この間、ネットのGoogle記事かなんかで、「麺つゆでソーメンを食べ続けてきたら飽きてきたので、無塩のトマトジュースにニンニクと生姜を入れてオリーブ油を垂らし、少し塩味を付けたのでソーメン食べたらとても美味しかった。」と言うことを宣う「料理研究家」なるお方がいらっしゃいましたが、大体、ソーメンを麺つゆで食べて美味しいと言う感覚が信じられないですね。決して不味くはないけれど、スゴーい、スゴーいと言うほどのものでは有りませんでした。その「料理研究家」さんは、どこかの大学の栄養学科でも卒業した栄養士さんなんだろうけど。

「料理研究家」を名乗ってるくせに、ちゃんとした料亭やレストランでの修行などしたことのない人が、勝手に「料理研究家」を名乗っているのじゃないだろうか。昨今、こういう本物ではない「料理研究家」、特に手抜きタイパ料理が専門の「料理研究家」が多いですね。

 

 まあ、そう言う「料理研究家」が推薦する料理を心底美味しいと感じる人ならそれでも一向に構わないけど、料理の世界と言うものは、そんなに浅いものではないことは心すべきですよ。一度ぐらいは、二つ星以上ののフランス・イタリアンレストランや、ミシュランの星などは相手にしない高級料亭にでもに行ってみて、本物の深い味を味わってみて下さい。物の味を知ることは、プライスレスの経験です。何でも、コスパやタイパが良いという訳ではありません。

 

 ご参考までに、以前書いた小生の記事を載せておきますので、本格的なソーメンや蕎麦のつけ汁を釣ってみたい人や、麺つゆを薄めて作ったソーメンつゆがもう少し美味しくなったらいいのになぁなどと考えている人は読んでみて下さい。

 

 今回は、家庭でも作れる結構美味しい(蕎麦屋でも出て来そうなかなり本格的な味のする蕎麦つゆ)とソーメンつゆの簡単な作り方をご紹介しましょう。プロの蕎麦屋さんでは、鰹節(基本は木枯れ節)でかなり濃い目の出汁を取り(鰹節を煮込む時間が大事で10 秒単位で苦みや酸味や灰汁のない出汁を取るには、それなりの修練が必要だそうです)、笊と料理用の不織布などで濾してから、その出汁がまだ熱いうちに少量の醤油と味醂と日本酒を加え、それに返し(かえし:醤油、本みりん、砂糖を加えてから、2週間ほど寝かせたものです。蕎麦屋さんは必ずこれを使います)を加えます。

 

 店によっては、最後に直火で熱した金属の焼き火箸をその中に10秒ほど突っ込み褐変反応を起こさせることにより香味を強めることもあります。これで、所謂蕎麦屋の蕎麦つゆが出来上がりますが、普通の家庭では手間が掛かり過ぎますので、そう言う本格的な味を楽しみたければ、蕎麦の名店に足を運ぶことです。

 

 さて、簡単な蕎麦つゆの作り方についてお話しましょう。まず鍋に水を張り(一人につき蕎麦猪口七分目ぐらいの量で良い。その量の人数分の量の水を鍋に入れる。ただし、ソーメンの場合は、食べているうちにソーメンつゆが薄まるので、途中で1回つけ汁を全部替えることを考えて、蕎麦つゆの場合の2倍量にしておくと良い)、その水に1/10量ぐらいの日本酒を加え(大吟醸や吟醸酒は、酵母臭が鼻につくことがあるので、普通のグレードの酒にして下さい。無ければ、酒などは別に加えなくても良いです。出来上がりの蕎麦つゆに味に左程の差は出ません)、中火で加熱していきます。沸騰したら1分ほど強火で加熱して日本酒のアルコールを飛ばして下さい。

 

 その後、やや火を弱めて、味醂、砂糖を加えます(味醂を多くすると味に深みが出ます。一説に、ざる蕎麦ともり蕎麦の値段の違いは、蕎麦つゆに使う味醂の量の違いにあると言われています。もう一つの説は、海苔が掛けられいるかどうかの差だと言うものですが、ざる蕎麦にパラパラと少しだけ掛けられている海苔の値段からすると、ざる蕎麦はもり蕎麦に比べて高すぎます)。この時、後で加える鰹出汁の素と、少量の塩と、最後に加える醤油から来る塩味とのバランスを予想しつつ味醂と砂糖を加えて下さい。

 

