエなどを10個ほど採り、それから夜釣りを始め、雑魚しか釣れないままにその岩場で夜を明かしました。

 

 早朝になって50メートル先の岩場でサヨリを釣っている人がいるのに気付きました。そこで、暇に任せてその人の近くに行って、その人の釣りを見ていたのですが、次々と30センチ以上のサヨリを釣り上げていました。どんな仕掛けと餌で釣っているのかを訊ねたところ、親切に教えてくれて、僕もその仕掛けを真似して作り、なるべく小ぶりのオキアミ(2.5センチぐらいの細いもの)を餌にして、試しに釣り糸を垂れてみました。

 

 すると、ものの5分で当たりがあり、35センチぐらいの大物のサヨリが掛かってきました。夏場でもサヨリは釣れるもんだなぁと感心したものでした(サヨリは、普通は冬~春に釣れる魚です。雪の多い地方では、その年の初めての積雪の後は海面が冷えて、サヨリの食い気が落ちてしまい春が来るまで釣れなくなります)。

 

 その人の仕掛けは、中くらいの投げ浮子(誘導仕掛けにしておくと便利)の先に1メートルほどの1号のハリスを伸ばしておいて、投げ浮子から50センチぐらいの所に直径1.5センチ程の当たり浮子を付け、さらに、その先にサヨリ針を結び付けたものでした(細いハリスにサヨリ針を付けたものが市販されています)。その人は、撒き餌(「ジャンボ」と呼ばれるアミが使われます。大きなアミだと立派な付け餌になります。小さなオキアミを餌にするよりはずっと釣果が上がります。)を打ちながら岩場の近くにサヨリを集めて釣っていましたが、これが本道のサヨリ釣りだそうです。

 

 僕は、サヨリ釣り程度でわざわざ車を30分ほど走らせて、さらに15分も歩いてその岩場に出かけるのは面倒なので、普段は、車で20分で行ける小さな漁港の波止 (海岸から100メートル離れた波止が岸と平行して伸びていて波止の横に駐車スペースがあります)の先端か、車で15分で行けるもう一つの漁港の川沿いに伸びているテトラポッドの先端(漁港から歩いて5分ぐらい)の所に釣り座を構えます。これらの場所では、釣り座の近くにサヨリの群れを撒き餌で寄せるのは難しいので、撒き餌を詰めることの出来る投げ浮子を使い、ジャンボをその投げ浮子の網篭に詰め込んで、50メートルほど遠投します。

 

 この釣法では、サヨリはすぐには釣れません。撒き餌を詰めた仕掛けを同じ場所に約20分ほど投げ込み続けて、その海面辺りに撒き餌が利いて来ると、そろそろとサヨリが集まり出してきて、独特な当たりが来ます。多くの場合は、当たり浮子が横にスーッと動き、当たり浮子の先でバシャっと魚が跳ねますので、軽く合わせて、あとは道糸を巻き上げて釣り上げるだけのことです。道糸を巻き上げている間は、長物に特有なブルンブルンという引きが楽しめます。幸運な時には、撒き餌を利かす前から釣り座の近くの海面にサヨリの群れが来ていることもあり、その場合には、第1投目から当たりが出ます。

 

 普段出かけるこれらの釣り場では、12月が釣果が良く、大体30センチクラスのサヨリが上がってきます。サヨリ釣りは、どちらかと言うと単調・単純な盛り上がりに欠ける釣りなので、1時間ほどで10匹も釣り上げると飽きてきてしまい、家に帰ってからの魚の捌きも数が多いと面倒なので、サヨリ釣りはこの辺でお終いにして、あとはチヌ釣りに変更します。その釣り場は、特に夕方に大物のチヌが出る所ですが、僕の経験では、サヨリは明るいうちが良く釣れるため、大方は昼前に出かけますので、サヨリ釣りの後のチヌ釣りはあまり期待は持てません。やはり、おチヌ様にお目にかかるには、午後の遅い時間帯に出かけて行き、黄昏の少し前から日暮れて2時間ほどの間を狙うのが常道です。

 

 さて、次はサヨリの料理です。サヨリもキスとおなじで捌くのが難しい魚です。背びれがないので、三枚におろす時に包丁の刃をどこに入れたら良いかがよく分からないのです。上手く刃が入れば、中骨にほとんど身がつかない形で三枚おろしが出来るのですが、間違うと中骨を切ってしまったりして、ややこしいことになってしまいます。

 

 大きなサヨリは、クルクルと巻いた形のお造りにした刺身で食すのが一番です。あとは、吸い物にする程度で、煮ものにしたり天ぷらにしたりはやったことがありません。カルパッチョも美味いかもしれませんが、まだ試したことはありません。チヌやスズキの刺身では結構美味しいカルパッチョが作れますので楽しめます。

 

 サヨリを捌く時に嫌なのは、鰓の所に寄生虫がついていることです。長さが2~3センチぐらいの白いダンゴムシのような沢山の脚のある一見エイリアン的な形の寄生虫(サヨリヤドリムシ:ウオノエ科の甲殻類)で、若干気持ち悪い奴ですが、これに寄生されているサヨリの刺身を食べても大丈夫だとされています。触るのが嫌なら箸かなんかでつまんで捨てて下さい。