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修君たち4人は、ドリブルを中心にして、さらにサッカー遊びを小一時間続けていましたが、及川君と木下君が「塾に行かなくっちゃ。」と言い出し、河村君も「スイミングスクールに行かなくっちゃ。」と言いだしました。修君も「今日は塾はお休みだから、家に帰って宿題でもするかな。」と言って皆に「バイバイ」してから、紙町駅から西方向に1キロほど延びている天神通りと言う広い県道に面している公園の門から歩道に出て、自分の家に向かって歩き始めました。3人の友達も、自転車に乗って各自の目的地へ走り去って行きました。
修君は、公園から西へ100メートルほどの三叉路で広い県道を渡って、修君の家の在る6メートルの幅の生活道路を北に向かって歩いてゆくのでした。この6メートル幅の道路の西側には2メートルの幅の浅い用水路が流れていて、そのさらに西側には100メートル四方の休耕地があって、数年前までは税金逃れの麦の栽培をやっていましたが、今は農耕を止めていて、土地を店舗用やマンションなどの住宅用に売りに出していました。土地の方はなかなか買い手が付かないらしく、手つかずのままに放置されていて、用水路の西側のあぜ道まで草ぼうぼうと言った風景になっていました。修君の家の前を通る6メートル道路の西側にはガードレールが設置されており、道路と用水路の横のあぜ道との間には2メートルほどの段差が有りました。
広い道と6メートル道路との三叉路から修君の家までは150メートルぐらいの距離がありましたが、修君の家まであと50メートルぐらいの所まで歩いてきたときのことでした。修君は、6メートル道路の西側のガードレールの横を歩いていたのですが、ちょっと用水路の方に目を向けたとき、中年の女の人が用水路の西側のあぜ道を修君と同じ方向に歩いて行くのに気づきました。修君は、「何であの女の人は、用水路のあぜ道なんかを歩いているんだろう。」と、ちょっと不思議に思いました。その時、県道を西の方から東の方に、オートバイがすごくエンジンを吹かせて走って行く音が聞こえてきました。
修君はちょっと後ろを振り返って、県道を猛スピードで走って行くオートバイを数秒間で目で追っていました。オートバイが走り過ぎて行ったので、修君はまた前の方に振り向きました。修君は思わず「あれっ。」と声を出してしまいました。不思議なことに、今まで用水路のあぜ道を修君と同じ方向に歩いていた女の人の姿が、忽然と消えてしまっていたのです。用水路のあぜ道は、広い県道と6メートル道路の三叉路から修君の家の北隣の青い壁の家の近くにある、用水路のあぜ道から道路に上がるための階段の所までは、170メートルの距離があるのですから、たった数秒前までは修君の5メートル先を歩いていたその女の人が階段の所まで行きついている筈は有りません。修君はまるで神隠しに会ったような不思議な気分になりました。
もしかしたら、その女の人は、昼間にも出てくる幽霊だったのかも知れません。あるいは、その女の人は突然別の世界に入り込んでしまって、次の瞬間には、修君の居る場所からずっと離れた別の場所でこの世界に戻って来ているのかも知れません。修君は、少しうす気味悪くなって、速足で修君の家に戻るのでした。その晩の夕食の時に、お父さんとお母さんにこの話をしたら、お父さんが「験が悪いから、その女の人が消えた用水路のあぜ道の近くに行って、塩と酒を撒いておこう。」と言い出し、その晩、お父さんとお母さんと修君の3人で厄除けの儀式をしたのでした。
幽霊には、白昼でもその姿を現している幽霊がいて、にぎやかな人通りでも、もしかしたら自分のすぐ前を歩いている人が実は幽霊で、その人が途中の横道に曲がって行った場合、誰も気づかないけれど、実はその人が角を曲がった瞬間に姿を消してしまっているなんて言うこともあるかも知れません。
あるいは、この世界と別の世界を自由に行き来できるような人や動物がいるのかも知れません。修君が、今日の午後、公園に遊びに行こうと思って玄関の階段を降りかけた時に、黄色いテントウムシがムスカリの花から飛び立とうとした瞬間に、突然姿が見えなくなったことが有りましたが、そんなことも関係しているのかも知れないですね。
つづく