 昆布だしの代わりに味の素をパラパラと加え(多く加え過ぎると味の素特有の人工的なしつこさが鼻につくことがありますので、控えめに加えて下さい。勿論、味の素も特に加える必要はありません。昆布だしの主成分のグルタミン酸の旨味が欲しいと思ったら加えて下さい)、次に市販の鰹の出汁の素をやや多めに加え、次いで少量の塩を加えますが、これは、蕎麦つゆの色が濃くなり過ぎないようにするのが目的です。薄口醤油は、発酵時間が短く、発酵条件も醤油の香味を抑えるように作られているため普通の濃い口醤油に比べると旨味と香味が弱いので、僕は使いません。

 

 これが済んだら、やや難しい作業に進みます。まずは、5人前の蕎麦つゆでしたら、鰹の削り節の2パック分(茶碗1杯のご飯に1パック分の削り節を振りかけて、醤油をかけて掻き回して食べると美味しいおかかご飯が出来ます)を、紅茶用の茶漉しに入れて皿の上にでも置いておいて下さい。その作業が済んだら、いよいよ、鍋を緩く沸騰させながら濃い口醤油を加えて行くのですが、何回も何回もじっくりと味見をしながら最終的に加える醤油の半分の量を加えて下さい(この醤油の量の見極めが少し難しいのです)。なお、この段階でなら、適量の砂糖を足して甘みを調節することが可能です。そして、一度、軽くぐらっと沸騰させてから火を止めて、素早く残り半分の量の生醤油を加えて下さい。これは醤油の香りを立たせるために行う作業ですので、再度沸騰させるようなことをしてはなりません。

 

 その後、鰹の削り節を入れた茶漉しを鍋の中の蕎麦つゆに通します。茶漉しの中から削り節が蕎麦つゆに流れ出ないように慎重にする必要があります。さらに、大きなスプーン(カレーライスなどを食べるスプーン)で沸騰したての熱い蕎麦つゆをその削り節に掛けてから、つゆを含んだ削り節をスプーンで押して削り節のしぼり汁を蕎麦つゆに戻します。この鰹の削り節に熱い蕎麦つゆをかけては絞ると言う作業を数回繰り返して下さい。この最後の作業で、蕎麦つゆにしっかりと鰹節の香りをつけることが出来ます。後は、鍋を冷たい水を張ったボールに浮かべて蕎麦つゆを冷まし、出来たら、それを一晩冷蔵庫で冷やして下さい。味が落ち着きます。一晩寝かせなくても、かなり美味しい蕎麦つゆなので、僕は、氷水を張ったボールで冷やした蕎麦つゆをそのまま使って、蕎麦やソーメンを食べています。

 

 これで、簡単な蕎麦つゆの出来上がりです。なお、ソーメンのつゆの作り方は、基本的には蕎麦つゆと同じです。ただ、味醂と砂糖の量を増やして、蕎麦つゆよりも2~3割方甘みを増やし、1割方塩味を減らして下さい。僕は関東人なので、蕎麦には半分しか蕎麦つゆを付けないので(江戸っ子の粋です)、蕎麦つゆはやや辛めにしています。出雲そばや椀子蕎麦のようにそばを蕎麦つゆにしっかりと漬けて食べる場合には、塩味を控え目にしないと、辛くて食べられません。ソーメンつゆよりももう少し塩味を減らす必要があります。なお、出雲の割子蕎麦の場合は、紅葉おろしを載せて食べるので、その分やや辛めのつけ汁にして下さい。

 

 この頃、市販の濃厚ソーメンつゆの味が良くなってきており、以前にあった妙に人工的な魚臭さがほとんどなくなっているようなかなり優れもののソーメンつゆが売られています。これをそのまま使い、一度沸騰させてカルキ臭(塩素の匂い)を飛ばしてから冷やしておいた湯冷ましの水で既定の濃度に薄めて使うと、なかなか美味しいソーメンを食べることが出来ます。もし、もう少し美味しく食べたければ、その市販の濃厚ソーメンつゆを水で既定の濃度に薄めてから、鰹の出汁の素を少し加えて沸騰させ、火を止めてから、少量の醤油、好みに合わせて砂糖を少量を加えてあげると、市販のソーメンつゆに特有な若干気になる異臭のない結構美味しいソーメンつゆになってくれます。もっと美味しくするには、上述したように、火を止めてから、茶こしにカツオ節を入れて、出来上がった熱々の汁の中を数回くぐらせて下さい。これで、かなり満足の行く味になります。これならものの5分で出来上がります。なかなかの味に仕上がります。